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  F-4J ファントムⅡ (ハセガワ 1/72(旧版))

  by 加藤 寛之



 このキットは、ハセガワが1/72キットをシリーズ化した記念すべき第1作の改修版。B/C型で発売した第1作製品を、機首の垂れ下がりを改修してJ/D型で再発売したキットだ。再発売時は、J型用に1966年5月に初飛行したJ型1号機のデカールを入れてあり、今回はそのキットを作ったもの。 キットはリサイクルショップから気軽な価格で入手した。20年前ならばお宝キットで高額であったが、“これって、だれも欲しがらないんじゃないかな、ボクも作らないし”と所有者が気づいて処分したのかもしれない。価格はキット購入と製作着手の大事な指標だから、見事に今回、プラモデルとして世に生まれた使命に応えて完成となった。



 当然だが、現時点の観点で論ずるキットではない。当時にあっては、動翼などの可動で形が崩れるプラモデルから脱却した先進的な外形重視のキットだし、全面にある強烈な凸リベットは当時の精密感表現だった。なんといってもバスタブ型パーツを用意してコックピットを造ってある。とはいえ、腰高を改修しないといけないことは知っている。『プラモ・ガイド1973《春季号》』によれば、脚柱の根元を3~4mm切り詰めるとある。
今回は工作しやすい範囲で3mmほど短縮したが、まだ高い感じがする。これは脚の長さだけでなく、胴体や風防、主翼の厚さなどの印象も関係しているように思う。ちなみにこの『プラモ・ガイド1973《春季号》』の記事は、『世界の傑作機』シリーズで比較技術論を執筆される鳥飼鶴雄氏による。鳥飼氏はこの時代の『航空情報』誌や『プラモ・ガイド』誌上でしばしばF-4ファントムⅡに言及している。



 キットを組む。パーツ分割は単純明快潤で、難しいところはどこにもない。これは凄いことで、子供にもできるということだ。この時代のプラモデルは販売対象が「モデラー」でなく「子供たち」なのだ。その「子供たち」が充分すぎる大人になった(私のことだ)ので、バリやランナーからのゲート跡を消し、ズレや隙間をなくしている。
そのズレや隙間だが、金型の合わせ目にある峰の処理やわずかな削りあわせだけでほとんど解消し、思ったよりもはるかにパテの使用は少ない。風防パーツに面白い工夫があった。底辺の枠が胴体側にあるのだ。こうすると、ワク部分の胴体断面形は「ハ」の字になって、実物のΩに近い形になる。



 塗装指定は、この時代のキットならば充分に丁寧だ。そこで気づいたのだが、J型の機体色の指定がない。キットの箱絵を見てください、だと思う。当時の箱絵は大切な資料なのだ。今回は、塗装をハセガワ・モノグラムのキット指定にそっている。凸線の活かしかたも同じ。心配は、ハセガワ・モノグラムのデカールがハセガワ旧版のキットのカタチに合うのか、ということ。垂直尾翼の形などは、だいぶ違う。胴体の太さや背中のふくらみも全然違う。これは貼ってみる以外になかった。結果は「相当に無理がありました」で、貼りつけ後にそれらしく塗装で補正した。国籍標識や「NAVY」などは、ハセガワのキットのデカールを使った。  完成。モノグラムのJ型と並べると、同じ飛行機とは思えないくらい印象が違う。WW2の日本機ならば、隼と疾風が同じキットで発売されたくらいに違う。ところが、別々にみると、どちらもちゃんと「F-4J ファントムⅡ」になっている。これがプラモデルの面白いところだ。私はこの「個性」を好ましく思っている。


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