Home  > Douglas AD-5N “Skyraider”(Matchbox/Tamiya1/48)>飛行機プラモデル製作>2021年3月号


Douglas AD-5N “Skyraider”(Matchbox/Tamiya1/48)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


Skyraider AD-5(A-1E) (1/48) Revell Box Artより


 今回はDuglas AD-5N “Skyraider” を紹介します。スカイレイダーのキットは各社からいろんなスケールで発売されていますが、多座型のAD-5(A-1E)系の機体はほとんどなく、モノグラムの1/72のA-1Eと1/48ではマッチボックスのAD-5くらいしか思い出せません。モノグラムのキットはスケール的には正確ですが、あのモノグラム的ディテールが見られないのが残念です。マッチボックスのキットも古く、最近の製品レベルから見ると見劣りがしてしまいます。それでもこれしか無いと言われると欲しくなるのが人情です。5年ほど前にレベルからマッチボックスのキットが再販されたので、少し高価でしたが購入しました。今回それが役に立ったのです。AD-5は、胴体以外はほとんどAD-6(A-1H)と差異がないため、1/48スケールの決定版とも言えるタミヤのキットを使えば、マッチボックスよりは少しはディテールアップしたAD-5を作れるのではとの思いで改造製作にチャレンジしてみました。本稿ではその改造点等を中心に製作過程を紹介していきたいと思います。 


AD-5N Matchbox/Tamiya(1/48)

実機紹介

 スカイレイダーはダグラスの著名な設計技師、“エド・ハイネマン”が産み出した傑作機の一つと言っても過言ではない。それはこの機体が類稀なる多用途性を秘めていたからである。総生産機数は3180機にのぼり、AD-1からAD-7(A-1J)へと発展する中で多くの派生機を産み出し、米海軍艦上機が担う大半の任務をこなしてきたことが、それを証明している。またそれを可能にしたのは基本設計が優れていたからに他ならない。

 その試作1号機が初飛行したのは、太平洋戦争も末期となった1945年3月18日のことである。SBDドーントレスの後継機として開発されたスカイレイダーは、当時 “ドーントレスII”と呼ばれ、艦上爆撃・雷撃幾として誕生した。しかし量産機が戦場に出る前に終戦となった。それでも開発は継続され、AD-1“スカイレイダー”という新しい呼称で量産化に移行した。1946年12月6日にはAD-1の実戦部隊配備が開始され、VA-19Aが最初の部隊に選ばれた。AD-1は242機の量産で終了したが、その後AD-2、AD-3、AD-4と進化を続け、生産が重ねられる。AD-4の後継として開発されたのが最も量産機数の多い単座のAD-6(A-1H)、そして最終型のAD-7(A-1J)へと繋がる。またAD-6と並行して開発されたのが、少し形態の異なる多座型のAD-5(A-1E)であった。 


AD-5N Matchbox/Tamiya(1/48)

 以降はAD-5に話を絞って進める。前述のようにAD-5はAD-6と並行して開発された多用途機である。そのためコクピットが大きく変わった。前席を並列複座とし、その後方に比較的広いキャビンを設け、1~2名の乗員と電子機材が搭載できるスペースを設けた。そのため胴体側面のエアーブレーキは廃止され、下面のみとなった。また垂直尾翼が増積され少し大きくなった。そのためAD-6に比べると主翼のスパンは変わらないものの、全長で約30㎝長くなり、全高で約60㎝高くなっている。また主脚のカバーが前方の1つとなり、車輪は翼内に納められるものの剝き出しで、翼からはみ出る主脚柱が覆われるだけである。その他にも細かな変更点はあるが、エンジンもライトR-3350-26WA(2700HP)と同じものを使いながら、乗員やペイロードを増やすことのできる能力には驚かされる。

 AD-5は1953年に部隊配備が始まり、多くは海兵隊で運用された。捜索レーダが搭載でき、戦術核兵器の搭載能力も付与されたため、当時においては米海軍・海兵隊で唯一の全天候核攻撃機でもあった。多用途機だけにAD-5には用途別に夜間攻撃型のAD-5N(A-1G)、早期警戒型のAD-5W(EA-1E)、電子戦型のAD-5Q(EA-1F)、対潜型のAD-5S、標的曳航などのユーティリティ型のAD-5(ToW)(UA-1E)といった派生機が存在した。全部を説明していくと長くなるので、今回製試作したAD-5Nのみ解説する。AD-5Nは239機が生産され、1955年から実戦部隊である海軍のVC-33(VA(AW)-33)とVC-35(VA(AW)-35、及び海兵隊のVMC-1(VMCJ-1)、VMC-2(VMCJ-2)、VMC-3(VMCJ-3)への配備が進められた。夜間攻撃型ではあるが、全天候攻撃や対潜、また電子戦の任務にも就いた。機体各所にECMアンテナを配置していたこともあり、その能力は秀でていた。またAPS-31Bレーダポッドを主翼に搭載して運用された。乗員は3名で、前席左がパイロット席、右がレーダ操作員席、後部キャビンにはECM機材の操作員席とECM用の電子機材が置かれている。1957年にはAD-5Nの54機がECM任務専用のAD-5Qに改造され、その後ヴェトナム戦争になると残りの機体の多くが空軍に移管され、A-1E仕様に改造された。 


AD-5N Matchbox/Tamiya(1/48)

製 作

 今回の製作で最初に検討したのが、マッチボックスとタミヤのキットをどのように組み合わせるかということだった。いろいろ検討した結果、マッチボックスのキットからはAD-5の胴体、ウィンドシールドと風防の透明パーツ、そして翼下に吊り下げる増槽とAPS-31Bレーダポッドのみを使用することにした。胴体も全てマッチボックスのキットではなく、エンジンカウリングフラップから前方はタミヤのキットを使うことにした。このためタミヤより高価なマッチボックスのキットは大半がお払い箱となった。

 またレベルのAD-5のキットには、米海兵隊のAD-5用、米海軍のAD-5N用、そして米空軍のA-1E用のデカールが付属しており、いずれに仕上げるか迷ったが、米海軍用のガルグレイと白のAD-5Nに仕上げることにした。 


  1. コクピット
 まずはコクピットの改修から始める。計器盤、サイドコンソールともデカール仕上げで、しかもマッチボックスのキットには計器盤を覆うグレアシールドパネルもない。サイドコンソールはデカールを貼っても使えそうなので主計器盤とグレアシールドパネルを自作した。主計器盤はF-4など他のキットで不要となった計器盤から使えそうな計器を切り出し、プラ板に実機のパネルに似たようなレイアウトで貼り付けて仕上げた。後席も同様である。
(写真1)が前席、(写真2)が後席の計器盤である。
ラフな感じもするが、塗装をして組み込むとそれらしくなった。(写真3)
またコントロールスティックもタミヤからの流用である。

(写真1) 前席の計器盤
(写真2) 後席の計器盤

(写真3) 自作計器盤を組み込んだコクピット


 次に座席であるが、これも非常にあっさりしたパーツなのでクッションやシートベルトを取り付けた。(写真4)
また実機の写真を見ると各席に酸素供給用のホースが取り付けられていたので、1㎜径の真鍮線に銅線を巻き付けてホースを作った。(写真5)

(写真4) 座席

(写真5) 酸素供給ホース



 2. 主翼の改修
 主翼の大きな改修個所は主脚収納部である。AD-6では主車輪まで完全に覆うカバーを設けているが、AD-5では主翼下面の設けられた円形の穴に主輪が収まるようになっている。タミヤのキットも左右に開く2枚のカバーに対応した四角い穴が主翼下面に設けられているので、この部分を主車輪外径と同寸に穴を開けたプラ板で塞ぐことにした。プラ板を貼り付け整形した状態が(写真6)である。
(写真7)はその裏側で、周辺にプラバーを貼り付け接着部の補強をしている。そして車輪収納部の側壁を取り付け、インシグニアホワイトで塗装をすれば改修は完了(写真8)。

(写真6) 改修した主脚収納部の表面


(写真7) 改修した主脚収納部の裏面
(写真8) 塗装まで終えた主脚収納部

 また(写真6)にカタパルトワイヤーの取り付けフックが写っているが、これも後の工程で取り外し、主脚カバーに移設した。
(写真9)は完成写真の一部を切り取ったものであまり良く分からないが、矢印で示したものが移設したフックである。 

(写真9) 主脚カバーに移設したカタパルトワイヤー用フック



 3. 胴体の改修と組立
 まず胴体にコクピットを組み込み、胴体左右のパーツを接着して接合部を整える。次に主翼を組み込むための改修を行う。(写真6)で分かるように、タミヤの主翼は胴体下面のエアーブレーキの内面が一緒にモールドされている。マッチボックスのキットには胴体下面にエアーブレーキの外形がモールドされており、大きさもタミヤのキットとほぼ同じだったので、タミヤの主翼をそのまま使用するため外板部を切り取った。(写真10)こうすればエアーブレーキを開状態にもできる。仮組してみるとエアーブレーキの部分は問題なさそうに思えたが主翼が入らない。左右の主翼上面間の寸法を測ってみるとマッチボックスの胴体幅より狭い。よくよく考えるとタミヤのキットは胴体に主翼を埋め込む形になっており、胴体側面に0.5㎜ほどの翼付け根断面形状の窪みが設けられている。流石にタミヤである。こうすれば、胴体と主翼付け根との隙間が無くなる。マッチボックスのキットはそうはなっていない。仕方なく、主翼上面の付け根を削ることにした。削り過ぎると隙間が生じるので少しきつい目で止めた。そのせいで上反角が浅くなってしまった。主翼を取り付けた状態が(写真11)である。 

         
(写真10) 胴体下面のエアーブレーキを切り取った状態
(写真11) 主翼を胴体に取り付けた状態

また写真が無いので説明だけにするが、尾輪収納部もタミヤの部品を取り付けている。そして胴体に組み込んだコクピットが(写真12)である。 

(写真12) 胴体に組み込んだコクピット



4. 尾翼の改修
 AD-5の垂直尾翼には前縁中ほどに冷却空気取り入れ口が設けられている。しかしキットにはついてないので、垂直尾翼前縁部に長穴を開け、周囲にプラ板を貼り付けた後、整形した。(写真13)は整形前のプラ板を貼り付けた状態。

(写真13) 垂直尾翼へのエアースクープの追加加工



5. エンジンカウリング部
  エンジンカウリング部はタミヤのキットから流用するが、マッチボックスの胴体前部と結合するにあたり、若干の調整が必要となった。カウルフラップまでタミヤのものを使用したが、排気管がうまくつかない。そこで排気管は真鍮パイプで作り換え、マッチボックスの部品を使って機体に取り付けることにした。取り付けた状態が(写真14)であるが、実際に取り付けたタイミングは胴体の塗装が終わってからである。次にカウリングであるが、内外面ともインシグニアホワイト(FS17875/C316)で塗装して、開状態のエンジンカバーとエンジンを塗装した後組み込んだ。(写真15) 

(写真14) 組み込んだエンジン排気管
(写真15) エンジンを組み込んだカウリング部


6. 主脚カバーの改修
  AD-5の脚カバーは主脚と一緒に動く前方の1つだけで、形状も若干A-1Hとは異なる。マッチボックスの脚カバーは幅が狭くそのままでは使えない。そこでタミヤとマッチボックスの両方のパーツから作り出すことにした。(写真16)がその様子を示したものである。左からマッチボックスのAD-5のパーツ、タミヤのA-1Hのパーツ、切り取って残った両者のパーツ、一番右が今回作り出したパーツで、一部プラ板も使用している。これを整形して脚カバーに仕上げた。 

(写真16) 主脚カバーの改修状況



7. キャノピー&ウィンドシールド
  キャノピーとウィンドシールドのクリアパーツはマッチボックスのものを使用した。3分割されており、少し分厚いが胴体との合いはまずまず。後席はブルーのスモークガラスになっているので、マスキングして内側からクリアブルーを厚めに吹き付けた。よく乾燥させてから外面のガラス部をマスキングし、ライトガルグレイ(FS16440/C315)の塗装前にウィンドシールド以外のパーツを胴体に接着した。その後、後席キャノピー天井の中央枠にブレードアンテナとアンテナ線引き込み金具を取り付けた。 


8. 組み立て・塗装
 下面のインシグニアホワイト(FS17875/C316)は、主翼と胴体を結合したパーツ、エンジンカウリング、水平尾翼、フラップ、エアーブレーキ、胴体下レドーム、主脚カバーといったレベルで個別に行った。なお主翼のエルロンと尾翼のエレベーターは上面も白なので、この部分も同時に塗装している。上面のライトガルグレイの塗装時にはエンジン排気管を外し、カウリング部を胴体に仮止めして、白色部分をマスキングして塗装を行った。ライトガルグレイの塗装後、仮止めしたカウリング部を取り外し、胴体下面のエアーブレーキ収納部とエアーブレーキの裏面を艶消しのインシグニアレッドで塗装、また主翼の前縁部と水平尾翼の前縁部、主翼内翼のパイロン前縁をダークガルグレイ(FS36231/C317)で塗装、最後に中部胴体上面のADFアンテナのレドーム前面、垂直尾翼先端前縁、そして主翼のレーダ警戒アンテナのレドームを艶消し黒で塗った。(写真17&18) 

(写真17) 塗装を終えた機体上面
(写真18) 塗装を終えた機体下面

             
  この後エンジン排気管、カウリングフラップ、カウリング部を本付けして、機首の防眩塗装、ウィンドシールド、主翼とフラップのウォークウェイ部を艶消しの黒で塗装した。(写真19) 

(写真19) 防眩部やウォークウェイの塗装


脚やプロペラの話は省略したが、タミヤのパーツは良く出来ていて問題なかった。プロペラは当時の塗装に合わせ、先端を黄色で塗装している。また搭載物であるが、センターラインパイロンと左主翼内翼パイロンにMk8MOD1増槽を、右主翼内翼パイロンにAN/APS-31Bレーダポッドを、そして外翼の左右各6基のパイロンに5in.ロケット弾を取り付けるべく準備した。これらについては完成機の写真をご覧いただきたい。 


  9. 仕上げ・完成へ
  塗装の終わった機体にデカールを貼り、その後ウィンドシールドとフラップ、水平尾翼を取り付け、乾燥したところで、クリア塗料でコーティングした。今回は半光沢とつや消しの中間くらいのクリア塗料に調合し、吹き付けている。その後、ウィンドシールドとキャノピーのマスキングを取り外し、クリア部に残った塗料を除去した。次にパネルラインへの墨入れと多少の汚しを加えた。エンジン排気による胴体の汚れは、黒のコンテをサンドペーパーで粉末にし、筆で軽くこすりつけて表現している。その後、主脚や尾輪、機銃、主翼への搭載物、アレスティングフック、そして写真では分り辛いがパイロット席側に自製のワイパーを取り付けた。最後にストレッチリギング0.6号でアンテナ線を張り、プロペラを取り付けて完成。(写真20~22)


(写真20)  完成したAD-5N “スカイレイダー”


(写真21)  完成したAD-5N “スカイレイダー”


(写真22)  完成したAD-5N “スカイレイダー”

 タミヤからA-1Hが発売されたとき、AD-5(A-1E)もシリーズ化されものと期待していたが、残念ながら実現しなかった。今回仕方なくタミヤとマッチボックスのキットを使ってAD-5を作ってみたが、やはり少し手間がかかってしまった。今後何処かのメーカがキット化してくれることを期待したい。


  Home>Douglas AD-5N “Skyraider”(Matchbox/Tamiya1/48)>飛行機プラモデル製作>2021年3月号
Vol.151 2021 March.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
           editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー
「webモデラーズ について」 「広告のご出稿について」
 

プラモデル模型製作記事

TOTAL PAGE