Home  > SB2C-3ヘルダイバー (ニチモ・マルサン,モノグラム 1/48)> オリジナルとコピーキットの作り比べ>2021年7月号

オリジナルとコピーキットの作り比べ

   SB2C-3 ヘルダイバー
 (ニチモ・マルサン,モノグラム 1/48)

  by 小山新一



(1)実機について
 カーチス社のヘルダイバーは、本機SB2Cが三代目である。初代は形態的に、全くの別機の感ありだが、二代目の複葉機SBCは本機の原型と言ってもよかろう。下端を丸く削ぎあげたような垂直尾翼など、そっくりである。複葉のSBCを低翼単葉とし、爆弾・魚雷を胴体内に収めるため、胴体が上下に太くなったのがSB2Cである。空母での運用のため、主翼はおりたたみ式だが、胴体を短くしたせいで、飛行安定性、着艦性能ともに、あまりよくなかったらしい。
 平面形をみて気づくのは、主・尾翼の形が、同じカーチス社のP40とそっくりであることだ。老舗ゆえの蓄積ともみられるが、安易な使いまわしにも思えてしまう。



ニチモ(マルサン)のヘルダイバー

(2)模型の制作
 先月号の特集「モノグラム」には間に合わず、9月号の特集「絶版キット」には早過ぎる。この2機に合う特集を自分でつけると、「オリジナルとコピーキットの作り比べ」とでもなろうか。ニチモのヘルダイバーが実は今はなきマルサンの製品で、これがモノグラムのコピーなのはモデラー周知の事実である。この2機を同時に作ったところが、本記事の値打ちかも知れない。


モノグラムのヘルダイバー

以前、やはりモノグラムのコピー製品である、マルサンのBf109Eを作ったことがある。このときは、「オリジナルは風防がこんなに厚くなく、透明度も高いはずだな」ぐらいで終わったものだ。今回は何しろ同時進行だから、比較対照がし易く、いろいろ発見があった。
 完成したモデルの重さを量った経験はおありだろうか。私も、実は初めてやったのだが、理由はニチモのキットが明らかに重かったからだ。胴体を仮組で合わせた段階で、ニチモの方がはっきりと持ちおもりがする。ニチモの胴体をあんの入ったモナカとすれば、モノグラムの方はあんを入れ忘れたモナカのように軽い。コピーであるニチモのパーツの厚みのせいに他ならない。この厚みの差が、すべてのパーツに及んでいるため、完成した2機のヘルダイバーの重量は下記のようになった。

  モノグラム       85g
  ニチモ(マルサン)  104g

 コピー製品がオリジナルの約2割増しの重さである。パーツの厚さの差の、分かり易い一例をキャノピーの写真で示す。
どちらも第二風防、すなわちパイロット席をおおう可動部だが(左ニチモ、右モノグラム)ニチモの方は厚いだけでなく、ひと回り大きい。その一方で、重いニチモの方が、オミットしているパーツが幾つかある。オリジナルのモノグラムにはある、計器盤、操縦桿、スピンナーがニチモ製品にはないのである。 


2キットの第2風防の比較

以上を要するに、ニチモ(マルサン)の製品は、コピーゆえの割り切りと省略で作られているといっていい。そうでありながら、出来上がってみるとニチモ(マルサン)のヘルダイバー、雰囲気悪くない。全体形、ボリュームともに無骨なヘルダイバーを、それなりに再現しているのだ。  

本物と贋作の関係について、これは考えさせられる好例かも知れない。例えば絵画の場合、あまりうまくない贋作ではあっても、その秀逸な構図も、斬新な彩色もオリジナルをなぞっているわけだから、この2点に関する限り、オリジナルの与える感動は変わらないわけだ。その、モノグラムもニチモもマルサンも、今はなきブランドになってしまった。 


ニチモ(マルサン)のヘルダイバー

 塗装は2機に変化をつけるべく、ニチモの機体を3色迷彩(空母ヨークタウン搭載機)に、モノグラムの方を後期の全面グロス・シーブルー(空母ランドルフ搭載機)にした。塗装は筆塗りで、小さな数字のみデカールを用いた他は、国籍マークなども筆塗り手描きである。老眼の上に拡大ルーペをかけての奮闘努力の結果である。いまどきの上質なデカールがついていれば、不要な手間なのだが・・・。 


モノグラムのヘルダイバー右側面


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