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  疾風 (タミヤ 1/72)

  by 加藤 寛之



 フェアの販売品だと思うが友人からいただいた疾風があった。白いプラで、デカールなし。せっかくなので白をいかしたい。そこで「晴天打撃隊」の塗装にした(設定とカラーリングは架空です)。



 昭和20年の春のことだと云われている。
繰り返される空襲で疲弊し戦意を失いつつある気配を国民に感じた帝國陸軍の一部が、11月3日の明治節の日に特殊塗装を施した5機の大東亜決戦機を飛行させて戦意高揚を図る極秘計画を創案した。操縦者には戦技練成班の教官をあて、特殊飛行を行う計画だった。秘匿された計画であり、ごく限られて者だけで作業は進められた。当時は飛行場といっても畑を均したようなもので飛行機を周りにある林に隠匿することは日常であったから、その片隅に天蓋のある仮設小屋を建て、その中で塗装変えが行われたという。日の丸が栄えるように機体は白地、晴天の青は明治節に合わせた新撰組の羽織を見立てた柄をとりいれた。下面の柄は、赤では黒みを感じるので、橙色を採用した。
隊員は通常塗装機を使って訓練飛行のなかで技量の向上を図っていたらしい。自らは「晴天打撃隊」と名乗っていたようで、無線の呼びかけは「晴天隊」であったといわれている。また、特殊飛行開始の合図は「晴天を衝け」であったともいう。
この計画は上層部で「時節に合わない」との理由で裁可されず、塗装変えされた疾風は元の塗装に戻されたそうだ。8月15日の終戦をむかえるまでもなく計画は消滅したうえに、その後の混乱で記録は失われていたのだが、昨年、ある遺族からの寄贈品から詳細が判明した。
 戦後、ブルーインパルスが白地に青とオレンジのいでたちで飛んだとき、「・・・晴天隊だ…飛んだのか・・・」と呟いた観客がいたといううわさがある。それがうわさなのか、ましてや誰であったのかなど、まったくわかっていない。



 キットは、ほぼそのまま組んでいる。このキットは何度も組んだので、ささっと組み上げられる。塗装は、キットの白地をそのままに、青とオレンジを塗った程度。だが、全面にある細かいリベットのためにマスキングテープに隙間が多発、ひどいことになった。なんとかまとめたが、近くでは見せられないけれども“まあ、いいや”。
 数十年前、「航空ファン」に橋本喜久男氏が架空塗装図を載せたことがあり、子供だった私は「ふざけるな」と思ったものだ。それをいま、自分がしている。プラモデルは精緻にとか、実機に似せて作らなくちゃいけないなんて、思わなくなった。楽しいことが第一になった。橋本氏も、そうだったのかもしれない。 


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