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誌上個展

<日本航空史> 真珠湾攻撃

  by 加藤 寛之
プラモデル コラム

 12月8日未明…といえば真珠湾攻撃なのだが、当日本航空史でもそろそろ取り上げたい。
 プラモデル的には、モデルアート社『真珠湾攻撃隊』新装改定版(2000年11月、№573)が便利。戦史面の記述が多い冊子でプラモデル製作資料にはやや物足りないのだが、私はもっぱらこれを使っている。
以下は私が各種雑誌等から抜き出したもので、プラモデル製作の参考になると思う。



 真珠湾攻撃の際の97式艦攻は、臨時の迷彩色が塗られた。どんな感じかというと、「空母飛龍と共に」『今日の話題 戦記版』第46集(昭和32年6月)に目撃談がある。そこには、「コンプレッサーが、格納庫内で轟き、全機、銀白色であった肌を、濃緑色と黒味がかった褐色に迷彩している最中だった」とある。どうやら、かなり暗い色調なのだ。
艶の状態は『航空ファン』1960年6月号に、97艦攻に施された迷彩塗装は「・・・、こんど2型に編成替えして行ったわけです。だから迷彩塗料もまだ吹きつけたばかりでザラザラしている。これを操縦士や偵察員が一緒になってよく、みがいてありましたネ」とある。噴きつけたので、そのときの表面はザラザラ。これを磨いたというから、結果的につや消しではない。整備の話で磨きはよく書かれているので、搭載艦にかかわらず磨きをしたことは同じだろうと推定する。
どうやって磨くかというと一般的には「聞くところによりますと、整備員は「おから(とうふをしぼったからをいいます)」を火にかけていったものを袋に入れ、それでごしごし機体をみがいたということですから、その結果は、ピカピカのツルツルになったことはたしかです」(『航空ファン』1972年2月号)とある。真珠湾攻撃の際の塗装は艦上なのでおからかどうかは分からないが、真珠湾攻撃に使用した新品の零戦も艶があったようだ。具体的な記述は『零戦、かく戦かえり!』(零戦搭乗員会編、文春ネスコ、2004年)をご覧いただきたい。その裏付けになるが『航空ファン』1961年4月号には真珠湾攻撃で墜落した零戦が掲載されている。その機の焼け焦げていない後胴を見ると、ピカピカに磨かれているようだ。



  97式艦攻でちょっと気になるのは、どんな状態で塗装したのかということ。胴体に800kg徹甲弾を抱えた97式艦攻を左前から撮った飛行中写真(たとえばモデルアート社『真珠湾攻撃隊』新装改定版、p.158)を見ると、主翼折り畳み位置の前縁に塗装の段差がある。艦内での塗装だから主翼を折り畳んだ状態で塗装したのであろう。模型的にはどうかと思うが、再現に凝る方は折り畳み位置で塗装を不連続にしてみたら面白そうだ。
 翔鶴搭載機は胴体側面に迷彩を施していなかったようだが、いろいろな塗装図で主翼上面がハッキリしない。『丸』昭和34年11月号に真珠湾攻撃から帰還する97式艦攻の波線状の主翼上面塗装がよく判る写真も掲載されていて、これが上面塗装の参考になると思う。



 話をかえると、真珠湾攻撃一周年記念切手には、低空から撮った鮮明な映像が使われている。内藤陽介『切手と戦争』(新潮新書、2004年)は、この切手の画像は実写ではなく映画『ハワイ・マレー沖海戦』の特撮映像だと説明している。真珠湾攻撃一周年というと、映画『ハワイ・マレー沖海戦』上映と同じタイミングだ。今回の掲載写真は、新聞紙上に真珠湾攻撃の様子が大々的に報じられた昭和17年1月に、海軍省が提供した写真を現在の毎日新聞社につながる新聞社が8枚組で刷って販売したものの一部で、原版は真珠湾攻撃機が持ち帰った実写ということになる。これの一枚と切手を比較してほしい。切手にするときは写真を参考にして新たに切手印刷用の原版を起こすのだろうけれども、私には実写から製作したとしか思えない。判断は読者に皆様でお願いしたい。



 最後は絶版キットのコレクターさん向け情報。イマイ1/50の「99艦爆」キットに、真珠湾攻撃で炎上する米艦の前を飛行する機を描いた箱がある。この箱の左隅に、描かれた機体の乗員説明文があるのだが、初期の販売品にはこの文がないという。発売後に当該機パイロットの父から電話で知らされ、次の生産品から加筆したとイマイの社長さんが証言している。コレクションの際はご注意を。



 掲載写真はすでにふれたように、海軍省の提供写真を印刷したもの。不鮮明なのはWeb用に軽くしてあるだけでなく、元の紙質が粗末なことや刷りの品質も現在とは比較にならないため。相当に多くが販売されたようで、ネットオークションなどで比較的容易に入手できる。


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