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特集 プラモデル温故知新

M3 グラント(モノグラム 1/32)

  by Takafumi



 モノグラムから発売されていたM3 グラントを製作しました。購入時ですでに生産休止となって久しかったのですが、模型店で絶版キットとしては比較的安価で売っていたのと、同梱されていたシェパード・ペイン氏が製作したディオラマの写真と製作方法が掲載されているリーフレット目当てで購入しました。
 キットは部品数が少なく、再現度も、ライトにライトガードがモールドされているなど所々簡略化されており、現代の微細なところまで再現されているキットと比べるとありえないような構成が散見できます。ただ、私は実物を見たことも、実物の寸法を測ったこともありませんが、組み上げた時のプロポーションは良い印象でした。

 キットは同社の「M3 リー」と多くの部品を共通にしているらしく、リーの特徴のままになっている箇所がいくつか見受けられたため、その辺りを修正したほかに、気になった箇所に手を加えました。



 まず、グラントとして再現すべく今回作り直した箇所を以下に記します。

 ● 車体後部上面にモールドされている雑具箱を2つとも削り落とし、キットとサイズが違う雑具箱をプラ板で新造しました。
  雑具箱を削った跡の穴は、新造した雑具箱を載せた時に隠れる程度にプラ板を貼り足して小さくしました。

 ● 雑具箱を削った跡に、WAVEの「R・リベット 丸」とエバーグリーンの1mm幅のプラ帯材でディテールを追加しました。

 ● 運転室上面に、プラ板で新造した運転手用のペリスコープとペリスコープカバーを着けました。

 ● 砲塔に搭載されている37mm砲の下にある、防盾から伸びている棒状の部分を切り落とし、その跡にプラ板などでディテールを追加しました。

 とりあえず以上です。
 他にも砲塔に立っているアンテナの基部など、作り直したほうが良い箇所がありますが、なるべくキットの部品を使いたかったのでそのままにしています。
 履帯も、キットのものは、履板同士をつなぐエンドコネクターの位置が間違っており、また、グラントに標準で装備されていたタイプに替えたいところですが、そのまま使用しました。履帯には塗装する前にタミヤのナイロン・PP用プライマーを吹き付けました。念のため少量を履帯のほんの一部分に吹き付けて様子を見たところ、特に問題がなかったので、その後履帯全体に吹き付けました。



 リーとグラントの区別ではなく手を加えた箇所として、車体に搭載されている75mm砲の砲口付近が実物はえぐれているので再現しました。資料写真を参考に、えぐれさせる部分を模型用の、先が細くなっている丸やすりの先端とデザインナイフで慎重に削った後、紙やすりで仕上げました。
 先述したフロンライトにモールドされているライトガードを削り落とし、エバーグリーンの1mm幅のプラ帯材をアーチ型に曲げて新たにライトガードを作りました。ライトガードの角度は現物合わせで決めました。薄くて腰がある材質でしたので、手で簡単に曲げることができました。アーチとフェンダーの接合部に面相筆に含ませたラッカーシンナーを少量流し込み、定着するほんの短い間押さえただけで、アーチ型のくせがついたままになってくれました。
 砲塔のハッチを開いた状態にしたので、ハッチの内側にプラ板で作ったペリスコープを着けました。運転手用のペリスコープのカバーを自作しておきながら、砲塔のハッチのものにもカバーがあることを完成後に気付きました。
 車体上面の乗員用ハッチはキットのものより大きいものに作り直しましたが、これは余計な作業だったかもしれません。また、作り直すにしても、もう少し薄い板で作るべきでした。
 他にも気になったところをいくつか作り直しています。
 車外装備品は資料写真を参考に推測も交えて、説明書の指定と違う位置に接着したものや、キット付属の部品で使用しなかったものがあります。



 北アフリカ戦線を題材にしたディオラマに登場させるため、塗装もその仕様にしました。北アフリカ戦線の英軍車輌の塗装色は諸説ありますが、今回参考にした車輌はデザートイエローをベースにオリーブグリーンで迷彩塗装を施し、黒と白のラインで縁取りしていたと解釈しました。当時の写真をみると暗い色の上にデザートイエローを塗装したと思われる車輌や、製造元のアメリカでまずオリーブドラブで塗装され、その上にデザートイエローを塗られるも、所々剥がれてオリーブドラブがむき出しになったのではないかと推測できる例も散見できます。デザートイエローと書きましたが、本作はガイアカラーのダークイエローを元に白を少し混ぜて地色を作りました。地色のデザートイエローを吹き付けた後、オリーブグリーンを塗る箇所の輪郭を2Bの鉛筆で描きました。迷彩パターンは資料写真を参考にしつつ、自分の好みで決めました。
 オリーブグリーンの部分はGSIクレオスがグンゼ産業だった頃に購入した、Mr.カラーの「NATO軍(ドイツ連邦軍)戦車色」のセットの中からRAL 6031 ブローンセグリュンを、黒いラインは同セットのRAL 9021 テーアシュバルツをそれぞれ使用しました。ビンの中で固まっていたためMr.カラー専用 真・溶媒液を使って復活させました。使用したRAL 6031とRAL 9021 は現在GSIクレオスから単品で発売(RAL 6031は現在発売されているものは「ブロンセグリュン」の表記になっています)されていますが、今回使用したものと現在発売されているものとで同じ色味かどうかは比較検証しておりませんので、この作例もご参考までに。アメリカで製造された車輌ということもあり、斧などの車外装備品も車体と同じ色に塗りました。
 ディオラマで共演している、繊細な外見のスタッフカーに対して武骨さのようなものを演出したかったので、地色以外の迷彩色は筆で塗りました。迷彩パターンを参考にした車輌の写真を見ると、今回オリーブグリーンで塗った箇所が所々むらになっているというか、まだらに見えたのも筆で塗った理由です。オリーブグリーンと黒は塗料を薄めに溶き、筆に極少量含ませ、擦らないように手早く塗り、乾燥後に塗り重ねる作業を繰り返しました。昨年の4月号に掲載された拙作チーフテンと同じ塗装の方法です。本来は色むらがでないように注意しますが、今回は所々にむらや刷毛目が残るように意図して塗りました。不自然にならない様に塗るのが難しく、これはこれで手間がかかる作業でした。当時の写真に写っている迷彩色がまだらに見えるのは、砂埃などの汚れのせいか、あるいはさらに別の迷彩色が塗られていたからかもしれませんが、白黒写真ということもあり、よく分かりません。
 白いラインはタミヤエナメルのフラットホワイトで塗装しています。オリーブグリーンと黒を塗った時と違い、普段の筆塗り作業を行う時と同じ程度の濃さに溶いて塗りました。
 マーキングはタミヤの1/35 ダイムラースカウトカーから、余っていた第7機甲師団のマークのデカールを左側のサンドシールドの前部に貼っています。
 デカールが乾燥した後、水性ホビーカラーのつや消しクリアーを全体に吹き付けました。
 車輌全体に付着した砂埃の表現はパステルを粉状に削ったものを使用しています。



 ディオラマは先述した通り、北アフリカ戦線を題材にしたものです。
 ベースは100円ショップで購入したフォトフレームを使用しています。フレームの内側がA4サイズ程のものです。フレームには木目シートを貼っています。内側に割り箸を補強材として接着した後、隙間にダンボール板の切れ端を木工用ボンドで貼りつけ、その上にやはり木工用ボンドを塗り、石粉ねんどを盛り付けて地面を作りました。地面に、すりつぶした鹿沼土をまばらに撒いた後そっと押し付け、その後小さいフルイ(茶漉しくらいの大きさのもの)を使って粉状の鹿沼土だけが地面に落ちるように、ねんどの地肌が見えなくなるまで地面全体に撒きました。ねんどが硬化した後、水と少量の中性洗剤と木工用ボンドを混ぜたものを、スプレー式洗剤の空き容器を使って吹き付け、鹿沼土を固着させました。
 共演しているハンバー スーパー スナイプはエアフィックスの「MONTY'S HUMBER」を北アフリカ戦線仕様にしたものです。
 戦車の搭乗員はキットに付属しているものにマイクのコードをエナメル線で追加しました。2体の歩兵はエアフィックスのマルチポーズフィギュアです。ライフルのスリングはワインのビンの口に巻きついている金属板を細切りにしたものです。


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