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特集 ジェット戦闘機

 「二人で超音速を!」English Electric Lightning T.4
(Trumpeter 1/72 English Electric Lightning F.1A/F2
+NEOMEGA1/72 BAC Lightning T.4 Conversion Set)

by 大山 盛幹



 今月の「ジェット戦闘機」の特集に合わせて、English Electric Lightningの練習機型のLightning T.4製作しました。



  English Electric Lightning は、イギリスのEnglish Electric社が開発し、イギリス空軍、サウジアラビア空軍及びクウェート空軍で運用されたジェット戦闘機で、イギリス単独開発の最初で最後の超音速機であるとともに、2基のジェットエンジンを前後にずらした上で縦に並べて配置するという、後にも先にも例がないエンジン配置が採用されていました。また、主翼はデルタ翼の空力的に必要性が無いとされる内縁部をカットしたような形状で、構造上は通常の後退翼と同じであり、図らずも後の標準たるクリップドデルタ翼の始祖になったと評価されている機体です。
 試作機 P.1A 1号機 (WG760) は1954年5月にロールアウト、8月4日に初飛行し、水平飛行でマッハ1.2、緩降下でマッハ1.4をアフターバーナー無しのサファイアエンジンで記録する素性の良さを示しました。そしてエイボンエンジンに換装した実用原型P.1Bを経て、1960年12月より、イギリス空軍の第74飛行隊が最初の量産型F.1の配備を開始し、その後、可変式アフターバナー方式のエイボンエンジンに換装したF.2、角型の大型垂直尾翼とし、機関砲の廃止、レッドトップAAMを装備して全天候要撃能力を備えたミサイル・キャリアとしたF.3、さらに、主翼を二重後退翼とし、ベントラルタンクを大型化し、主翼上面に増槽を装備可能にして航続距離の延長を図ったF.6へと発展していきました。



  一方で、コクピット幅を29㎝拡げてサイド・バイ・サイドの座席配置で複操縦装置を設けた練習機型が開発されました。戦闘機の練習機型の座席配置はタンデムとなることが一般的ですが、サイド・バイ・サイドを選択したのは、コクピット直後に上部エンジンのインテイク・ダクトがあり、機体重心の再設計による胴体延長をしなくとも複座にしたかったためと思われます(でも、イギリスの複座練習機は、Hunter T.7、Jet Provostをはじめとして他国よりもサイド・バイ・サイドが多いので、イギリス人の好みかもしれませんね。ちなみに、練習生は左座席に着席します)。練習機型としては、T.4、T.5の2タイプ(輸出型は、T.54、T.55)があり、T.4はF.1Aを、T.5はF.3をベースに開発されたものです。T.4は先端の丸い垂直尾翼(形状から「魔法使いの帽子(Witches Hat)」と言うらしい)、胴体両側面のケーブルダクトはミサイル架までで、ミサイルはファイアストリークAAMを搭載しました。一方、T.5は先端が角型で大きくなった垂直尾翼で、胴体両側面のケーブルダクトはT.4のそれより前方に延長されており、ミサイルはレッドトップAAMも搭載できるようになりました。ベースになった戦闘機型から機関砲は撤去したものの、ミサイル運用能力は残されていますので、万一の場合、迎撃機としての実戦運用も可能な練習機でした。T.4は試作型を含めて22機が生産されましたが、ほぼ半数近い9機が事故で失われていて事故率の高さには驚きます。



  さて、Lightning の複座型の1/72キットは、長年にわたりMatch BoxのT.55しかなかったのですが、今ではSwordからT.4、T.5の2タイプが発売されています。しかし、今回はTrumpeterのF.1A/F.2 とNEOMEGA T.4Conversion Setの両キットを用いてLightning T.4を製作しました。Flight Craft №11「English Electric Lightning(2016年)」の82頁では、複座型を製作するには「Swordのキットが発売されるまでは、この組み合わせがベストだ。」と記載されています。現在は、Swordよりズバリのキットが発売されておりますので、展示会ではよく間違われますが、Trumpeter+NEOMEGAです。スピードブレーキが開いた状態になっていたりとよく見ると、Swordとは違うのがわかると思います。



  製作にあたっては、Trumpeterからは主翼、垂直・水平尾翼そして脚やエンジンノズルを流用します。
Trumpeterは、水平尾翼付近の胴体の表現が自分自身のイメージと異なっていたのですが、NEOMEGAの胴体を使用するのでこの部分は随分すっきりしました。ただ、Trumpeterの垂直尾翼は断面形がプラ版のようで翼断面が表現されておりませんが、作例ではそのまま使用しています。NEOMEGA T.4Conversion Setはレジン製の胴体、コクピット、計器盤、操縦桿、シートと塩ビのバキュームフォームキャノピーが含まれ、主翼等はTrumpeterのキットを使用するように指定されております。このため、特に調整しなくとも、Trumpeterのパーツはピッタリと合致します。ただ、キャノピーは塩ビの絞り出しのため、切り出しと接着にはプラとは違う注意が必要です。切り出しは、少し大きく切り出して、パーツ毎の摺り合わせを繰り返して大きさを整えていきます。接着については、塩ビの切断面の接着だけでは固定することができませんので、コクピット周りに1㎜幅のプラ板を接着して、これをのりしろとして、これに塩ビキャノピーをエポキシ系接着剤で接着しています。



 細部工作としては、機首のピトー管は真鍮パイプと真鍮線の自作ピトー管に置き換え、主脚にブレーキケーブルを追加しました。実機のコクピット後方に横に並んだ2本の細いアンテナについては、完成品の保管方法の関係からオミットしてあります(自宅に展示ケースがなく、完成品は箱詰め保管です)。



  デカールはTrumpeterのキット付属の物を使用しましたが、中国製としては密着度もよく筋彫りに馴染み余白の少ない上質の物でした。通常は塗装で表現する主翼上面のウォークラインも、今回はキット付属のデカールを使用しましたが、あまり違和感はないようです。シリアルナンバーはT.4のそれになるように、キット付属のシリアルナンバーを切って順番を入れ替えて使用しました。
塗装は機体全面のシルバーはAlcladⅡのアルミニウムを使用し、機首とジェットノズル付近は、Hasegawaのミラーフィニッシュを貼り、材質の違いを表現してみました。1963年 ワティシャム基地 第56飛行隊の所属機です。完成した作品の塗装を見た家族からは「ウルトラマンに出てくる科学特捜隊のジェットビートルみたい。」と言われてしまいました。
The Aviation Workshop PublicationsのOn Target Profile №13「English Electric Lightning in Worldwide Service (2008年)」の38頁と、Model Alliance Decals 「EE.Lightning F.1/F.1A/F.2&T.4 Part4 (2009年)」のインストラクション冊子の7頁に塗装図が掲載されています。



 資料としては、ネットの写真の他、洋書ではLightning飛行隊の塗装図については前述のThe Aviation Workshop PublicationsのOn Target Profile №13「English Electric Lightning in Worldwide Service (2008年)」を、線図、イラストはSAM Publications MDF Modelers Datafile №7「The English Electric Lightning (2003年)」を(T.4、T.5の詳細な細部イラストが8頁に亙って掲載されています)、細部写真はDaco Publications Uncovering the №6「Uncovering the English Electric Lightning (2016年)」を参考にしました。
加えて、Ian Allanの「English Electric P1 Lightning (1985年)」、Pen & SwordのFlight Craft №11「English Electric Lightning(2016年)」も参考になりました。
和書は、Lightningの試作機からの発展過程や各型の差異の理解に使用し、航空情報臨時増刊「世界のジェット戦闘機 仏・英・独・ソ連(1967年)」、航空情報別冊「英国ジェット軍用機(1994年)」、世界の傑作機旧版№75「BACライトニング( 1976年)」、新版№80「E.E./BACライトニング( 2000年)」を参考にしました。






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