Home  > Republic F-84F “Thunderstreak”(Monogram 1/48)>特集 ジェット戦闘機>2022年10月号

特集 ジェット戦闘機

Republic F-84F “Thunderstreak”(Monogram 1/48)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


Republic F-84F (1/48) Monogram Box Artより

 今回は特集「ジェット戦闘機」に合わせ、F-84F “Thunderstreak”(Monogram 1/48) を製作しました。我々の世代で「ジェット戦闘機」というとF-86やセンチュリーシリーズの機体を思い浮かべてしまいます。それなのに何故か今回はF-84Fなのです。私の記憶では、確かF-84Fは日本とは無縁、つまり数ある米軍機の中で日本に飛来したことのない数少ない機体の一つだと思います。欧州ではF-84G ”Thunderjet” の後継機としてNATO諸国に供与されたため、多数の機体が飛んでいたのですが・・・。そんなことで実機を見る機会も無かったのですが、その昔雑誌の写真で見た銀ピカで派手なマーキングを付けた、鋭い後退角翼を持つこの機体に魅力を感じたことがありました。今回は、そんなイメージを思い出しながらモノグラムのキットを製作してみました。 

実機紹介

 1949年、リパブリック社はF-84の高性能化を目指し、後退翼化した機体を試作することになりました。試作機は既存のF-84Eの胴体に新しく設計した後退角40度の主翼と尾翼を付けたもので、エンジンはE型のアリソンJ35-A-17を僅かにパワーアップした-25が搭載されました。当初この機体にはYF-96Aの呼称が与えられましたが、後にYF-84Fに改称されています。試作1号機の初飛行は、1950年6月3日に実施されました。その直後の1950年6月25日、朝鮮戦争が勃発したため空軍は本機の実用化を急ぎます。しかし量産化にあたっては、機内搭載燃料の増加や搭載エンジンの大型化などによる胴体の大型化、機首空気取り入れ口の形状変更、胴体側面へのエアーブレーキの追加、また視認性向上のためのキャノピーの形状変更など、多くの設計変更があり、しかも搭載を予定していたライトJ-65ターボジェットエンジンの生産の遅れも加わって、実用機の引き渡しは朝鮮戦争後の1954年にずれ込んでしまいました。

F-84Fは開発したリパブリック社だけでなく、ジェネラルモーターズでも生産され、総生産機数は2112機にのぼりました。これらは米空軍のTAC(戦術航空軍団)とSAC(戦略航空軍団)に配備され、それぞれ6個航空団を編成し、TACでは戦闘爆撃機として、またSACではB-36の護衛戦闘機としての任務が与えられました。しかしSACではB-52の配備が始まると護衛戦闘機の任務が無くなり、1957年には全機、TACへ移管されたのです。TACでもF-100の導入が始まるとF-84Fは予備役への転換が進められる一方、NATO諸国に供与されていたサンダージェットの後継機として1301機もが海を渡り、欧州の空で再び活躍の場を与えられたのでした。国内に残った機体も多くがANGで余生を送ることになりました。

F-84Fは、サンダージェットで育まれた戦闘爆撃機の遺伝子を引き継ぎ、F-105へとつながる戦術戦闘機の地位を確立した機体と言えます。自動操縦装置とTACAN、空中給油受油装置の装備によって長距離飛行が可能となり、加えて積載能力2.7トンの能力はTACにとっては魅力でした。さらにF-84G同様、戦術核兵器の運用能力が付与されたことも戦術戦闘機としては重要な要素でした。なお核兵器は左翼内弦パイロンにのみ搭載できました。


F-84F “Thunderstreak” Monogram (1/48)

製作

 モノグラムのキットは基本的に凸のパネルラインです。製作前に悩むのはパネルラインを彫り直すかどうかです。合わせ部分に多少難があるため、左右を接合した際左右のラインがつながらないとか、左右の合わせ目の整形が厄介だとか、いろいろ問題点が想起されます。今回のF-84Fのキットも、やはり凸モールドですが、全体に細かくパネルラインがモールドされており、彫り直す気力がなくなりそのまま活かして製作することにしました。デカールは、欧州に駐留した第81戦闘爆撃航空団、第78戦闘爆撃飛行隊の隊長機のものが付属しており、これを使って仕上げました。では各部の製作過程のポイントについて順を追って紹介していきます。

 まずはフィットチェックです。胴体の左右、胴体と主翼、ウィンドシールドやキャノピーと胴体、水平尾翼の取り付け部などなど、各部の合わせ目をチェックしておきます。またこの機体はテイルヘビー、しかもかなりのテイルヘビーのため錘の入れ場所も最初に探し出しておく必要があります。

1. コクピット
 まずコクピットの組み立てですが、キットはサイドコンソールがモールドされたバスタブコクピットと主計器盤、スティック、そして油圧系のハンドポンプで構成されています。いずれも精密にモールドされています。
(写真1)が主計器盤で (写真2)が各構成品を塗装後組み立てたコクピットです。
この段階では組み込んでいませんが、もう一つの構成品がエジェクションシートです。こちらはヘッドレストだけが別部品となっていますが、シートベルトはシートにモールドされています。(写真3)が塗装したエジェクションシートです。

(写真1) 主計器盤

(写真2) コクピット



(写真3)  エジェクションシート



2. 胴体部の組み立て
 胴体は左右パーツを貼り合わせるだけですが、貼り合わせる前に、先に述べたコクピット以外に機首インテイクダクト部の中央スプリッター(前脚収納部)と後部胴体のエンジン排気ダクト、そして錘を取り付けなければなりません。
まず中央スプリッターですが、これも左右パーツを貼り付けて構成するのですが、(写真4)の右側パーツを見て分かるように、この部分の内側には前脚収納部が作りこまれ、収納部の扉も一緒にモールドされています。
前脚収納部には配線や部品が細かくモールドされているため、事前に塗り分けておきます。次にこれを左右貼り合わせ、整形後銀塗装をしました。(写真5)
またこの部品の上部に隙間があったので錘(鉛シート)を入れました。


(写真4)インテイクダクト中央スプリッター右側パーツ
(写真5) インテイクダクト中央スプリッター


(写真6) 前胴部へパーツを組み込んだ様子


 次に後部胴体にエンジン排気ダクトを取り付けます。排気ダクトは内側を焼鉄色で塗り、薄めの艶消し黒を数回吹き付けて排気の汚れを表現してみました。胴体側も排気口裏側を焼鉄色で予め塗っておいてエンジン排気ダクトを取り付けました。(写真7)
そして左右の胴体パーツを貼り付ければ胴体が組み上がります。最後にパネルラインをマスキングテープで保護して貼り合わせ部を整形していきました。(写真8)

(写真7) 排気ダクトの取り付け


(写真8)組み上がった胴体部



3. 主翼の組み立て
 主翼は中翼のため左右の翼を胴体に差し込んで接着・固定する方式です。左右の主翼はそれぞれ上下パーツから成り、上面パーツの内側には主脚収納部の桁構造や油圧配管などがモールドされていますので、接着前にしっかり塗装しておきます。(写真9)
その後上下面パーツを接着し、接合部を整形します。(写真10)
この写真で分かるように主翼の根元には桁が出ており、左右の桁が胴体に差し込むと互いに嵌り込んで固定されるようになっています。そのため、下半角も心配なく設定することができます。

(写真9) 右翼上面パーツ



(写真10) 組み上がった左主翼




4. 胴体部と主翼の結合
まず接合面のすり合わせを行います。F-84Fの主翼付け根部は比較的長く、接合面の隙間ができるだけ少なくなるよう、胴体側、主翼側とも接合面をサンドペーパーで平滑に整形しました。接着後隙間には流し込み接着剤を流しこみ、素材を溶かして隙間を埋めました。それでも空いた隙間には、パテを溶かして筆で塗りこみ乾燥後、はみ出たパテをシンナーでふき取り、その後整形しています。
(写真11)が胴体部と主翼を結合した状態です。写真にはありませんが水平尾翼も接合部のフィッティングだけは済ませました。これで機体の工作はほぼ完了です。 

(写真11) 胴体部と主翼を結合した状態



5. 塗装とデカール貼り付け
 機体が無塗装のため銀塗装になりますが、その前にいくつか先に塗装しておく部分があります。まず垂直尾翼先端部をエアクラフトグレーにその前縁を黒の艶消しで塗装します。次にエアーブレーキの収納部をインテリアグリーンで塗装し、最後に排気口周辺を黒鉄色で塗りました。乾燥後これらの箇所、並びにコクピット、脚収納部をマスキングし、全面に銀(Mr.カラーの8番)を吹き付けました。

 銀塗装が乾燥した後、マスキングしながら機首上面のアンチグレアをオリーブドラブで、背中のスパインの一部を艶消しの黒で、主翼端とフラップの根元部分を赤(FS11136)で塗りました。赤い部分についてはデカールと同じ色になるので試し塗りをして同色になるかどうか確認しました。こうして塗装の終わった状態の機体が写真12です。写真はありませんが、水平尾翼も全面銀、翼端を赤で塗っています。

(写真12) 塗装の終わった機体


 デカールの貼り付け作業に入る前に塗装済みの第2キャノピーを機体に接着しておきます。これはデカールの一部がこのキャノピーの窓枠に掛かるからです。準備が整ったらデカール貼りですが、前作のEF-111Aの時にも書きましたように、モノグラムのデカールはフィルムが少し厚目のため、凸パネルラインへ馴染ませるのが今回も大変でした。案の定一部ではシルバリングを起こしてしまいました。また、貼ってから分かったことですが一部で印刷の下地の白が少しずれていたようです。これはもう修正が効かずそのまま使用しています。
(写真13)がデカールを貼り終えた機体右舷、
(写真14)が機体左舷前方部です。

(写真13) デカールを貼り終えた機体右舷


(写真14) デカールを貼り終えた機体左舷前方部


6. その他部品
 機体に取り付く各部の部品について紹介しておきます。1つ目は前脚です。
(写真15)が組み上げて塗装を終えた前脚です。前照灯はクリア部品として付いていたパーツに塗装をして組み込んだものです。ブレーキパイプなどもモールドされており細かく塗り分ければ実感のある仕上がりとなります。

(写真15) 前脚


(写真16) 主脚



 3つ目はウィンドシールドと第1キャノピーです。(写真17)
クリアパーツの肉厚は少し厚目ですが透明度はまずまずです。窓枠のシール部分もマスキングして塗装で仕上げました。

(写真17) ウィンドシールドと第1キャノピー



 4つ目は胴体下面に取り付けるRATO(Rocket Assisted Take Off)用の補助ロケットです。(写真18)です。

(写真18) RATO用補助ロケット


 5つ目が増槽です。(写真19)
大きい方が内舷用、小さい方が外舷用です。内舷用の増槽が大きいのは左舷に取り付ける戦術核爆弾とのカウンターバランスからです。パイロンとタンクは別部品で構成されています。

(写真19) 増槽


 最後がMk.7戦術核爆弾とその運搬カートです。(写真20)
RATO用補助ロケットやこのカートなどのアクセサリーは、なかなか面白いと思いました。ちょっとしたアクセントになります。

(写真20) 戦術核爆弾と運搬カート


7. 最終組み立てと仕上げ
 塗装とデカールを貼り終えた機体をスーパークリア半艶でオーバーコートし、適度に墨入れと汚しを施しました。また主翼端の航法灯をクリアレッド(左舷)とクリアブルー(右舷)で塗っておきます。最後に水平尾翼やその他部品を組付けて完成です。キャノピーは独特の跳ね上げ開閉式で、開状態で固定しました。
(写真21~25)に完成機の写真を示します。

(写真21)完成したF-84F “Thunderstreak”



(写真22)完成したF-84F “Thunderstreak”



(写真23)完成したF-84F “Thunderstreak”



(写真24)完成したF-84F “Thunderstreak”



(写真25)完成したF-84F “Thunderstreak”


 完成したサンダーストリークは如何でしょうか?我田引水かもしれませんが、製作者としては「何とかイメージした形に近づけたかな」と思っています。古いキットですが、さすがモノグラムです。最近は豪華、高価格の製品が目立ちます。部品点数も多く、構成が複雑で経験のあるモデラーにしか作れそうもないものもあり、模型製作が子供の趣味から遠ざかっていくのも分かるような気がします。モノグラムのキットを見ていると、子供でも完成まで持って行けるほどの部品点数で、ある程度の完成品を手にすることができます。ベテランのモデラーには少し苦労することで、より精密感のある完成度の高いモデルに仕立て上げることができる、そんなデュアルユースキットのように思えてきます。“Simple is the best”は筆者の技術者時代のモットーですが、プラモにも通じて欲しいものです。


  Home>Republic F-84F “Thunderstreak”(Monogram 1/48)>特集 ジェット戦闘機>2022年10月号
Vol.170 2022 October.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
                    editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず/リンクフリー
「webモデラーズ について」 「広告のご出稿について」

プラモデル模型製作特集2


TOTAL PAGE