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誌上個展

<日本航空史> 世はスピード時代 日本航空のCV-880M

  by 加藤 寛之
プラモデル コラム



 ジェネラルダイナミック社のコンベア部門は、コンソリデーテッド・ヴァルティー社が改称した名前。そのころのコンベアは旅客機もいろいろと製造していた。米国内ではボーイング707とダグラスDC-8に遅れはしたが、1958年12月15日に中距離用の快速ジェット機CV-880をロールアウトさせた。日本では、YS-11のモックアップが完成したころにあたる。プラモデル業界では、マルサンのノーチラス号発売時期と同じだ。
 日本航空は改良型CV-880Mを導入した。『航空情報』1961年9月号によれば、日本航空のCV-880Mの初号機は1961年7月末にコンベアの工場で引き渡され、8月上旬に東京へ空輸、9月1日から東京~札幌便に就航したらしい。同誌の裏表紙の広告には「世界最高のスピード CV-880Mジェットアロー 9月より国内線・・・東南アジア線に」「国内線にはじめて登場した“純ジェット”ジェットアローは マッハ0.89(時速1,000粁)の音速にせまる驚異的なスピードが今までの東京-札幌・東京-福岡間をそれぞれ1/3に縮めます。」とある。マッハ0.89は、富士T-1の要求性能より高速だと思う。
“純ジェット”って何だ、なるが、『航空情報』の同号に全日本空輸の広告も載っており、フレンド・シップの紹介文に「新鋭ジェット・プロップ機 フレンド・シップ就航」とあるように、ガスタービンで力を引き出しているターボプロップもレシプロエンジン機との差別化で「ジェット」を名乗っていたのだ。全日本空輸はさらに7月12日にバイカウント828型を東京-札幌間に就航させているから、“純ジェット”は明らかにターボプロップ機を意識した表現である。



  よくみると同誌で、日本航空は広告で東京-札幌間を60分とし1/3に縮めますとうたうが、『航空情報』の本文によればバイカウント828型は東京-札幌間を1時間30分で飛んでいるという。1/3じゃなくて2/3なのだが、誇大というよりは広告文が掲載時には陳腐化するスピード競争の時代だったと思いたい。日本航空よりも早くCV-880Mを導入した台湾の航空会社は「すべり出しは上々。座席が売り切れてしまって・・・CATの意気、大いに高し」と、これも同誌にある。世はスピード時代、日本航空は純ジェットのCV-880M導入成功が誇らしかったと思う。
 日本航空は、コンベア880Mを当初に5機、その後はリースも含めのべ9機を運用したようだが、使用期間はほぼ10年と短かった。運用しにくかったこと、事故喪失があったことなどが理由にあげられているが、最後は機体規模が違うボーイング747機の下取り機として退場した。つまり、拡大する航空需要に敗れたスピード退場だった。



 掲載のカラー版はどちらも絵葉書で、バイカウントと並んでいる東京国際空港のものは大判葉書の一部分。モノクロはおそらく入間基地の航空際に飛来したときの写真だろうと思うが判然としない。


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