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三菱 17試艦上戦闘機 烈風(A7M2)
(1/50 ソリッド・モデル)

by 小山新一



(実機について)
 日本海軍は、メーカーなどに機体の試作を発注する際、昭和の元号を頭に付していた。
 のちに96式艦上戦闘機となる機体は9試単戦、零式艦上戦闘機の場合は12試艦戦であった。したがって本機烈風の場合は17試だから、試作指示が出されたのは昭和17年ということになる。
 9試から12試の間が3年であることと比較すれば、12試から17試の間は5年もある。これだけで、次期艦戦の試作指示は遅きに失したと言わざるを得ない。こうなった一因として、大戦初期における零戦の、敵戦闘機をしのぐ性能と活躍ぶりがあげられよう。軍首脳も、設計・製作を担当した三菱も、この戦争は零戦(およびその改良型)で乗り切れるとの判断と自信があったのでないか。
 確かに、大戦初期のアメリカ海軍の主力艦戦グラマンF4Fワイルドキャットに比べ、零戦は速度、上昇力、空戦性能、航続力など、ほぼすべての要目で上回っていた。堀越技師を主務者とする三菱航空技術者の創意と努力の結実と言えるが、それは防弾装備を犠牲にしての高性能でもあった。
 烈風の試作指示が出された昭和17年6月、日本はミッドウェー海戦で大敗を喫する。これが日米の形勢逆転のきっかけとなる。対米戦の早期講和は見込み薄となり、戦争の長期化にそなえ、海軍首脳は零戦の後継機開発を急がせることとなったのである。
 以下烈風はエンジン選定でもたつき、誉エンジンに換えて自社のハ-43を搭載し、ようやく所期の性能をクリアする。だが、とき既に遅しで、試作機8機が完成した時点で終戦を迎えている。
 かたやアメリカは、グラマン社がF4Fワイルドキャットの後継機としてF6Fヘルキャットを開発、昭和18年から実戦に投入している。そのヘルキャットの性能は、ほとんどの要目で零戦を少しずつしのいでいた。凡作といわれるヘルキャットだが、兵器としてはこれでいいのである。
 もう一つ人的要素もおろそかに出来ない。ミッドウェー海戦によって、日本海軍は主力空母数隻と、多くの艦載機を失ったが、同時にベテラン搭乗員の喪失も大きかった。零戦の優位は、彼らの技量にかなりの部分、支えられてもいたのである。

パイロットと整備員を配して


(模型の制作)
 図面をみて感動し、この飛行機を形にしたいと強く思った機体が2つある。一つがすでに本誌に制作記事をのせていただいた98式直接協同偵察機(作図 渡部利久氏)で、もう1機が今回の烈風である(作図 鈴木幸雄氏)
 潮書房刊の「丸メカニック」シリーズは、1 紫電改、2 飛燕、3 零戦(1)、4 零戦(2)と有名機が続き、新味のないラインナップであった。それがNO 5で烈風ときた。突然の試作機のチョイスは驚きであったが、折り込み図面の豪華さと精密さには眼をみはらされた。2枚の折り込みで作図された1/50の5面図は、機体の線図だけでなく、赤と青の色別で主要な内部構造まで描かれていた。発刊年、号は1977年7月だから45年も前のことになる。
 当時烈風のプラモは、何ともおおらかな出来のアオシマ1/72のものしかなかった。2枚にわたる5面図を前に、私は「この図面をもとにソリッドで烈風をつくる」と決めたのであった。
 当時「航空ファン」誌には読者の投稿写真で作る模型のページがあった。一つがプラモデルのそれで、もう一つがソリッド・モデルのものであった。プラモデルを作っていた私の眼でみて、ソリッドの方が断然プラモより精密であり、したがってあこがれでもあった。「ソリッドモデル工作の入門」(文林堂)なるガイドブックも買ってあったのである。
 かくて、私のソリッド第1作は手探りでスタートした。
 昔のことゆえ、細かいことは忘れてしまっているが、完成まで丸々1年を要した。機体の大まかな形までこぎつけた段階で、あこがれのソリッド・モデラー(故)長谷川一郎 氏に、写真とともに手紙を送る。ぜひ訪ねてきて下さいの言葉に甘え、自宅まで押しかけ、教えを受けたのは今なお忘れがたい思い出である。
 塗装は今は製造停止になったピースコンで吹き付けた。日の丸、主翼前縁のオレンジ・イエローも吹き付けで仕上げた。尾翼のシリアルのみ筆による手描きである。343-03はもちろん架空のもので、紫電改で有名な343空に、試験的に配属されたとの設定である。

 完成は1979年5月、私もまだ若かった。

機体左側面(後方から)


機体右側面(前方から)


制作途中の写真(モノクロ!)


コクピット周辺のアップ(風防可動)


パイロットと整備員を配して



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