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特集 グラマン

 Grumman OV-1D Mohawk (Roden 1/48 )

by 翔バナイカイ 大山 盛幹



 今月のテーマは「グラマン」ですので、F-14 Tomcatをはじめとした戦闘機の作例が多いのではないかと思いますが、「グラマン」は戦闘機以外も飛行艇や農業機も作っていますので、その中からかっこいいとは言えませんが、個性的なフォルムのGrumman OV-1D Mohawkを製作しました。
Grumman OV-1 Mohawk は、1968年にHasegawaから1/72のOV-1A/C 、OV-1Bの両キットが発売されて以降20世紀の間は、これが唯一のキットでした。21世紀になって、Rodenから1/48のキットが、Clear Prop!から1/72のキットが発売されました。21世紀のキットがいずれもウクライナ製ということは興味深いものがあります。



  OV-1 Mohawk は、アメリカ合衆国のGrumman社が製作した偵察機です。開発当時、陸軍には地上部隊との直接協同偵察機は、Cessna O-1 Bird Dogくらいしかなく、前線での観測、偵察そしてある程度の攻撃能力を有する機体として開発されました。また、海兵隊も近接支援機を求めていたため、陸軍ではAO-1、海兵隊ではOF-1と呼ばれて発注されました。1957年末にはモックアップが完成し、トンボの目のような機首はサイドバイサイドの座席配置のため胴体より膨らんだキャノピー、胴体はヘリコプターのように細く、主翼は中翼、STOL性能と地上砲火を避けるため主翼上面に取り付けられたエンジン、そして3枚の垂直尾翼とけっしてスマートといえるフォルムではありませんでした。早い段階で海兵隊が開発から外れたため陸軍単独開発となりました。1959年10月から生産が開始され、アメリカ本土のみならずヨーロッパ、中南米、アジアにおいて広く使用されました。1962年の三軍呼称統一によりOV-1となりました。



 最初の生産型はA型で写真偵察型、武装偵察や近接支援に用いられるようにA型の武装を強化したJOV-1Aも生産されました。次の生産型は主翼を左右それぞれ3ft.延長しSLAR(側方監視レーダー)搭載のため前縁スラットとエアブレーキを廃止したB型です。この型は、機首右下方に装備されたSLARアンテナポッドで簡単に識別できます。最も多く165機が生産されたのは、胴体中央にDLIR(下方監視型赤外線装置)を装備したC型です。



 ベトナム戦争で海軍や空軍の偵察機は、写真、SLAR、DLIRの偵察を1機でこなすことができましたが、OV-1はペイロードの関係からこれらの機能を1機にまとめることは不可能でした。そこで、SLARとDLIRの装備を1時間以内に交換できるようにして運用に柔軟性を持たせた機体がD型です。D型のSLARアンテナポッドは、B型のそれよりも太く角ばった形となっており、機首にILSアンテナがあり、エアブレーキも復活しているためB型との区別は容易です。D型はOV-1の各型の中では一番少ない36機が新造機として生産されました。しかし、余剰となった前の生産型B、C型をD型への改造が行われ、最終的にはD型は約110機となっています。D型は通常タイプ以外にも、電子偵察型のRV-1Dも生産されました。



  さて、Roden 1/48 Grumman OV-1 Mohawkのキットは2004年から2010年にかけてA、B、C、Dのすべてのタイプがキット化されており、今回製作したD型は2006年に発売されたものです。
エアワールド誌1988年1月号に表紙+巻頭11頁に亙って柴田三雄氏撮影のグレーのGrumman OV-1D Mohawkの空撮カラー写真が掲載されたことがあり(主脚やコクピットのアップ写真もあります)、これらの写真の印象が非常に強いため、グレーの機体にするとして製作にかかりました。



  レジンパーツは、Blackdogから、エンジン、胴体中後部の電子機器が、Quickboostから射出座席、排気管等が発売されています。しかし、大半のレジンパーツが重心位置より後ろに組み込み後部が重くなることから、Quickboostの射出座席のみ使用しました。OV-1 Mohawkは前脚と主脚の間が短く、かつ胴体が長いため、レジンパーツを組み込まなくともそのままでは尻餅をついてしまいます。インストラクションではノーズパーツに15gの錘が指示されていますが、ノーズパーツに加えてコクピットフロア下、主翼内翼前縁部と合計で30gの錘をセットしました。



 また、主翼と胴体の篏合は差し込み部が短く緩いため、また内翼前縁部に錘を入れたため、真鍮パイプ2本で左右の主翼を繋げて補強してあります。主翼、水平尾翼につく放電索は、基部をボールペンの芯のビニール部分を伸ばしランナーの要領で伸ばしたもの(ボールペンの芯は、炙ると穴の開いたまま細く伸びます)、放電索は0.2㎜のステンレス線を使用しました。主翼、水平尾翼の放電索はそれぞれ片翼4本です。3枚の垂直尾翼の放電索は0.3㎜の穴を開け、0.2㎜のステンレス線を埋め込みました。こちらはひとつの垂直尾翼に2本の放電索がつきます。



  完成後に気づいたのですが、インストラクションの指示通りに主脚柱にパーツ№26C+24Cとパーツ№18Cをするとクロスすることになりますので、パーツ№26C+24Cを後方にパーツ№18Cは前方に接着すべきでした。エンジン停止中のプロペラは、フェザリング状態になりますので接着するときに注意が必要です。



  細部工作としては、次の通りです。
① 胴体後下部のタオルバーアンテナの後方に、2箇所センサー感知部(?)がありますので、プラ板で追加しました(エアワールド1988年1月号の2頁によくわかる写真が掲載されています)。
② 胴体最後部の左右に後方警戒センサープラ棒を加工して取り付けました。
③ 前脚柱の左右に駐機固定環を取り付けました。
④ 主脚のブレーキパイプは、主脚柱の胴体側に取り付けます。
⑤ 機首にILSアンテナの内部を外から見える範囲を自作しました。
⑥ 胴体上部のアンテナ線は取り付けましたが、胴体下部のアンテナ線は保管・運搬を考慮して取り付けを見送りました
⑦ 排気管後方の部分はHasegawaのカーボンケプラーフィニッシュを貼り込みました。
⑧ 前脚、主脚のオレオ部分、エアブレーキの作動桿に、Hasegawaのミラーフィニッシュを貼り込み
ました
⑨ プロペラシャフトをプラパーツから真鍮パイプに置き換えました。
⑩ 主翼の増槽はパイロンに真鍮線を埋め込んで固定しました。




  塗装については、機体全面のライトグレーはFS36300らしいのですが、インストラクションでは、Mrカラーの308番FS36375が指定されています。FSのカラーチップではFS36300と FS36375は非常に
よく似た色でしたので、インストラクションの指示通りの色でよかったのですが、前述のエアワールドのカラー写真のイメージに合わせ、今回はMrカラーの11番のガルグレーを使用しました。キットはサンドの色のプラで形成されているので、地色を活かすように11番のガルグレーが透けるように薄く吹き付け、エアワールドのカラー写真のイメージに近づけたつもりです。




  デカールはキット付属のものを使用しました。このデカールは発色もよく、ウォークウェイや細かいコーションデータもキッチリ押さえられていますが(惜しむらくはよく目立つプロペラのメーカーマークはありませんでした)、糊が弱く、キチンと密着乾燥し、オバーコートした後でも、触ると剥がれてしまいます。このため、イジェクションマーク、シリアルナンバー、アメリカ陸軍表記を除きデカールはオミットしました。また、ウォークウェイのデカールは形状に誤りがあるため、塗装としました。



 マーキングは1991年「砂漠の嵐作戦」に参加したアメリカ陸軍第2軍事情報大隊所属機です。現在、この大隊は、Beechcraft RC-12X Guardrailが使用機になっています
資料としては、模型仲間のN氏が撮影した写真、
洋書ではSquadron/Signal Publications 社のIn Action №92「OV-1 Mohawk (1989年)」、Walk Around №49「OV-1 Mohawk (2007年)」を参考にしました。
そして、唯一日本語で読める資料としては 前述のエアワールド社エアワールド1988年1月号の巻頭カラー写真とエアワールド1984年11月号の記事「エアモノグラフ87 グラマンOV-1 モホーク」は写真も多く、特にB型のコクピット、マーチンベーカーMk-J5D射出座席、前脚・主脚、D型のオブザーバー席のイラストが参考になりました。



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