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特集 フジミ

 Boeing Vertol CH-46D “Sea Knight” 製作記(Fujimi 1/72)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


Boeing Vertol CH-46D “Sea Knight” Hotel California(1/72) Fuimi Box Artより

 久しぶりにヘリコプターを作ってみたいと思い、引っ張り出してきたのがこのキットでした。箱絵に描かれたタイトル”Hotel California”に少し惹かれたのかもしれません。“Hotel California”はアメリカのロックバンド、Eaglesが50年近く昔にヒットさせた曲で、若い頃ラジオから流れてくるのをよく耳にしました。パームツリーに囲まれたホテルを描いたレコードのジャケットの絵柄と同じような絵が、実機の胴下にあるカーゴフック収納部のスライドドアに描かれています。この機体が近隣の厚木基地に所在したことも製作意欲を高めてくれたのでしょう。完成までのポイントを簡単にまとめてみました。

実機紹介

 ボーイング/バートル社が開発した、ガスタービンエンジンを動力とするタンデム式ツインロータの商用ヘリコプターModel107(V107)の試作機が初飛行したのは、1958年4月22日のことでした。このヘリコプターはエンジンを後部パイロン内に収容したことにより、同じツインロータのH-21に比べるとキャビンを広く利用できることができ、また後部扉に設けられたローディングランプによって軽車両の輸送も容易となりました。こうした利点に着目した米陸軍は、評価用にエンジンをライカミングT-53からGE-T-58にパワーアップしたYHC-1Aを3機調達します。しかし陸軍はボーイング/バートルが開発したさらに大型のV114(後のCH-47)の取得に傾き、陸軍での採用は実現しませんでした。ところがHUS-1(後のUH-34)の後継機を探していた米海兵隊がV107に注目し、HRB-1(後にCH-46Aに改称)の呼称で採用されることになりました。

CH-46Aの部隊配備は1964年から始まり、海兵隊向けに合計160機が納入されています。更に海軍には14機が納入され、戦闘支援飛行隊(HC)で運用されました。その後は、エンジンのパワーアップや搭載電子機器の更新などが図られ、UH-46A,CH/UH-46D、CH-46F、CH-46E、HH-46A/D、VH-46Fと多くのバリアントが産まれました。軍用タイプでは米軍向けに総計624機が生産されましたが、輸出がカナダとスウェーデンに限られたこともあり、我が国でライセンス生産された機体を含めても、米国外での運用は100機程度に留まっています。

作例のCH-46Dに目を向けますと、各バリアントの中ではCH-46Eに次いで生産機数が多く、266機が新造され、12機がCH-46Aから改修されています。CH-46Aとの主な違いは、エンジンをGE製のT58-GE-10に更新してパワーアップするとともに、ロータブレードをキャンバー付きのブレードに変更した点です。


CH-46D “Sea Knight” Fujimi (1/72)

製作

 箱を開けるとパーツが多いのに驚かされました。同じ1/72スケールのV-107(エアーフィックス製)を製作した時と比べると雲泥の差です。組み立てるとほとんど見えなくなるのですが、コクピットは勿論、貨物室の床や座席もパーツ化されています。クリアーパーツもまずまずで航法灯までモールドされており、小さな部品のため取り扱いが大変でした。一方後部のエンジン回りの分割は複雑で仮組してよくチェックしておく必要があります。デカールにはHC-3所属機2種類のマーキングが印刷されていますが、今回は先に述べましたようにUSS White Planesに搭載されていた Det.106の”Hotel California”を選びました。


1. コクピット
 まずはコクピットから始めます。コクピットの構成は、床とセンターコンソール、座席、サイクリック・スティックとコレクティブ・レバー、オーバーヘッドコンソール、そして座席背面の隔壁などがパーツ化されています。これらを指定色通り塗装して組んでいきます。コンソールの計器類は細かく彫刻されていますが、デカールも付属しています。インストではデカールを使用するときは彫刻を削るよう指示していますが、軟化剤を使って彫刻面にデカールを貼ってみました。デカールの印刷と彫刻とが少しずれましたが、立体感ある仕上がりになりました、中央コンソールが(写真1)、オーバーヘッドコンソールが(写真2)です。

 (写真1) 中央コンソール
 
  (写真2) オーバーヘッドコンソール


組み上がったコクピットが(写真3)です。
少し見難いですが、座席にはシートベルトを追加しました。

(写真3) 出来上がったコクピット



2. キャビン
 キャビンは床と、隔壁、そして乗員用シートとから成ります。コクピット同様床や隔壁など構造物はエアクラフトグレーで、またシートの座面はインターナショナル・オレンジで塗りました。実機のシートは折り畳み式のキャンバスを張ったパイプ椅子ですが、キットのままで作っています。また床の貨物移動用ローラ部は黒鉄色で塗分けたのですが、シートを置くとほとんど見えなくなりました。床にシートを並べた様子が(写真4)です。

(写真4) キャビンの内部


 また隔壁上部にはウィンチがついており、ワイヤーが巻き取られているので、それを表現するため黒糸を丸棒に巻いて接着剤で固めた後ナイフで切り出したものを貼り付けました。(写真5)隔壁の通路を通してコクピットが覗けます。

(写真5) キャビンとコクピット間の隔壁



3. 胴体部の組み立てと塗装

 左右胴体を張り合わせる前に、それぞれにスポンソンを組み込みます。スポンソン自体も3つのパーツから成っています。胴体に接着後段差がなくなるまでスポンソンとその取り付け部を整形しました。また胴体の窓は左右接合前に取り付けなければなりません。そのため後でマスキングしやすいように窓の周辺部分を先に機体色(エンジングレー)に塗装し、その後内側から窓を接着しました。(写真6)

 (写真6) 左右接合前の左胴体パーツ


 次にコクピットとキャビンを接合し、胴体パーツに組み込みます。(写真7)は右側胴体パーツにコクピットとキャビンを組み込んだ状態です。写真で分かるように、前方のエンジンパイロン部の空間をふさぐ天井板も用意されています。後部パイロンについても同様です。この辺はメーカの意気込みを感じます。

 (写真7) 胴体パーツに組み込んだコクピットとキャビン


 次に左右胴体パーツを接合しますが、インストでは先にロータハブを回転軸に取り付け、それを組み込むことになっていますが、ロータを着脱できるようにするため回転軸のみを組み込んで接合しました。その後の写真がないのですが、マスキングしたキャノピーとエンジンインテイク、後部ロータパイロンの後半部、ロータ駆動シャフトカバーなどを取り付けると胴体部が組み上がります。また胴体にはピトー管やブレードアンテナ、ワイヤーアンテナの支柱などを取り付けますが、キットではプラパーツのイモ付けとなっています。そこでこれらのパーツには0.3㎜のステンレス棒を埋め込み、機体側にはピンバイスで0.3㎜の穴をあけました。但しワイヤーアンテナの支柱はプラ棒では強度不足で0.6㎜の真鍮線に交換し機体に埋め込んでいます。さらに前脚、主脚のシリンダー部をクロームシルバーで塗装し、塗装部をマスキングして胴体に接着すれば胴体部の組み立ては完了。次は胴体部の塗装です。

 塗装色は全面エンジングレー(FS16081)ですが、胴体後部のエンジン排気口周辺は黒で塗装されています。これだけならそれほど厄介な塗装ではないのですが、Hotel Californiaの機体は他機と少し異なり、箱絵にあるようにエンジングレーとの境界部に白線が入っています。この白線はデカールに印刷されているのですが、これがうまくフィットするように境界部を塗り分けるのに少し手間がかかりました。その後排気口を焼鉄色で塗れば胴体部の塗装は完了です。(写真8)は塗装が終わった胴体部です。

 (写真8) 塗装を終えた胴体部



4. ロータ部
 ロータ部はロータハブと回転座、そして3枚のロータブレードから成ります。非常に簡単な構成ですが1/72スケールとしてはリアルに表現されています。(写真9)がロータハブ部です。ハブに120度間隔で角穴が開いており、□断面に成形されたロータブレードの端部を差し込めばロータの出来上がりです。□穴のインタフェースのため3枚のロータブレードのピッチ角がずれることもありません。但し、前後のロータは回転方向が逆ですので、ロータブレードの取り付けには注意が必要です。

(写真9)  ロータハブ部



 (写真10)は前後のロータブレードの全景です。片方は裏側を見せています。写真で分かるようにブレードの上面を銀、下面を艶消し黒、前縁とブレード付け根をタイやブラック、端部を黄色で塗装しています。

(写真10) ロータ部


5. その他パーツ
 その他の機体に取り付けるパーツについていくつか紹介します。
(写真11)は後部カーゴドアの下側ドアです。ドア外板だけでなく、胴体内の床面とつながるローディングランプが部品化されています。
(写真12)は上側のカーゴドアです。このドアはカーゴドアを開く際には、左右端部が下に折れ曲がりながら機内天井方向に格納されます。インストではこの辺の説明が不十分で実機の写真を参考に折り曲げました。

(写真11) 後部カーゴドアの下側ドア

  (写真12) 後部カーゴドアの上側ドア


 (写真13)はコクピット後方にある昇降ドアの下側部分です。上の部分はガラス窓で、内側上方に開くのですが、取り外している機体もよく見かけます。写真はすでにデカールを貼った状態ですが、ここにHotel Californiaの名前が描かれています。このドアは下方に開き、裏面に昇降用のステップが付いています。
また(写真14)はコクピットのドアの上方に取り付けられているピトー管です。写真にあるように0.3㎜のステンレス棒を埋め込み、機体側にあけた穴に差し込めるように改修しました。

(写真13) 昇降ドア(下側部分)

  (写真14) ピトー管



6. デカール貼りと最終組み立て、仕上げ
 デカールは少し厚めですが、軟化剤を使えば曲面にもフィットしてくれます。このクラスとしては十分な量です。デカール貼りで最も手こずったのは、ドアや窓の周囲にあるマーキングです。中が大きくえぐれ、周囲の細い部分だけがフィルムとして残っているので、フィルムを台紙から外し貼り付け位置へもっていくのが大変でした。4分割して貼ればよかったと反省しています。デカールを貼り終えた状態が(写真15)です。デカールを貼り終わった後は保護のためクリアー塗料をオーバーコートしますが、今回は半艶のクリアー塗料をコーティングしています。その後墨入れや汚しがあるのですが、この機体色では墨入れも目立たず、適当に入れてやめました。

(写真15) デカールを貼り終えた機体

 ここまで終えれば次は最終組み立てです。 これまでに紹介したパーツを機体に取り付けていきます。その他にも昇降扉左上のウィンチや主車輪と前車輪を取り付け、キャノピーなどクリアーパーツに施していたマスキングを取り外し、はみ出した塗料やマスキングテープの接着剤を除去し、クリーンアップします。最後に胴体下面のワイヤーアンテナと昇降扉の支持ワイヤーを張りました。ローディングランプの開閉シリンダーも取り付けたかったのですが、周辺の構造が良く分からないので断念しました。
(写真16)が胴体下面のワイヤーアンテナ、
(写真17)が昇降扉の支持ワイヤーですが、0.2㎜のアルミ線でワイヤーを代用しています。またステップのすべり止めには#1000のサンドペーパを貼り付けています。
(写真18)が胴体下面のカーゴフック収納部ドアに描かれた”Hotel California”の画です。

  (写真16) ワイヤーアンテナ


(写真17) 昇降扉の支持ワイヤー


  (写真18) ”Hotel California”の画が描かれたカーゴフック収納部ドア


最後に前後のロータを載せれば完成です。(写真19~)が完成したCH-46D “Sea Knight” です。

(写真19) 完成したCH-46D “Sea Knight”












 いろいろ手間どったところもありますが、出来上がってみるとCH-46Dをうまく表現していると思いました。最近はフジミの空ものキットをあまり見かけませんが、この頃の1/72キットにはよくできたものが数多くありました。また再版されることを願っています。


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