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特集 SF & キャラクター

 The SKY CRAWLERS
ROSTOCK SANKA Mk.B & LAUTERN SKYLY J2
(BANDAI 1/72)

by 五六式(TYPE-56)



 今回は,森博嗣原作・押井守監督のアニメーション映画“スカイクロラ”に登場した架空戦闘機を作りました。これらのバンダイのキット達は,<必ず完成する>という点においては世界最強といっても過言では無いでしょう。組み立てが楽だった分,塗装やデカール貼りではそこそこ苦労しましたが・・・。

<作品の世界観と搭乗する戦闘機について>
現実世界に似たもう一つの世界では,娯楽としての戦争が企業によって提供され,これを観戦することによって人々の闘争心を解消,本当の戦争を回避するというシステムが確立していた。このショーとしての戦争を際限なく続けるため,作戦を遂行する兵員の育成に<ある技術>が採用されていた。
 ※舞台となっている世界では,技術の発達は,現実世界と同等か一部それ以上である。しかし,ジェットエンジンの開発は,遅延していて,実用化されているジェット機は存在しない。
※映画版と小説版では,少し設定が異なっている。本稿では,映画版に準拠する。

ロストック 散香 Mk.B

 主人公カンナミ・ユーイチが搭乗する機体。

先尾翼と二重反転式の推進プロペラを装備する震電に似たレシプロ戦闘機。ジェット戦闘機が実用化されていないこの世界では,同様な型式の機体がいくつか存在する。

ラウテルン スカイリィ J2

 敵側のベテランパイロット”ティーチャー”が搭乗する機体。

二重反転式の牽引プロペラを装備するTa152やシーフューリーに似たレシプロ戦闘機。排気タービンを装備する大型機。

<キットについて>
     

映画の公開後,2008年に発売されたスナップフィットモデルです。箱絵は,世界の傑作機の表紙イラストで有名な佐竹政夫氏のてになるものです。
両キットとも,駐機状態と飛行状態を選択可能。さらに,3つの歯車と二重の軸でプロペラの二重反転を再現,同スケールのフィギュアや回転したプロペラを表現したエフェクトパーツも付属。


特筆するべきなのは,部品の成型技術と部品精度です。スナップフィットキットゆえに内部に大きなダボや構造壁がいくつもあるのに,ほとんど表面にヒケが現れず,しかも,部品の合いが素晴らしいことに驚かされます。今回の製作にあたって,精度的にも強度的にも問題の無い部分には,接着剤を使用していません。

<製作>
     

部品の分割が一般の航空機モデルと異なっているので,一旦組み上げて塗装も含めた製作手順を考えました。散香は,主人公の乗機と僚機の2機組。今回は,主人公機のみ仕上げて,あと一つは,別の機会にif設定機として仕上げることにしました。

かなり丈夫に組み上がるので分解するのに手こずります。バンダイやウェーブ,コトブキヤなどからスナップフィットのキットを分解するための工具が出ていて,いずれも高価ではないので1個持っていれば重宝しますョ。( 五六式は,コトブキヤのヘキサギアパーツリムーバーを使っています。)通販で購入する場合は,ぼったくりや送料が異常に高い詐欺まがい商法に引っかからないように注意してください。

 プロペラの部分は,折れやすいし,パーツの合わせがきついので分解するときには神経を使いました。再販も無いようですし,中古価格は,定価の3倍ぐらいになっていますし壊さないように・・・。

上下左右の区別がある部品には,組み上がると見えないところに印をつけています。五六式の場合,下と左の部品につけると決めているので迷うことはありません。


コクピット内の部品は,スカイリィで3個,散香で4個です。接着したのは,操縦桿のみで出来上がった操縦席は,胴体側のガイドにピタリとはまり,少しもぐらつくことはありません。先月,某東欧製フランス機キット2つと格闘して敗れ去ったのがまるで夢のよう・・・と,遠くを見る目をしてみる・・・。


デカールを貼る直前。脚部以外,接着する必要はありません。塗装が傷まないので非常にありがたいです。

 上面は,グリーン系の2色迷彩に見えますが,溶剤で希釈した日本陸軍機濃緑色の塗り重ねで表現しています。

 黄色いストライプは,全てデカールが用意されていますが,貼る手間と将来の劣化を考えて塗装で表現しました。迷彩を塗った後,機体前面にマスキングした後,白いサーフェイサーを吹いた後に黄色をスプレーしています。先尾翼と胴体の部分の位置を合わせるのに苦労しました。

スカイリィの塗装については,別項にて。

<完成>

 散香の方が2日早く完成しました。散香の方が簡単だったというのではなく,先に塗装に手をつけただけです。

<ロストック 散香 Mk.B>

 震電を過激にチューンしたような外観ですが,風防や黄色いストライプなどドイツ機の要素がミックスされています。


 空中給油可能,レーダー装備,第二次大戦時より進化したプロペラブレードなどエンジン以外は現用機と変わりありません。


 松本零士先生風にパースを付けて。ヤッタランこと,新谷かおる先生が描いていたらしいですが・・・。

 写真では分かりにくいですが,散香もスカイリィも,自重変形タイヤとなっています。これが,スナッブフィットで脚柱に接着なしでピタリとはまり,どのタイヤもきちんと接地する・・・。当時の飛行機プラモのトレンドを押さえつつ凌駕する・・・拍手しかありませんね。

<ラウテルン スカイリィ J2>

 劇中のティーチャー機として仕上げるのは困難だったので,ジャンクから適当なデカールをスカウトして仕上げました。量産機だから良いよね。

 胴体側面いっぱいに描かれた黒豹のマーキングは,デカールが用意されていますがこれを貼るのは困難だと予想したからです。排気管前のカバーの盛り上がりをマークソフターでだましだましクリアーし,排気管部の余剰部分をカットし,まっすぐ胴体側面にフィットさせつつ,尾翼下の謎のエキゾーストをクリアする・・・などということが誰にできるのでしょうか?

 購入当時,手がつけられなかったのは,黒豹のデカールのせいです。きっとそうだよ・・・そうにちがいないよ・・・。

 ・・・後で気づいたのですが・・・。黒豹マークの先端と機番だけをデカールにしてストライプは塗装すれば良いじゃん。後の祭り、アフターカーニバルでした・・・涙・・・。見事完成させた方はどうやったのか,十人ほど事例を一度に集めて公開すると面白い特集ができるでしょう。



 主翼は,分割線が上面に来るという飛行機プラモとしてはあるまじき構成です。結果,動翼のラインよりも分割線の方が目立つ部分ができてしまいます。垂直尾翼の分割線とともに飛行機モデラーなら修正しておきたいところです。

  ウィンドシールドとキャノピーの部品は一見すると枠が塗装されているように見える不思議な部品です。ウィンドシールドの方は,さすがに塗装していないのがすぐにばれそうなので塗装しましたが,キャノピーの方は,話の種になるかなと思ってそのままにしておきました。赤いマーキングのすぐそばの部分です。どうですか?スモークの部品の光の屈折によってそう見えるのではないかと思います。これらも,はめ込みなので,接着に伴う周囲の塗装の傷みを気にしないでよいのでとても助かります。

 機首のアンチグレアもデカールが用意されていますが,排気タービンの吸気口や配管の凹凸があるのできちんと貼るのが困難です。

 五六式は,はなから諦めてマスキングテープとマスキングゾルの合わせ技(マスキングテープをまっすぐ貼り,浮いた部分に切り込みを入れて小さく切ったマスキングテープやマスキングゾルで補正する)でラインを作り,スプレー塗装で再現しました。

 機体側面,機番の間にあるの四角いアウトレットは,開閉するように設計されていますが,塗装なしで組み立てて機体表面にフィットするようになっているので塗装すると動かなくなります。開閉いずれかの位置で固定するか塗装の厚みを考慮して調整するか・・・個人的には,前者をおすすめします。


 これも,パースを強調して。モーターカノンに二重反転プロペラにX型エンジンに排気タービンに正体不明のエアインテークに逆ガルウィング・・・凶悪すぎる・・・。怖ろしくて,思わず排気タービンを焼け鉄色で塗装することを忘れてしまいました。わざとですよわ・ざ・と。この機体は,おろしたての新品なのです。開いたカウルフラップの部品も用意されていますのでこれを付けると更に凶悪に。

プロペラ先端の赤い部分のデカールが用意されていますが,これを12枚ノーミスで貼り,後から隙間の部分を塗装でリタッチするのは精神が耐えられなくなると思ったので塗装で対応しました。11枚ノーミスで貼って,12枚目がはらりと落ちて,探しに探して,やっと見つけて,糊が弱くなっていると思って木工ボンドをつけてやっと完成と思ったら,いつの間にか2〜3枚剥がれているのを発見・・・なんてよくある話ですからね。

魔改造したシーフューリーみたいです。どっかのエアレースで飛んで・・・いないよね・・・。

今回思いついたのは,飛行機モデルを普通に作っているメーカーとバンダイの共同開発キットができないかということです。飛行機のスケールキットを作っているメーカーの実機の情報の蓄積や飛行機モデルの表現のノウハウとバンダイの<完成するキットを作る>ノウハウとの融合が実現したらさぞかし凄いキットができると思うのです。日本で知名度が高く,海外でも採用国が多かったF-104なんか,1/72スケールで新キットが永らく出ていないので狙い目ですよ。


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Vol.179 2023 July.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
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