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誌上個展

<日本航空史> 見所満載のトラッカー

  by 加藤 寛之
プラモデル コラム

 航空自衛隊入間基地とはいわず、ジョンソン基地というのが普通だった子供のころ、航空祭に行く私にとって全然興味のない飛行機の一つがトラッカーだった。丸っこい形で古臭いレシプロの星型エンジン、翼を折り畳んでいてゴチャっとしていて、カッコ悪かった。そして、充分過ぎる大人になった今も、その影響で興味がない。結構多く持っている『世界の傑作機』なのに、トラッカーは購入していない。
 そのくらい自分では無関心だから、ハセガワがトラッカーのキットを発売したときには「これ、買う人いるの?」と驚いた。本当にシャープに出来ているのだけれども、自分ではそう思った。発売がいつのことだったのかを調べてみたら、『航空ファン』1975年7月の「新製品紹介」に載っていた。「ハセガワが、ネプチューンに続いて自衛隊の哨戒機を発売した」とある。発売当時の価格は700円。プラモの時代では、タミヤ48のアブロ・ランカスターの発売や、後に「雷龍」と命名される97式重爆のオリジナルニックネーム募集が始まったころにあたる。



  あらためてトラッカーの実機はどうなのか調べてみると、初飛行は1952年12月4日。エンジンはサイクロンでプロペラはハミルトンスタンダード3枚羽根で、WWⅡの時代かと思う実績重視。主翼は長距離飛行向きに細長く、それを折り畳むときはちょっと左右をずらして低くまとめている。エンジンナセルは太いエンジンの後流を制御するためなのか長大で、それを避けるためなのか胴体が短いせいか、水平尾翼も細長くて上反角もある。垂直尾翼もやたらと大きくて、ラダーは2段階に曲がるようだ。横に膨れた操縦席横の窓、尾部下面にある小型車輪のバンパー、エルロン+スポイラー、固定スロット、内翼のドループ、あちらこちらにある突起類等々、とても面白い形をしている。
 海上自衛隊には1957(昭和32)年4月から計60機が供与されたそうだ。艦載機として小さく詰め込んだ工夫が満載の飛行機だから、今であれば見所が分かっているので、展示機をじっくりと眺めることだろう。
古い航空雑誌には、「トラッカー」でなく「センチネル」とある。センチネルは当初の呼称で、これではスチンソンL-5とまぎらわしい。米海軍への1号機引き渡しの少し前にトラッカーへ改称されたという。だが、『航空ファン』1956年4月号の米空母プリンストンの横須賀入港記事にある同機はセンチネルと紹介しているし、同誌のグラビアページでもセンチネルだ。このあたりの事情はサッパリ分からない。



  本Webモデラーズの2023年5月号に、冒頭でふれたハセガワ・トラッカーをnananiya72さんが製作されている。とても感じがいい。あとちょっとで発売から50年を迎えるキットとは、とても思えない。“お~~! いいなァ”と思った。実に面白い飛行機だし、プラモデルとしての見栄えもいい。では気持ちが変わって、自分も作りたいかと問われると、機首に入れる錘の量が気になる。胴体とエンジンナセルの間の塗装にも手間取りそうだ。主翼前縁やプロペラの塗装も面倒そうだ。面白い飛行機と分かっていても、結局、プラモでは避ける理由ばかり考える私だ。



私はそんなですが、ぜひ皆様はプラモデルを購入して趣味と業界の振興をはかってください。Webモデラーズ2023年5月号の、資料記事 (Photo特集)にもトラッカーがありますから。 



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