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(Photo) Vickers Viscount

by  コルディッツ
博物館実機写真

 ヴィッカース・バイカウントは、第二次世界大戦中に組織された「ブラバゾン委員会」の提言に基づき開発されました。委員会は世界に拡がる大英帝国の民間航空の覇権を維持するため、英国が開発すべき6種類(数え方では5種類)の民間航空機を提言したものです。しかし委員会は戦後の民間航空機需要を低く見積もり、そのため提言した6種類の中で成功したのは2機種だけで、戦後の民間航空の覇権はアメリカの手に移りました。
 そんな逆風の中、バイカウントは世界最初のターボプロップ・エンジン搭載機として西側諸国で愛用され、英国の意地と誇りを世界に見せつけることに成功しました。
※ 本稿は博物館の標示、「旅客機」(鶴書房)、「続・ヒコーキの心」(佐貫亦男、光人社NF文庫)、Wikipediaを参照しました。 

 ロールス・ロイス ダート506 ターボプロップエンジン
 西オーストラリア航空遺産博物館(パース郊外)にて  


 2019年12月にブルクリークで撮影しました。ダートは世界初の実用ターボプロップエンジンで、バイカウントに搭載されました。
 バイカウント原型の609型は、ブラバゾン委員会の提言通りに 24座席で製作を始めます。しかしユーザーのBEA(英国欧州航空) は32座席を望み、ヴィッカース社はこれを受け入れ、630型とした32座席の機体を製作し、1948年7月16日に初飛行を成功させます。
 機名はヴィッカースのVに韻を合せたViceroy「バイセロイ」でしたが、「インド副王又はインド総督」を意味するので、1947年のインド独立の余波で機名変更を余儀なくされ「バイカウント」(子爵)となりました。総督から子爵の格下げでは、不満に思う英国人が多かったのではないでしょうか。
 初飛行した年末にBEAは発注を取り消します。座席数の少なさと遅い速度(443km/h)が原因でした。しかしヴィッカース社はエンジンを強化し、座席数を増やした700型を開発し、BEAを振り向かせることに成功します。


 708 F-BGNU 38 エールフランス
 自動車・技術博物館(ジンスハイム)にて  2020年3月撮影


700型はエンジンを1,576軸馬力のダート510を搭載、座席数を53に増やし、速度を496km/hまで上げ、1950年8月28日に初飛行しました。またBEAも同年夏の混雑解消のため、630型を7月29日から4週間就役させたところ、乗客から好評だったため、700型を発注します。630型による最初のフライトはロンドンからパリでした。4年後に同じ航路を、エールフランスのバイカウントで佐貫亦男教授が飛行しますが、乗客は満員で一等客しか乗せていなかったと「続・ヒコーキの心」の「優雅なナセル」で書いています。

   794 D型  TC-SEL 430 トルコ空軍

 イスタンブール航空博物館にて       2019年3月撮影


   794 D型  TC-SEL 430 トルコ空軍

 イスタンブール航空博物館にて       2019年3月撮影
 かくて700型は最初の量産型として世界中で運用されるようになりました。写真の機体は1958年から1971年に民間で運用され、1971年にトルコ空軍所属、1972年に引退しています。



  コクピット周囲。1911と書かれたペナントは、トルコ空軍の創設を祝した物と思います。正確にはオスマン帝国のオスマン 陸軍航空隊は1911年6月1日に設立されました。





 816 型 VH-TVR 318 トランス・オーストラリア航空
 オーストラリア国立航空博物館(モーラビアン)にて

 同博物館は、メルボルン郊外のモーラビアン空港に隣接して建てられています。2010年8月に拝観しました。



 800型はバイカウントの最終型で、700型を1.7mストレッチし、座席数を70としました。エンジンもロールス・ロイス ダート525 1,991軸馬力を装備します。最初の630型が32座席、エンジンは ダート501で1,380軸馬力ですから、その発展は驚きです。

 814 型 D-ANAF 447  ルフトハンザドイツ航空



 技術博物館(シュパイアー)にて      2020年2月撮影 


 私の子供時代に、バイカウントは旅客機として日本の空でも馴染みの機体でしたが、残念ながら乗る機会はありませんでした。
そんな訳で、ドイツの博物館で機内搭乗が出来て感激です。透明プラスチック?で仕切られていたのは残念でしたが。


 エコノミークラス。
 説明はありませんでしたが、ビジネスクラスかと。こうして見ると、全座席にオン・デマンドのパーソナル・モニターが設置 されている現状は、夢のようですね。


化粧室は、あまり変化はないようで。



時代を感じさせるアナログ式のコクピット。



 主翼からニョキッと突き出る4本のダートエンジンは印象的です。



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