Home >イギリス菱形戦車 Mk.Ⅳ 「メール」(エマー 1/72)、Mk.Ⅳ 「フィメール」(エマー 1/72)>特集 英国大戦期AFV>2023年10月号

特集 英国大戦期AFV

 イギリス菱形戦車
Mk.Ⅳ 「メール」(エマー 1/72)
Mk.Ⅳ 「フィメール」(エマー 1/72)

by 平針みなみ HIRABARI Minami



 Mk. Ⅳ戦車、左が「メール」、右は「フィメール」。
メールの武装は6ポンド砲2門、軽機関銃3丁、フィメールは軽機関銃5丁。

 菱形戦車について
イギリスが第1次世界大戦中に塹壕(8フィート、約2.4m)を横断できる戦闘用の機械を必要とし、
「陸上軍艦」の構想などもあり、イギリス海軍の主導により「リトル・ウィリー」の試作を経て、1915年12月3日に「ビッグ・ウィリー」が初の走行試験に成功し、翌1916年2月に正式採用され量産化が決定し、「MarkⅠ」の正式名称が与えられた。1916年9月15日のソンムの戦いの第3次攻勢時に初めて戦闘に投入され、世界で初めて実戦で使用された戦車となった。しかし、機械的信頼性の低さや乗員の居住性や操縦性の悪さなどが問題とされた。
Mk.Ⅰの問題点に改良を加え、Mk.Ⅱ、Mk.Ⅲを開発したが、これらの戦車は少数の生産で、訓練用等での使用にとどまった。
さらに改良が加えられたのがMk.Ⅳで、菱形戦車の集大成となり、1917年から製造が開始され生産数は1015輌(発注数は1220輌としている資料がある)に上ったとのこと。

なお、日本の戦車の歴史は、第一次世界大戦の集結前の1918年10月に、このMk. Ⅳ戦車(フィメール)を輸入したことから始まったということです。

 エマーのキット
今回、手元にあったエマーのMk.Ⅳの1/72キット2種を創ってみました。1996年に出たキットです。2013年には胴体延長型のタッドポール(オタマジャクシ)が出たようですが所蔵していません。
「メール」は「雄型」、「オス型」、「フィメール」は「雌型」、「メス型」などと表記されることがありますが、本稿では「メール」、「フィメール」とします。

エマーのキットの箱絵、左がメール、右がフィメール。
     

メールのパーツ、戦車模型につきもののホイールパーツはありません。


こちらはフィメール、写真中央の上の部分に武装関係のパーツがあり、ここがメールとフィメールとで異なっている部分です。


組み立て
  車体中央の上下を貼り合わせ、それに左右それぞれの側面パーツを取付ければ大まかな「菱形戦車」の形ができあがります。これに武装を組み込んだスポンソンを取付けることになります。メールは左右各1門の砲、フィメールは左右各2丁の軽機関銃が可動するような作りになっていますが、キットには押さえとなるパーツが用意されていないので、砲身、銃身がすぐに後方に脱落してしまいます。そこでプラ片を接着して押さえとしました。また、スポンソン内の砲郭(ケースメート)も外れて後方に落ちてしまいますし、砲身、銃身のすき間から、あるいは砲の横のスリットから内側が素通しなので、後側からプラ板を貼って押さえ、目隠しとしました。


メールの主砲はムクなので先端にピンバイスで穴を開けました。
履帯は模型用接着剤で接着可能。ネットで見た製作記事に、履帯が短いというような記載がありましたが、私の作ったキットではそのようなことはありませんでした。ただ、のりしろとなる部分が少ない箇所が多く、接着に気をつかいます。

天蓋から後方へ長く伸びている排気管の先端は、写真を見ると長さや曲げ具合等さまざまなバリエーションがありますが、キットのままとしています。

キットでは牽引フックが省略されています。車体前面中央の先端については、三角形状のフックの取付け金具のモールドはありますが、ムクの塊になっています。実際は上下2枚の板で、そこにフックを縦に取付けるようになっています。メールのキットはフックのみ真鍮線を曲げ加工してそのように取付けました。
一方、両キットの箱絵では地面に水平に取付けられています。そこでフィメールのキットの方は、取り付け金具のモールドを加工した上でそのように取付けてみました。
車体後方の牽引フックは左右それぞれ内側と外側に取付けられています。一般的な位置に接着しましたが、実車の写真を見ると、別の位置に取付けている車輌もあれば、とりつけていない車輌もありました。


塗装とマーキング
 初期の菱形戦車はグレーに塗られていたようです。そのグレーを「バトルシップグレー」としている資料もあります。

Mk.Ⅰを戦線に投入するにあたって迷彩を施したり、ジグザグ模様で覆ったみたり。だが、戦場で動き回ると、履帯に巻き上げられた泥が車体を泥まみれにしてしまい、結局、車体の塗装は茶系統の色で統一されることになったとのことです。事実、ソンムの戦いのMk.Ⅰの写真で、側面の上1/3くらいは迷彩が見えますが、下2/3はドロドロになっていました。

キットの塗装説明では箱絵の塗色(グリーン系)のことにふれつつ、「専門家は、実際に使われた色はカーキブラウンだったと考えている。多くは基本的なバトルシップグレーで戦場に送られた。迷彩は初期のMk.Ⅰ戦車にのみ使用され、戦場では泥が戦車を効果的にカモフラージュした。ドイツ軍は通常、鹵獲したMk.Ⅳをグレーに塗装し、場合によっては迷彩を施した。」とあります。
なお、タミヤの1/35キットでは、全体塗装はXF-52フラットアースとXF-55デッキタンを半々、と指定しているようです。

以上のことから、塗装についてはカーキブラウンのような色でよいということで、クレオスのMr.カラーC22ダークアースを下塗りとして吹き付け、その上からC310ブラウンFS30219をさっと吹き付けてみました。その後適当にウェザリング。

キットのデカールは、メール、フィメールともに英軍2種、ドイツ軍2種が用意されています。その中から選んだら箱絵と同じものになりました。 
側面前部の大きな数字、メールは赤字に白い影の「102」、フィメールは白字「F.4」、が描かれていますが戦術番号と呼ばれるもので、メールの方の3桁の数字は訓練用の戦車を表し、それに対しフィメールの方のアルファベット1文字が所属部隊、続く数字1、2文字はそこでの車輌番号を表しているそうです。一方、車体後部の4桁の小さな数字は車輌製造番号で、メールは「2324」、フィメールは「2179」となっています。
フィメールの前面には「FLIRT II」という白字に赤い影のデカールを貼っています。車輌によって、所属部隊を表すアルファベットにちなんだ言葉が書かれているようです。
なお、フィメールの側面の先端近くに、トランプの「ハートの4」のデカールを貼るようになっていたのですが、貼ろうとしたとき扇風機の風で台紙ごと飛ばされ、台紙は見つかったのですがデカールはどこかに貼り付いてしまったのか見つかりません。ということでこのマークは貼っていません。

ドイツ軍が鹵獲した菱形戦車を戦場に投入するようになると、自軍の識別のため「白・赤・白」のストライプを描き入れたということです。そのような例は、タミヤ1/35キットの塗装指定の中にもあります。

同スケールの現代戦車、試作車輌ですが、と並べてみました。
左から、ハセガワ M1E1エイブラムス、メール、フィメール、フジミ 10式戦車試作3号車
菱形戦車がかなり大きいことがわかります。


ハセガワのM1E1とメールを横から。 


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