Home  >フェアリー・バトルMk.I (MPM 1/72)>特集 英国大戦機>2023年10月号

特集 英国大戦機

フェアリー・バトルMk.I (MPM 1/72)

  by 翔バナイカイ 栗人@ケータイ



 フェアリー・バトルは1930年代中期に開発されたイギリス空軍の軽爆撃機です。全金属製片持ち単葉の構成で当時の航空機近代化のトップバッター的な位置づけであり戦間期のイギリス航空技術の先進性を表しています。しかし第二次大戦時点では既に旧式化しており、出撃の度に大損害を被り続けたため「駄作機」扱いされることも多いようです。しかし、近代化のトップバッターを担ったということは、その後に出てくる者の方がより高性能であるのが当然であり、本機を単なる「駄作機」と評するのは正しくありません。むしろ大戦勃発まで機材の新旧交代を怠ったイギリス空軍が責を負うべきでしょう。キット制作で参照した資料にあった当時のパイロットのコメント「悪い癖が無く、素直な操縦性の良い飛行機。ただし戦場を飛ぶにはもっとパワーが欲しい」がこの機体の本質を表しているのでしょう。バトルは爆撃任務から引退した後、様々な訓練任務や新型エンジンのテストベッドに使われ続けていたことも、本機の真価を証明しています。



 制作したキットはMPMが2000年にリリースしたキットです。当時の簡易射出成型キットの常で、部品のホゾ、ダボやガイドは全く無し、パーツの合わせはモデラー任せ、そのパーツの表面も凸凹が残る、といったレベルでありました。

 レジンパーツで構成するコクピットユニットは単体では精密感充分でしたが胴体に比してややオーバーサイズ。それを胴体に組み込むにあたっては幾度も擦り合わせと削り込みで取付け位置を調整する必要がありました。

コクピットユニット(前席と後席)。精密感充分。しかしこの後胴体への組み込みに難儀!

胴体を組み上げた後もあちこちの隙間埋めと段差修正が続きます。翼関係でも組み上げた後の変形防止策、主脚取付けの補強策など、インストシートに無い作業が色々増えていきました。
キャノピー用のクリアパーツは長さ、断面、フレーム構成とも全部ミスがあるので使用できず、クリアバックスのもの(元はAIRFIXのキット用)に交換。キャノピーOPEN状態としてなんとか形を繕うことができました。

あちこち整形してようやく十の字。胴体に所々見える黒い部分は、瞬着とプラ粉で隙間埋めや段差修正をした跡です。
翼端灯や主翼前縁の着陸灯は、透明プラ材で作り直しています。またキットでは機首が少し短いのでプラ板で1mm延長しています。


主翼下面にはぽつぽつと穴を開けてプラ棒をつっかい棒として埋込み変形防止としています。

 塗装は当時のイギリス空軍の標準でダークグリーンとダークアースの地図迷彩。使用カラーはMr.カラーですがスケール効果として白を20%から30%ほど入れています。下面の黒にもスケール効果を考えてMr.カラーのジャーマングレーを使っています。各色とも細筆で短いストロークで塗り重ねて行く手法で筆塗りし、さらに白を加えた色を使ってボカシ筆でクラウディングを加え、その上からクリアーがけして研ぎ出しをしています。

胴体中央部のアップ。キャノピーは上方からの視認性低減のため長い中央部を塗りつぶしています。
後席の機銃(ビッカースKガン)は同スケールのAFVキットから転用。これは使えます!


 イギリス空軍第12中隊の「PH◎K」機として仕上げました。ドイツ軍のフランス侵攻開始直後の1940年5月12日、侵攻路上にあるベルギーのマーストリヒト橋を攻撃するため第12中隊は5機のバトルで出撃しましたが、全機撃墜されて橋の破壊には失敗。「PH◎K」(D.ガーランド中尉搭乗)もその中の1機で中尉はこのとき戦死しましたが、本機は橋に体当たりしたと判定され、ガーランド中尉にはWW2初のヴィクトリアクロス勲章が授与されています。


 初期の簡易射出キットの常でインストに無い工作を色々追加したため完成まで3ヶ月ほどかかってしまいました。次はAIRFIXから新キットが出ないか期待しています。(AIRFIXの現行キットは、フェアリー社から誤って渡された「バトルによく似た機体」の設計図面に基づいてモデル化されているので、バトルのキットではないのですよ)



整ったきれいなアウトラインを持つ、なかなかの「美人」だと思っています。


  Home>フェアリー・バトルMk.I (MPM 1/72)>特集 英国大戦機>2023年10月号
Vol.182 2023 October.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
         editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー
「webモデラーズ について」 「広告のご出稿について」

プラモデル模型製作特集1

TOTAL PAGE