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特集 アメリカ海軍機

FJ-2フューリー (スウォード 1/72)

  by 寿



 知っている人は知っている。知らない人は全く知らない、超音速時代直前のジェット艦上戦闘機フューリーでございます。ちなみにFJ-2の前身がFJ-1なんだけれども、1と2はもうハッキリ言って別物。直線翼と後退翼の差だけでも歴然なんだけれども、それ以外にもアチコチがもう根本的に違っていて「何でこれで改良型と言い張れるのか」と愕然とするレベル。なんだかアメリカってこーゆーパターン多いよね。



  そもそもアメリカ海軍は艦上機のジェット化には懐疑的で、「時期尚早」とか「航続距離が絶対的に不足する」とか「実績の無い技術で海の上飛べるか」とか色々あったご様子。それでも時代に取り残されるのはイヤで、P-80を買ってベアキャットと模擬空戦したり、カタパルトフックやアレスティングフックくっつけて離着艦実験してみたり、基礎的な研究は積み重ねていたようです。そんな経緯ですので、先ず安全策としてレシプロとジェットの混合動力機を。それに平行して本命の純ジェット機を直線翼で、という流れになります。



 堅実でありますね。でもお陰で時代の徒花を大量生産する羽目にもなった訳ですが。ちなみにFJ-1のエンジンは極めて初期の技術だったので、オーバーホール間隔が10時間だったのだそうです。そりゃあ海軍のお偉いさんも純ジェット化に二の足踏むわな。



 そして待ちに待ったFJ-2は、ほぼほぼF-86の海軍型なので離着艦装置の分だけ重量増加して、性能は幾分ダウングレード。しかもその肝心の艦上機的性能が不足気味だったので、海兵隊優先とされたというこの屈辱。「惜しいオシイなぁ、もうちょっとぉ」ってな感じです。



 まぁこの時代のジェット機って技術が年単位で革新されていったから、数年前の最新鋭機が一瞬で時代遅れなんてことも頻発していたみたいだし、こういった黎明期の機体はバックストーリーも豊富で種々悲喜こもごも。見ていて飽きません。



 しかしその辺りもわたしたちが後世の人間で、既に正解を知っているからこそ面白いのであって、当時の人達はもうそれこそ要求とアイデアと理論の狭間で真っ向から取っ組み合い、転び躓き泥まみれになって紡いできた歴史なのでありましょう。ジェットの時代になるちょっと前までは超音速領域の理論が確立していなくって、「ヒコーキは絶対に音速を超えられない」と真剣に議論されていたくらいだったし、更に遡って複葉機の時代は「金属で出来たヒコーキなど荒唐無稽」だった訳ですしね。



 現在では「絶対無理」って言われていることでも、ちょっと先の未来では実現可能になってたりするかもしれません。常識なんて実は簡単にひっくり返るのかも。空気中をマッハ一〇〇で飛んだり反重力エンジンで自分ちの裏庭から月まで日帰り出来たり。我々もいま現在自分の知っているコトが正義だなんて考えない方が良いかも知れませんね。



 技術の歴史もまた含蓄や示唆に富んだ、タイヘンに面白い世界であります。  



製作の詳細

(写真1)かっちょええフューリーのボックスアート。やっぱりボックスアートがよろしいとモチベーションの維持が段違いです。実機の実績が今ひとつションボリだけど、そんなことどーでも良くなってくる精悍さでございますわ。

(写真2) 取敢えず機体内部色を塗ってコクピットをぺたっと貼ってゆく。スウォードのプラは柔らかいので削りすぎ注意です。加工し易いのはいいんだけれどもね~


(写真3) 極端なテールヘビーじゃないけれど、念のため過剰な位にオモリを詰め込んでおく。転ばぬ先の杖ですな。こういうとき百均のお店はありがたいのう。

(写真4) オモリ入れてノズルも付けたら胴体貼り合せて一気にヒコーキの形に。


(写真5) 段差と継ぎ目の処理を終えてシートとHUDを装着。キャノピー閉めたらよく見えなくなるので、これがほぼ見納め状態ですわ。

(写真6) 全身ナチュラルメタルなので下地にグロスブラックを塗って参ります。この時点で継ぎ目の消し忘れや段差処理の甘いところも発覚するので、このあたり削っちゃ塗りの繰り返しですな。銀塗装は下地で決まってしまいますので、根性入れていきます。


(写真7) 下塗りが終わったら一気にいくぜ。GSIクレオスの8番でぷー。パネル毎に塗って行くのがミソ。銀の反射が目に痛いくらいだよ。

(写真8) ギンギラに過ぎるとちょびっとアレなので、セミグロスクリアーで落ち着かせることにします。スミ入れの為の下処理もかねて、って事で。ナマ吹きのシルバーの上に直接スミ入れすると、銀の粒子の隙間にまでスミが入っていって全面に拡がっちゃうのよ。スミ入れしないって決めてるのなら、銀ナマのまま完成決め込んでも良いのですけれどもね。


(写真9) トップコート吹いた後はマーキングカラーを塗っていきます。ノーズ周りはマスキングが面倒くさいので筆塗りでペタペタ。

(写真10) このキットでの最大の難所が実はデカール貼りでした。予想外だったよ、デカールの脆弱っぷりが。
 以前スウォードのキットを作ったときも「なんか薄いデカールだな~」と思って居たけど、今回は一際ですわ。なんちゅうか極薄で台紙からも外れ難いし、すぐ破れちゃうし、台紙からのスライドをミスるとすぐクシャクシャになっちゃうし、一度丸まっちゃったら復元不可能だし。もうホント難儀いたしました。
 なので途中からはリキッドデカールフィルムを吹いて、ニス丸ごと補強してから貼り付けております。最初からこうしておけば良かったよ。リキッドデカールフィルムはいつものようにラッカー系うすめ液で三倍ほどに希釈して使っております。ご参考までに。
 デカールそのものはフィッティングも良いし色の透けもないし上質な部類ですけど、もうちょっと扱い易くしていただけませんかね、スウォードさん。


(写真11) 完成でございます。ハチロクセイバーのようでセイバーじゃない。このひねくれっぷりがフューリーの真骨頂。ひょっとして自衛隊塗装で塗ったら騙される人居るんじゃないか、などと、そんな邪な考えが脳裏を過ぎったり過ぎらなかったり。ブルーインパルス塗装ならイッパツだろうな、きっと。
 まぁわたしは大人なのでそんな子供じみたイタズラしないですけれどもね。(いま現時点では)



(写真13) おまけ。すご~く昔に作ったエマーのFJ-4フューリーです。ずっと出しそびれていたのでほっと一安心。今ならもっと上手く作れる自信があるけれど、FJ-4ってエマー以外からは出ていないのかなぁ。スウォードが出してくれるかも、って待ってるのにFJ-3で止まってる。どーゆーことなんでしょうかねぇ。


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