Home  > GD Convair F-102A “Delta Dagger” 製作記(Hasegawa 1/72)> 特集 アメリカ空軍機、民間機>2023年11月号

特集 アメリカ空軍機、民間機

 GD Convair F-102A “Delta Dagger” 製作記(Hasegawa 1/72)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


GD Convair F-102 “Delta Dagger” Hasegawa (1/72) Box Artより

 Webmodelers 11月号の特集が“第二次大戦後のアメリカ特集 “とのことで作り出したのがこのキットでした。F-102Aデルタダートは1960年代、日本の三沢、横田、板付の各基地に配備されていたこともあり、子供のころ目にした航空雑誌に三軍記念日に撮影された写真が掲載されていたのを覚えています。三角翼の機体は凄くかっこよく見え、プラモを作ってみたくなったものです。ところがプラモになるとF-102のキットは意外と少なく、ハセガワから1/72でリリースされたときはワクワクしたものです。初めてリリースされたのは1969年だったと思いますが、その後箱替えやデカール替えで過去に何度か再版されているのですが、最近では2013年のF-106Aとのコンボキット以来姿を消しています。そんなことで、今回引っ張り出してきた初版キットは貴重なのかもしれませんが、思い切って作ってみることにしました。

実機紹介

実機紹介
 米国初の超音速迎撃機となったF-102A デルタダガーでしたが、その誕生は苦難の連続でした。ICBMが出現する以前の米ソ冷戦下、米国にとっての最大脅威は核兵器を搭載したソ連の爆撃機でした。これに対抗するため米空軍は、半自動防空管制システムSAGE(Semi-Automatic Ground Environment) システム(実際には全自動と言えると思います)の構築を進め、このシステムに組み込む迎撃戦闘機としてコンベア社が提案した三角翼の戦闘機を選定したのです。1951年10月にはコンベア社に対し試作と初期量産の見積もり要求が発出され、開発がスタートしました。

 開発は順調に進むかに見えましたが、搭載予定の9トン級エンジン(P&W社製J67)や火器管制装置(ヒューズ社製MX-1179)の開発が遅れ、機体の開発計画にも変更が生じ始めました。結局2機の試作機YF-102のエンジンは、最終的にP&W社製のJ57に変更されることになり、コンベア社の算定ではJ57の採用で最大速度はM1.5に、実用上昇限度は6万フィートになると推定されました。しかし設計変更による機体重量増加や、その後判明する初期風洞試験データの読み取りミスにより抵抗値が過少評価されていた結果、速度をはじめとする主要性能の達成が困難になることが判明したのです。この窮地を救ったのが、NACAの技術者が発見したエリアルールでした。この法則の適用で遷音速域での抵抗が減ることが分かり、胴体の形状をコカコーラ・ボトルの様に真ん中がくびれた形に変更することになったのです。また揚力向上のため、主翼前縁にはキャンバーを付け、誘導抵抗低減のため翼端に捩じりを加えました。しかしこの変更による重量増加で、更なる軽量化が必要となりました。結局、製造の進む試作機にはこれ等の対策の適用は難しく、当初計画のまま完成させ、1953年10月24日に初飛行に漕ぎつけました。案の定性能は予測通りで、音速を突破することなく、上昇限度も5万フィートに達することはありませんでした。

 その後、対策は2つのフェーズに分けて実施されました。フェーズ1はエリアルールのみ適用する機体(YF-102A)で4機、フェーズ2は両対策を適用する機体(F-102A)で28機が生産されました。1954年12月20日、エリアルールのみ適用したYF-102Aの初号機が初飛行に成功、翌日には音速を突破し対策の有効性が示されたのです。その後1956年になると軽量化策も適用されたF-102Aが満足できる試験結果を示し、超音速迎撃機として十分実用に供することが認められました。一方開発が行き詰まり、新たな仕様で開発された火器管制装置MG-10を含めた総合試験にはさらに時間を要し、実用レベルに達したのは1958年末になってのことです。このときすでに量産機の生産は完了し、部隊配備も終わっていました。これまでの話だけでは駄作機にも見えるF-102ですが、いくつもの技術的課題を乗り越え、ユーザに認められる機体であったことは、F-102Aの総生産機数が879機(YF-102Aの4機を含む)にも達し(試作機YF-102や複座型TF-102Aを含むと1,000機)、防空軍団(ADC)の25個飛行隊へ配備され北米の守りの要となったことからも納得できます。なお、最終的な性能は、最大速度:M1.25、実用上昇限度:5万3400フィートとなっています。

 最後にF-102の主翼について記しておきます。F-102の主翼には翼端形状の異なるCASE X(Case Ten)とCASE XX(Case Twenty) と呼ばれる2種類の翼があります。CASE Xの主翼はシリアルナンバーが53-1790~56-1316の機体に、またCASE XXの主翼は、56-1317~57-0909の機体で使用されています。その違いは、CASE Xの主翼端は少し反り上がっており、直線的にカットされているのに対してCASE XXの主翼は翼端が少し垂れ下がり、端面は滑らかな形状になっているという点です。


F102A “Delta Daggar” Hasegawa(1/72)

製作

 半世紀以上前に購入したキットです。当時のキットはパーツ数が少ないですが、このキットの場合、胴体中央の弾倉に内蔵するファルコンミサイルとランチャーが付属するため、少し多めとなっています。またパーツの表面には細かい凸のパネルラインとリベットが綺麗に打たれていますが、接合部の擦り合わせは不可欠のようで、綺麗なパネルラインも消えてしまいそうです。デカールは別保管していたため、黄ばみもなくこのまま使えそうです。しかし安全を見て今回はMicroscaleのLiquid Decal Filmを塗布して補強しました。以下に工作過程を説明します。


1. コクピット
 まずはコクピットから始めますがキットには主計器盤もなく、前脚収納庫と一体となったコクピット床とシート、そしてパイロットのフィギュアが付いているだけです。そこで今回は手持ちのModel Decalに付いていた主計器盤のデカールを利用して主計器盤を製作(写真を取り忘れましたが、組み上がると見えません)、シートはヘッドレストの形状を修正し、シートベルトを付けました。(写真1)
そして操縦桿をプラ棒で自作して(写真2)取り付けています。

 (写真1) コクピット

  (写真2) 主計器盤

2. 胴体・主翼部
 機体全体の仮組をしてみると各部ともぴったりとは来ないので、全体を接着して、形を整えてから塗装に移ることにしました。それでも接着する前に塗装をしておかなければならない箇所、例えばエアーインテイク内部やインテイクベーンに隠れる胴体側面などもあり、製作過程は想定したより複雑になってしまいました。最も厄介だったのは垂直尾翼部です。(写真3)
垂直尾翼は左右胴体パーツについていますが、左右が非対称で、前後縁部が一体となった右側のパーツに左側の垂直尾翼中央部を嵌め込む構造となっています。隙間と段差が生じたのでパテ埋め後、整形し、パネルラインを彫り直しサフェーサーを吹き、また整形してサフェーサーを吹く、この作業を何度か繰り返しました。写真3はその過程のものです。また写真で分かるように、後部胴体下面と一体になった主翼下面パーツやテイルコーンパーツもこの段階で接着し、つなぎ目の整形も済ましました。

(写真3) 修正中の垂直尾翼


 インテイク部も内部をインテリアグリーンに塗り、入り口付近を銀塗装しました。そして胴体部に取り付け、整形後、一部のパネルラインを彫り直ししました。そしてコクピットの防眩部とスプリットパネルを艶消しの黒で塗り、エジェクションシートを取り付けました。(写真4)

(写真4) コクピットとエアーインテイク部


そしてウィンドウ部をマスキングしたキャノピーを接着し、胴体との段差をパテで修正します。(写真5) 

写真5 キャノピーの取り付けと接続部の整形


 次に機首レドーム取り付け後の整形ですが、機首が少し細めの感じがあり、パテを盛ってから整形しました。(写真6)、
ここでもサフェーサーを吹いて磨くという作業を何度か繰り返して形を整えました。

(写真6) 機首部の整形


  あとは主翼の上面を取り付ける作業が残っていますが、その前に前脚収納部、胴体下面の弾倉部、主脚収納部をオリーブグリーンに塗ります。乾燥後主翼上面を取り付けます。胴体側面との合いが非常に良いのに驚きました。次にテイルコーン表面の金属部分をスーパーステンレスでノズルの部分を焼鉄色で塗り、乾燥後この部分と、オリーブグリーンに塗った前脚収納部、弾倉壁面、主脚収納部をマスキングします。これで機体全体の塗装準備ができました。

 機体色はエアクラフトグレーの指定がありましたが、実機のスペックはADCグレー(FS16273)です。以前モノグラムのF-106を製作した時にこの色が日本海軍機の明灰白色と同じことを知り、今回も明灰白色を塗ってみました。(写真7&8)

(写真7) 全体塗装を終えた機体上面

  (写真8) 全体塗装を終えた機体下面


3. 機体の塗装とデカール貼り
 機体全面に塗るADCグレー(明灰白色)については2項で述べてしまいましたが、残る部分について紹介します。まずノーズレドームをセミグロスブラックで塗ります。その後、機首上面とコクピット左右のエアーインテイク上面の防眩部を残してマスキングし、艶消しの黒w吹き付けました。この状態でキャノピー以外のマスキングを外した機体上面が(写真9)です。また胴体下面の弾倉を組み込んだ状態が(写真10)です。

(写真9) 塗装を終えた機体上面


(写真10) 塗装を終え、弾倉部を取り付けた機体下面


 次に機体にデカールを貼ります。前述のように古いデカールですからマイクロスケールのデカール・リキッド・フィルムで補強し、軟化剤を使って貼り付けましたが、予想以上に上手く貼れたので驚いた次第です。(写真11)は一例ですが、デカールを貼り終えた前胴部分です。DENGERマークなどステンシルは主計器盤のデカールを流用したモデル・デカールのものを使用しました。

(写真11) 胴体パーツに組み込んだコクピットとキャビン


4. その他パーツ
 その他の機体に取り付けるパーツについていくつか紹介します。
(写真12)は自作した左舷中央部の弾倉扉です。表側をADCグレーに裏側をオリーブグリーンに塗っています。F-102の弾倉扉は左右3枚づつあり、中央の4枚に2.75”ロケット弾が各3発収納されるようになっています。キットの扉は全て薄い扉のため、中央の4枚をプラ板で作り直し、ロケット弾の発射口をピンビスで設けました。
(写真13)は主脚です。現在のレベルから見ると雑な構成ですが、脚カバーを付けるとそれほど分からないので無修正で組付けました。

(写真12) 左舷中央弾倉扉
  (写真13) 主脚


 (写真14)は左主脚扉で着陸灯を追加しました。着陸灯は前脚扉にも付いているので同じサイズのものを取り付けています。
(写真15)は機首に取り付けるピトー管で、赤白の螺旋塗装を施しました。

(写真14) 左主脚扉
  (写真15)  機首ピトー管

 最後に(写真16)がランチャーに取り付けた3機のAIM-4A と3機のAIM-4Dファルコンミサイルです。機体全体が赤色で、機首が黒のレドームになっている機体がセミアクティブレーダ誘導型のAIM-4A、機体前半が白色で、先端にIRシーカーのウィンドウの付いているのが赤外線追尾型のAIM-4Dです。F-102Aにはそれぞれ3発が搭載されました。ランチャーは弾倉と同じオリーブグリーンで塗装し、アクチュエータ部をクロームシルバーで塗っています。

(写真16) ランチャーに搭載したAIM-4AとAIM-4D


5. 最終組み立て、仕上げ
 機首レドーム部と金属部分をマスキングした機体と弾倉カバーに半艶のクリアーに若干の艶消しクリアーを混ぜたクリア塗料を吹き付け、デカールの保護と表面のツヤの調整を行いました。その後僅かに墨入れをしてこの作業は完了。次にキャノピーのマスキングテープを外し、回り込んだ塗料の清掃と表面の磨きを行い、細く切ったマスキングテープを左右2本ずつウィンドシールド部に貼り付けました。最後に4項で紹介したようなパーツを組み上げると完成です。(写真17~20)が完成したデルタダガーの雄姿です。(写真21)は下部弾倉部のクローズアップです。

(写真17)  完成したF102A “Delta Daggar”


(写真18)  完成したF102A “Delta Daggar”


(写真19)  完成したF102A “Delta Daggar”


(写真20)  完成したF102A “Delta Daggar”


(写真21) ファルコンミサイルを満載した弾倉部



とても古いキットですが、当時のハセガワさんの勢いが感じられます。部品点数も少なく、ストレスなく組み上げられ、久しぶりに模型を作る楽しみを味わいました。


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