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特集 米国海軍機

 Vought SB2U-3 Vindicator (Academy 1/48)

by 翔バナイカイ 大山 盛幹



 今月のテーマが「アメリカ海軍機(第二次大戦期)」ということで、Vought SB2Uを製作しました。
 SB2Uの1/48キットは、それまでMeikraft、HiPMくらいしかなかったところ、 Accurate Miniaturesから 2005年に最初に発売されたSB2U -1を皮切りにSB2U -2、SB2U -3と輸出タイプのV-156 Chesapeake以外のSB2U全タイプが発売されました。
 Accurate Miniatures の活動停止後には、SB2U-3がAcademyより数回再版されており、最近では2022年に再版されました。さらに、AcademyからはAccurate Miniatures からは発売されていなかったV-156 Chesapeake もデカール替えでキット化されています。



 SB2U VindicatorはVought社が開発して1936年に初飛行し、1937年より運用が開始された艦上爆撃機で、全金属製(後部胴体および外翼の一部は羽布張り)で折りたたみ式の主翼や90°ひねって後方への完全な引き込み脚等、当時としては近代的な急降下爆撃機でした。 2翅可逆ピッチプロペラを、逆ピッチにして、急降下爆撃機の特徴であるダイブブレーキとして使用するというアメリカならではの凝った機構になっていました。
 アメリカで使用されたタイプはSB2U -1、SB2U -2、そしてSB2U -3の3タイプがあります。最終生産型のSB2U-3は、エンジンを強化、水平尾翼が大型化され、燃料搭載量が増えたため航続距離がそれまでのタイプより約2倍に伸びています。
 また、輸出用として可逆ピッチプロペラを廃止してダイブブレーキを設ける等仕様を変更してV-156 Chesapeakeの名称でフランス、イギリスで運用されたタイプもあります。



 SB2Uは太平洋戦争開始時には旧式化しており、Dougras SBD Dauntlessへの置き換えが進んでいましたが、ミッドウェイ海戦時の1942年7月4日にミッドウェイ島からの第一波、第二波攻撃合わせて16機の海兵隊SB2Uが出撃しています。そして第二波攻撃の1機、Fleming大尉機が重巡洋艦「三隈」の後部砲塔に突入したことで知られています。
 このミッドウェイ海戦時の様子はCharlton Heston主演のユニバーサル映画「ミッドウェイ(1976年)」の空母艦載機のシーンに、空母には配備されていなかったにもかかわらず劇中で多くの実写フィルムが流用されており(SB2UがSBDに若干外形が似ているからか?)、コクピット付近がよく判るショットもあります。



 さて、Academy のキットには、カルトグラフのデカール、エッチングのシートベルトそしてマスクシールが含まれています。また、キット自体は、元がAccurate Miniaturesのため、それまでの同社のキット同様に非常に細かいところまで再現されており、特にコクピットは完成後見えないところまで作られています。後部胴体には組み込む隔壁もありガッチリと仕上がります。ただ、このため、左右の胴体パーツを接着する際には、仮組で様子をみつつ充分な擦り合わせを行うことが必要です。
完成後の印象は、カウリングがポリバケツ状で、やや上向きのように感じられますが、真横から見ない限りあまり気にはなりません。



  製作上の留意点は次の通りです。
① コクピット直後の風防中央部に風防枠がモールドされていますので、後ろから2本目の枠以降を残して枠のモールドを削っておきます。
② 風防は開状態と閉状態の2種類のパーツがありますが、開状態パーツを使用する場合には、そのままでは後部風防パーツ№H4、H5が中央風防内に収納できませんので、パーツ№H4、H5の高さを低くするか、中央風防パーツ№H3を0.5~0.8㎜程度嵩上げが必要です。



③ インストラクションでは片翼2基の機銃をセットするようになっており、左右の主翼上面には機銃点検口がモールドされています。しかし、薬莢排出口は左翼下面に機銃1基分しかモールドされていませんので、インストラクション通りにする場合には、左翼外翼下面にもう1箇所、右翼下面は内翼、外翼にそれぞれ1箇所、計2箇所の薬莢排出口を作ることが必要です。
Naval Fighters №106「Vought SB2U Vindicator(2018年)」207頁に左翼外翼下面の薬莢排出口がはっきりと確認できる写真があります。作例の機銃は、左翼のみにセットしてあります。
ちなみに、Accurate MiniaturesのSB2U-3のインストラクションでは、モールド通り左翼内翼に1基の機銃を取り付けるように図示されています。



④ 左翼機銃は、主翼パーツ上下の接着後に取り付けられるようにして、0.8㎜の真鍮パイプに置き換えました。
⑤ 主翼後方下部と胴体下部の接着には、ガッチリ仕上げるため、胴体後部下部パーツ№63にプラ板で接着しろを設けました。



⑥ アンテナ支柱はアンテナ線を張った際の強度不足が考えられましたので、真鍮線を叩き出した自作パーツに置き換えました。

マーキングは、キットのボックスアートにもなっているミッドウェイ島基地のアメリカ海兵隊VMSB-241所属機です。国籍マーク、機番号は付属デカールを使用し、胴体の白帯は塗装で仕上げています。



 塗装は、上面Blue Grey、下面Light Greyの当時のアメリカ海兵隊の標準塗装です。下面のLight GreyはANA602(FS36440)でしたのでMr.カラー325番を使用しましたが、問題は上面のBlue Greyでした。Squadron/Signal 「 Navy Air Colors Vol.1 1911-1945(1983年)」67頁にはSea Grey ANA603 と書かれており、あまり青みのないグレーで、ニュートラルグレーにやや青みを増した色です。
FSナンバーでは36118です。そして、注記には「Also known as Non-specular Blue Grey」とも書かれています。
しかし、Monogram Aviation Publications「The Official Monogram US Navy & Marine Corps Aircraft Color Guide Vol.2 1940-1949 (1989年)」には、Sea Grey ANA603以外にも3色のBlue Greyの色見本が示されていました。
3色の色見本の内の1色に近いものが、Mr.カラー367番(FS36189)でやや青みの強い文字通りのBlue Greyです。当時に撮影されたカラー写真を見ると、上面色は青みの強いものと青みのないBlue Greyが見受けられます。
当時のカラー写真を何枚も見て迷ったあげく、上面はソリッドカラーのA2ブルーグレーFS36118で仕上げました。最後にカウリングの排気管後方のパネルはスチール色で塗装します。



 参考資料として、実機関係の洋書ではAircraft Pictorial №2「 SB2U Vindicator(2009年)」、Naval Fighters №106「Vought SB2U Vindicator(2018年)」の2冊が細部写真も多く有用でした。併せて、外形変化の推移理解のためにはSquadron/Signal In Action№122「 SB2U Vindicator In Action(1992年)」が役に立ちました。
和書では航空情報別冊「アメリカ海軍機の全貌(1967年)」を参考にしました。今回悩んだ塗装関係については、前述の2冊以外にModeler’s Journal Color Chart Supplement C.3「ANA Standard Aircraft Colors 1943-1970(1972年)」を参考にしました。


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Vol.184 2023 December.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
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