Home  > Kawasaki T-4 中等練習機 製作記(Hasegawa 1/72)> 特集 自衛隊機、民間機>2024年2月号

特集 自衛隊機、民間機

 Kawasaki T-4 中等練習機 製作記(Hasegawa 1/72)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


Kawasaki T-4 Hasegawa (1/72) Box Artより

 航空自衛隊の曲技飛行チーム”Blue Impulse”の人気が非常に高いですね。その理由にはTV番組で取り上げられることも有りますが、昔は基地祭でしか見られなかった演技飛行が、基地祭以外でも数多く見るチャンスが増えたからかもしれません。昨年度を見ても計画された21回の展示飛行の半数ほどが基地祭以外での飛行で、地域のお祭りや、
国体の開会式、鈴鹿で開催されたF1日本グランプリの決勝戦など等々、いろんな所で飛んでいます。そのブルーインパルスで現在使用されている機体が、川崎重工製のT-4中等練習機です。F-86F時代を思わせる軽快な飛行には魅せられます。そんなT-4ブルーインパルスを作ってみたくなったのですが、結局は数に負け、通常塗装のT-4でお茶を濁してしまいました。

実機紹介

 T-4は、T-33やT-1A/Bの連絡機/練習機に代わる機体として、エンジンともども国産開発されたジェット中等練習機です。1981年に川崎重工(KHI)案が採用され、その後KHIを主契約者に三菱重工、富士重工(現SUBARU)が協力する形で開発されました。試作機XT-4は4機発注され、その初号機(56-5601)は1985年7月29日に初飛行に成功しています。その後1988年3月まで実施された技術実用試験を通じて、機能、性能、信頼性などの評価が実施されるとともに、並行して量産機の生産も進められました。量産機の部隊引き渡しは1988年9月に始まり、最初の配備先は浜松基地の第1航空団でした。以降の生産も順調に進み、2003年3月6日に最終号機(56-5812)が引き渡されるまで、試作機を含め総計212機が生産されました。また曲技飛行チーム”ブルーインパルス”のT-2後継機にも採用され、1994年以降に9機が引き渡されています。

 一方、T-4は基本操縦教育から初期の戦技訓練までに使用されるため、広範囲な速度領域で安定した飛行性能や運動性が要求されました。そのため抵抗の低減や失速特性の改善などが施され、翼断面形状にはスーパークリティカル翼型が採用されています。機体はタンデム複座の双発機で、エンジンには石川島播磨重工が開発した小型ターボファンエンジン、F3-IHI-30が採用されました。また機体の軽量化のため炭素繊維複合材量が使用され、キャノピー破砕脱出装置や機上酸素発生装置などこれまでにない新しい技術も採用されています。下記にT-4の主要諸元を示します。

全長:13.0m(ピトー管含む)
全幅:9.9m
全高:4.6m
離陸重量:5,760kg
最大離陸重量:7,650kg
推力:1,660kg×2
エンジン:F3-IHI-30B×2
最大速度:マッハ0.9
海面上昇率:10,000ft/分
実用上昇限度:43,000ft
航続距離:1,296km
乗員:2名


T-4 中等練習機 Hasegawa(1/72)

製作

 ハセガワからは1/48スケールのキットも発売されており、1/72にスケールダウンしただけのキットに見えますが、それなりに簡略化されています。エアーインテイクの部分は、1/48ではインテイクリップ部が別部品でインテイクダクトも付いており、エンジンのフロントファンに繋がるようにできているのですが、1/72キットではインテイクリップも一体で縦に二つ割りになっているだけのため、接合部の段差に注意していく必要がありそうです。また実機では前後の座席に差異がありますが1/72ではこの違いが再現されていません。他にも1/48ではフラップダウンが再現できますが、1/72ではできません。そんなことで少しでもディテールアップをするため、今回の製作では、ビーバーコーポレーションのカラーエッチングパーツとファインモールドの金属ピトー管を使用してみました。以下に製作過程の概要を紹介します。


1. コクピット
 まずはコクピットから始めます。コクピットはワンピースのバスタブ式で、主計器盤とサイドコンソールの計器類がデカール仕上げで、主計器盤の前に操縦桿を取り付けるだけです。そこでデカールの部分をエッチングパーツに置き換えるほか、スロットル部分やペダルをエッチングパーツで追加して組み上げました。(写真1)
次に座席ですが、キットの座席を塗装した後エッチングパーツのベルトなどを追加してディテールアップを図りました。
(写真2)が前後席の座席で、写真の右が前席、左が後席になります。
座席を前述のバスタブに組み込むとコクピットは完成です。(写真3)

(写真1) コクピット


(写真2) 射出座席

  (写真3) 完成したコクピット 


2. 胴体・主翼部
 通常塗装のT-4はグレー一色のため、小さな機体でもあることから胴体と主翼を結合してから塗装をすることにしました。勿論1項で組み立てたコクピットも組み込みます。但し、組み立てる前に以下の塗装作業を済ませておきます。まずコクピット部の機体内側をグレー(FS36231)で、そして前後席の主計器盤上のグレアシールド部をつや消しの黒で塗装します。次にエアーインテイクの内側ですが、インストでは白の指定ですが、実機ではインテイクダクトの少し奥まで機体色と同じグレー(FS36375)で塗られています。そのためキットのダクトの部分はグレーで塗装し、その奥を白で塗装します。またインテイクの突き当りにあたる胴体部分はつや消しの黒で塗りました。もう一つ機首部に組み込む前脚収納部があります。これは内側を白で塗装しておきます。
 ここまでの下準備が終われば、組み立てです。まず胴体パーツにコクピットと前脚収納部を取り付け、左右を貼り合わせます。更に胴体下面パーツを取り付けると胴体の形が出来上がります。次にエアーインテイクを取り付けますが、まずエアーインテイクの内側と外側のパーツをダクト基準に接着し、整形したのち機体に取り付けます。次に主翼ですが、主翼は左右別パーツで各々上下に貼り合わせます。このとき上下を貼り合わせる前に翼下面パーツにパイロンの取り付け穴を開けておきます。そして出来上がった左右の主翼を胴体に差し込み接着します。これで全体の形がほぼ出来上がりました。
 さらに、胴体右後部上面にあるエアースクープ、エンジン排気口の耐熱板、主翼下面フラップのヒンジカバーを取り付けました。その後接合部の段差や隙間を修正し形を整えます。また消えたモールドラインは彫り直します。こうして形になった機体が(写真4)です。またこの段階で風防とキャノピーの機体とのフィットチェックを行いましたが、ほとんど修正することなくぴたりとフィットしました。

(写真4) 組み上がった機体


 (写真5)がコクピット部詳細、(写真6)が胴体下面詳細です。

(写真5) 機体に組み込んだコクピット


(写真6) 組み立て後の胴体下面


 (写真6)で分かるように下面パーツにはモールドに引けがあり、パテ埋めをして修正しました。主脚収納部後方に見える白い小片はプラ板で作り替えた燃料ベントパイプです。

3. 機体の塗装とデカールの貼り付け
 機体の塗装色は2項でも述べた様に全面グレー(FS36375)です。そして練習機特有の翼端蛍光オレンジの塗装が加わります。塗装の前に風防とキャノピーをマスキングし、風防はつや消しの黒、キャノピーはコクピット内部色と同じグレー(FS36231)を下塗りしておきます。そして胴体に仮止めしました。この状態で全体をグレー(FS36375)で塗装し、その後マスキングして主翼、尾翼、水平尾翼の翼端を蛍光オレンジで、主脚収納部を白で塗ります。(写真7)が塗装後の機体上面、(写真8)が機体下面です。また(写真9)が水平尾翼です。

(写真7) 全体塗装を終えた機体上面


(写真8) 全体塗装を終えた機体下面


(写真9) 塗装を終えた水平尾翼


 次にメタルプライマーを塗ったピトー管を機首に取り付け、マスキングして機首上面の防眩塗装を行いました。(写真10)

(写真10) ピトー管を取り付け防眩塗装した状態


  塗装はこれで終了です。次はデカールの貼り付けですが、キットのデカールにはT-4の基本マーキングとT-4が配備されている全飛行隊の部隊マークが付いています。どの飛行隊のマーキングにするのか迷ってしまいますが、やはりマザースコードロンとなる浜松基地の第1航空団第31教育飛行隊を選択しました。デカールを貼り終えた機体上面が(写真11)、下面が(写真12)です。主翼上面のウォークウェイのデカールは透明部分が多く、シルバリングを起こしました。できれば4本のラインに分割し、かつ日の丸は別デカールにしてもらいたく思いました。

(写真11) デカールを貼り終えた機体上面


(写真12) デカールを貼り終えた機体下面


4. その他パーツ
 その他の機体に取り付けるパーツについていくつか紹介します。(写真13)は前脚です。(写真14)が左右の主脚です。脚注に嵌め込まれているステンレスのリングをアルミ箔で表現してみました。(写真15)は左右の主脚扉で着陸灯が付いています。(写真16)が翼下に懸架するドロップタンク、(写真17)がコクピットに取り付けた状態ですが、エッチングパーツを使用して作ったHUDです。

(写真13)  前脚


(写真14) 主脚


(写真15) 主脚扉


(写真16) ドロップタンク


(写真17) HUD(組み付けた状態)


5. 最終組み立てと仕上げ
  最終組み立て前にデカールの貼り終えた機体やドロップタンクにデカール保護のため、艶消しクリア塗料を吹き付けました。その後僅かにパネルラインや動翼部のヒンジラインに墨入れをします。自衛隊の機体は比較的綺麗なので汚しはほどほどにします。次に仮止めしていた風防やキャノピーのマスキングテープを外し、回り込んだ塗料を清掃し表面をコンパウンドで磨きました。そして再度機体に取り付けます。接着にはスーパーセメダインを使用しました。最後に4項で紹介したようなパーツを組み付けると完成ですが、パイロンの組み立ては要注意です。T-4のパイロンは左右非対称ですので、取り付け時に間違いないか注意しましょう。また主脚柱も主脚扉との関係で組み付けに少々手こずりました。(写真18)

(写真18) パイロンと主脚


 最後に完成したT-4中等練習機を(写真19~24)に示します。

(写真19)  完成したT-4中等練習機


(写真20)  完成したT-4中等練習機


(写真21)  完成したT-4中等練習機


(写真22)  完成したT-4中等練習機


(写真23)  完成したT-4中等練習機


(写真24)  完成したT-4中等練習機


 少ない部品点数でしたが、出来上がったT-4は実機の特徴をよく表現していました。これなら4機編隊も可能かもしれません。


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