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誌上個展

<日本航空史> エンピツ・エイト(DC-8長胴型)

  by 加藤 寛之
プラモデル コラム

 それがいつだったのかは分からないが、ものすごく細長い胴体のDC-8が横田基地に向けて頭上を飛んだ。それからは頻繁に飛んだ。それが、DC-8-61なのか、-63だったのかは分からないが、横田基地への飛来ならば、長距離タイプの-63が多かったのかもしれない。



  DC-8の長胴型は大量輸送時代になったことへのダグラス社の回答で、DC-8標準型に対して胴体を11.17m延長し、圧力隔壁の設計変更も行って客室を12.4m伸ばしたタイプだそうだ。つまり、搭載できる重量には余裕があっても容れ場所がなければ運べない。それならば胴体延長で多少の機体重量増加はあっても空間を広げれば余裕分で一気に乗せて運べる、ということだ。だから、-61はそれ前のDC-8に対して胴体が長いだけのような飛行機だった(胴体のたわみや強度、飛行中の慣性力とかは問題じゃないのかなぁ)。その姿から「エンピツ・エイト」の愛称があったそうだ。客室椅子の工夫もあって胴体延長の効果は絶大で、日本航空使用機でいえば、初期型の-33が乗客132名だったのに対して、-61は234名になっている(航空情報別冊『日本航空機ガイド Vol.1 民間輸送機』、昭和48年)。 

 ダグラス社は、これ以前に販売していたDC-4・6・7で胴体延長を行って航空会社の求めに応える商法を確立していた。こんなにうまみのある方法が分かっているのに、DC-8の対抗機種だったボーイング707には短胴型はあっても長胴型がない。ボーイングだからボ~っとしていたのではなく、胴体を8m延長する-630・-820という長胴タイプを計画したそうだ。だが、脚柱が短かったために離着陸時に引き起こし角が充分にとれず、離着陸距離が伸びてしまう弱みがあった。そのうちにDC-8長胴型がマーケットを押さえてしまって、開発を断念したらしい。   



 まあ、ここまではよく聞く話だが、では、なぜ胴体延長に不利だと分かっているのにボーイング707は脚柱を短くしたかのが本当の問題じゃないのか。ここからは私の想像だが、ボーイング707はもともと軍用輸送機C-135の民間型だ。そこには、軍が輸送機型を買ってくれるという事実上の開発補助金システムが背景にある。プロペラ機では高性能と引き換えに直径が大きくなるプロペラのために地上高を確保しなくてはならないが、ジェット機にプロペラはない。せっかくならば荷物の積み込みに姿勢を低くしたい輸送機としての都合とか、軍民の機材共通性への発想とかが、低い姿勢の要因にあるように思えてならない。(ホントはどうなんだろう?)。  

 掲載は、カラーの2枚は日本航空が広報用に配ったチラシの写真。白黒版は誰かが撮った写真を入手したもので、日本アジア航空機。



 蛇足:大量輸送時代になって不足する人員のひとつが客室乗務員だった。DC-8-61に続くジャンボジェットに代表される大量輸送時代は、客室乗務員の大量養成時代でもあった。TVドラマの「アテンションプリーズ」や「スチワーデス物語」はその時代の番組で、客室乗員訓練所を舞台にした学園ドラマとの融合で大ヒットした(私は大好き)。


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