
Northrop Grumman F-14D “Tomcat”(Hasegawa 1/48)
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| by Kiyoshi Iwama(ひやめし会) |

F-14D Tomcat ‘VF-2 Bounty Hunters Last Cruise’ (1/48) Hasegawa Box Photo
より
トム・クルーズとともに映画”Top Gun”で一躍有名になったF-14 トムキャットですが、思った以上に早く一線を退きました。同時期に出現した空軍のF-15が今も進化を遂げているのと比べると、海軍機ファンとしてはいささか残念でなりません。艦載機の使用環境がいかに厳しいのかが推し量れます。しかしその人気は今も衰えず、多くのキットが産み出されています。そんなことで、今回はトムキャットの最終バージョンとなるF-14Dを古いハセガワのキットからチョイスして製作してみました。このキットには、2003年2月、F-14Dを運用するVF-2が空母コンステレーションに載って西太平洋に遠征した最後のクルーズ時のデカールが付属しており、その中のCAG機の機体に仕上げました。実はこのVF-2のトムキャット、実機を見た最初のトムキャットでした。1976年10月に入間基地で開催された第5回国際航空宇宙ショーに展示されたのです。勿論D型ではありません。機首にピトー管がない、初期のA型でした。航空自衛隊のF-X候補として派手な飛行演技を披露してくれたのですが、残念ながらF-15に軍配が上がってしまいました。製作しながら、そんな記憶が蘇った次第です。
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F-14D “Tomcat” Hasegawa(1/48)
実機について
ここでは今回製作したD型のトムキャットについて簡単に紹介します。エンジンをP&W TF30-PW-414(推力:21,750lb@dry/34,154lb@AB)からGE
F110-GE-400(推力:27,600lb@dry/55,200lb@AB)に換装したことにより、F-14Bのアフターバーナー使用時の燃料消費率が30%改善され、要撃半径が2倍に、CAP滞空時間が33%向上しました。更に推力が大幅に増えたことによって、ドライでの発艦が可能になりました。このような機体性能の著しい改善に米海軍はさらなる能力向上を目指し、レーダーやアビオニクスの更新を進めたのです。こうして生まれたのがF-14Dで、127機が新規に製造されることになりましたが、当時の米国経済は最悪の状況で、国防予算も削減され、F-14Dのプログラムもキャンセルされる始末です。しかしながら37機までは生産が進んでいたため、この分は調達されることになるものの、残りの新造機はキャンセル、運用飛行隊を維持するに必要な残り18機はA型からの改修で決着。結局55機のF-14Dが生まれることになりました。初号機がロールアウトしたのが1990年3月23日。その後完成した機体は、訓練飛行隊のVF-124を皮切りに、VF-2
“Bounty Hunters”、VF-11 “Red Rippers”、VF-31 “Tomcatters”と、太平洋艦隊の3飛行隊に引き渡されました。これら飛行隊はアフガニスタン紛争やイラク戦争にも参加し、ボムキャットの威力を発揮しています。しかし、2006年9月22日、最後の実戦飛行隊VF-31が解隊され、第一線を退きました。
エンジン以外のD型のアップグレード概要を記しておきます。
まずレーダがF/A-18E/Fのブロック1と同じ、AN/APG-71に換装され、信号処理のデジタル化、データバスやコンピュータのデュアル化、コクピットをMFDを多用したグラスコクピット化、HUDを風防投影式からデュアルコンバイナー型へ変更、ノーズ下のセンサーポッドをTVカメラを収めたTCSと赤外線創作追尾センサーを収めたIRSTのツインポッドに変更。 またその他にも、エアーインテイク側面の前縁延長部分にAN/ALQ-165、AN/ALR-45、AN/ALR-67を搭載したことによる自己防御能力の向上、エジェクションシートのマーチンベーカーMk.14 NACESへの変更などがあります。勿論Bombcat仕様も盛り込まれており、LANTIRNを搭載しての対地攻撃能力も付与されています。
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製作
このハセガワのD型のキットは、1995年 F-14D Tomcat ‘CVW-14’としてリリースされたキットに、この当時はキットに付属してなかったLAU-138ランチャーを、追加したものになっており、デカールもカルトグラフ社製となりハイビジのCAG機とロービジの隊長機が選択できるようになっています。作例ではハイビジのCAG機を選びました。またハセガワのキットは主翼の前縁スラットと後縁フラップをダウン状態にすることが可能で(ただしこの場合は主翼はを前進位置のみ選択可能)、今回はエルロン、フラップ共フルダウンで主翼前進位置状態で製作することにしました。しかし実機がこの状態で駐機している姿はまれなため、パイロットフィギュアをコクピットに座らせることにしました。では順を追って製作過程を紹介します。
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まずはコクピットから始めます。コクピットはサイドコンソールが一体型で、主計器盤やサイドコンソールの計器盤は別パーツになっており、これ等には、計器類やスイッチ類が奇麗に彫刻されています。いずれもデカールはなく、塗装での仕上げが基本です。本作例ではEduardのエッチングパーツを利用しましたが、サイドコンソールのエッチングパーツは付属してないため、主計器盤のみをエッチングパーツで仕上げ、サイドコンソールの計器は塗装で仕上げました。そのため主計器盤の彫刻は予め削り取っています。そして組み立てに移る前に、コクピット内をダークガルグレーFS36231(Mr.Color
C317)で、計器盤、及びコントロールスティックのハンドル部、そしてアンチグレアシールドをつや消しの黒で塗りました。またサイドコンソールの盤面はグレイでドライエッチングし、トグルスイッチなどはメタルカラーを筆塗りしました。(写真1)が出来上がったコクピットでペダルはエッチングパーツです。(写真2)が前席(主計器盤取り付け前)、(写真3)が前席の主計器盤、(写真4)が後席(アンチグレアシールド取り付け前)です。
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(写真1) コクピット

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(写真2) コクピット前席(主計器盤除く)
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(写真3) 前席主計器盤(アンチグレアシールド装着後)

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(写真4) コクピット後席(アンチグレアシールド未装着)
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胴体はコクピットに前脚収納部を含む前胴部とエアーインテイクからエンジン排気ノズル手前までの主翼支持構造部を含む中・後胴部とに分かれています。前胴部とレドーム、そして前胴部と中・後胴部との取り付けインタフェースについては、事前の擦り合わせが必要です。まず前胴部から進めますが、前胴部の左舷には20㎜バルカン砲やコクピットへ乗降するためのラダーがモールドされていますが、今回はパネルをすべて閉状態にしています。(写真5)写真のようにパネルと胴体の嵌合精度はそれほど良くなく、埋めたり、削ったりです。パネルは全部閉めましたが、その代わりバルカン砲の砲口部を整形し、砲口内部に見える弾路の半分と弾丸が通過するスリットをプラ板とプラパイプから作り、内部に取り付けました。その塗装前の部品が(写真6)です。取り付ける前にこれ等の部品はステンレス色で塗っています。
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(写真5) 前胴部左舷

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(写真6) バルカン砲のマズルパーツ
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次にコクピットや前脚収納をを組み込んで、前胴部を組み上げますが、その前に前脚収納部を仕上げます。(写真7)が前胴部に組み込んだコクピットです。また(写真8)が組み込んだ後の前脚収納部です。配線のクランプなどに手を入れています。
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(写真7) 前胴部に組み込んだコクピット

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(写真8) 前胴部に組み込んだ前脚収納部

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写真は無いですが、この後レドームに錘を取り付け胴体に接着・整形すれば前胴部は出来上がりです。
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前胴部が組み終われば、中・後胴部です。中・後胴部のメインフレームは上下2分割+尾部の構成になっています。F-14は尾部の形状がいろいろ変化しているため、各型に対応するためこのようになったのでしょう。これに主脚収納部やエアーインテイクダクト部を組み込みますが、主脚収納部は上下接着前に組み込まなければなりません。そこで主脚収納部を先にインシグニアホワイトで塗装し、汚しを付けて下面パーツに取り付けます。その後上下パーツを接着し、そこに組み上げた尾部を取り付けます。組み上がった中・後胴部の上面が(写真9)、下面が(写真10)です。
(写真9)で分かるように中・後胴部と尾部の繋ぎ目に段差があるのが分かります。この後できるだけ面一になるようにやすり掛けをしました。尾部には上下面にエアーブレーキが有りますが、作例では閉状態にしています。
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(写真9) 組み上がった中・後胴部上面

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(写真10) 組み上がった中・後胴部下面

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次にエアーインテイク部を胴体に取り付けます。エアーインテイク部はあらかじめ塗装しておきます。写真を撮り忘れたのですがインテイクダクト内面は前方がグレーFS36375(Mr.Color C308)で、後方をインシグニアホワイトFS17875(Mr.Color
316)で塗り分けています。外面はグレーFS36375を、またリップ部をスーパーステンレス(Mr.Color SM04)で塗りました。またダクト内に取り付ける流入空気量を制御するランプ部やアクチュエーターはインシグニアホワイトです。(写真11)がランプ部とアクチュエータを取り付け状態です。
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(写真11) エアーインテイク部内のランプ部とアクチュエータ

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また(写真12)がダクト部を取り付けたところです。折角塗装しましたが接合部に隙間ができ、パテで埋めたり削ったりで一部が剥げてしまいました。またインテイクダクト部に2つ穴が見えますが、これは燃料タンクを取り付けるための穴ですが、パーツの裏側に穴あけのガイド穴がモールドされており、最初に開けてしまいました。しかしこの位置が間違っていることに後で気づき、埋めて、開け直しました。正しい位置はインテイクダクト部のセンターライン上になります。これから作成される方はご注意ください。
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(写真12) 胴体に接合したエアーインテイク部

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最後に前胴部と接合すれば胴体部はほぼ完成です。(写真13)が組み上がった胴体部です。
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(写真13) 組み上がった胴体部

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可変後退角の主翼外翼部は、前縁スラット、後縁フラップともにダウン状態としました。フラップは回転できるようにはなっていますが、前縁は固定ですので、フラップもダウン状態で固定してしまうことにしました。フラップは1枚ではなく分割されており、各部の合わせ精度が今一つで段差をなくすために結構削りました。主翼はフラップを先に固定しておいて、上下パーツを接着します。(写真13)このとき、キットには付いてないフラップを動作させるアクチュエータの動作棒とフラップ側のヒンジを取り付けます。プラパーツで自作した(写真14)のような部品です。取り付けた状態が(写真15)です。(写真14)で分かるように回転軸部までのスリットが設けられていて、出来上がってから胴体部に差し込むことができます。
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(写真13) フラップを取り付けた左翼

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(写真14) フラップのヒンジとアクチュエータ棒

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(写真15) フラップに取り付けたヒンジ部

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F110エンジンのタービン以降の部品を組み立てて塗装します。排気口は開閉状態が選択できますが、作例では開状態で分割されたアイリスを組み立てました。アフターバーナーの内面は艶消しの白に、薄くした艶消しの黒で噴出された燃料の燃焼痕を付けました。外面はノズル手前の部分が黒鉄色にスーパーステンレスのリングを塗装、ノズルのアイリス部はスーパーチタン、アイリスの隙間は焼き鉄色で塗りました。(写真16)が完成したエンジン部です。
また(写真17)はエンジンではありませんが、胴体後部側面のエンジンカバーです。取り付け部分の角が実機では直角ではなく、45度の近い角度です。プラ板で部品を作ってキットのパーツに貼り付けました。エンジンノズルを胴体に固定してからこの部品を取り付けます。完成後の状態が(写真18)です。
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(写真16) エンジン部

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(写真17) 胴体後部側面のエンジンカバー

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(写真18) 完成後のエンジン取り付け部
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塗装前に胴体下面にフェニックスミサイル用前方パレットを2基を取り付けます。このパレットにはボムキャット用にBRU-32ボムラックが付きますが、キットのパレットはフェニックス対応のもので、BRU-32を取り付けるための穴を開けておきます。(写真19)が穴あけをしたパレットとBRU-32ボムラックです。ラックはキットには付いてないため、Reskitのものを使用しました。
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(写真19) 前方パレットとBRU-32ボムラック

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次に塗装ですが、まずコクピット、エアーインテイク内部、脚収納部など、塗装済みの部分をマスキングします。そして機首左側面のバルカン砲発射口カバーをスーパーステンレス色で塗装し、乾燥後マスキングします。その後、機体前胴部側面と機体、主翼、及び水平尾翼下面、垂直尾翼両面、加えてベントラルフィン内面をグレーFS36375(Mr.Color
C308)で塗装しました。そして塗り分け部をマスキングし、機体、主翼、及び水平尾翼上面をグレイッシュブルーFS35237(Mr.Color C337)で塗分けました。乾燥後、機首上面をマスキングしてつや消しの黒でアンチグレア塗装をしています。コクピット以外のマスキングを外し、エンジン部と後部胴体側面のエンジンカバーを取り付けた状態の胴体が (写真20)と(写真21)です。
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(写真20) 塗装の終わった胴体上面

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(写真21) 塗装の終わった胴体下面

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主翼は上下面の塗装後マスキングして前縁スラットと後縁フラップの収納部をつや消しのインシグニアレッドFS11136(Mr.Color C327)で塗装し、乾燥後、前縁をスーパージュラルミン(Mr.Color
SM208)で塗装したスラットを取り付けました。
また垂直尾翼先端とベントラルフィンはを白で下塗りし、上からイエローFS13638(Mr.Color C329)を塗っています。この部分はデカール仕上げですが、凹凸もあってうまくフィットさせるのは難しいと判断し、塗装に切り替えました。(写真22,23)
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(写真22) フィンチップを黄色に塗った垂直尾翼

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(写真23) 外面を黄色に塗ったベントラルフィン

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デカールは前述したようにカルトグラフのものが入っています。とても奇麗ですが少し硬めです。軟化剤を使いながら貼っていきました。CAG機のデカールは大面積のものもあり、凸面に貼って破れたところもできましたが、タッチアップでごまかしました。(写真24)が前胴部、(写真25)が主翼、(写真26)が垂直尾翼、写真27がベントラルフィンです。ベントラルフィンの黄色以外の部分はデカールです。黄色の部分を塗装にして正解でした。
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(写真24) デカールを貼った前胴部

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(写真25) デカールを貼った主翼
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(写真26) デカールを貼った垂直尾翼

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(写真27) デカールを貼ったベントラルフィン
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その他の機体パーツについていくつか紹介します。(写真28)は主脚、(写真29)が前脚です。ハセガワのキットはタイヤはゴム製、ハブはホワイトメタル製のため、実感があります。前脚柱はステアリングできるのですが、ガタが大きく最終的には固定しました。
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(写真28) 主脚

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(写真29) 前脚
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(写真30)はエジェクションシートです。パイロットを座らせるのであまり手は入れていません。(写真31)がエッチングパーツで作ったHUDです。D型からダブルコンバイナー型のHUDに換装されました。(写真32)は風防、(写真33)がキャノピー。キャノピーにはリアビューミラー、開閉ハンドル、そしてキャノピー頂部破壊用の導爆線(MDC:Mild Detonating Cord)を追加しています。MDCは実機でもテープで貼り付けられているので、0.2㎜の鋼線をテープで貼り付けました。
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(写真30) エジェクションシート

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(写真31) HUD
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(写真32) 風防

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(写真33) キャノピー
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次に搭載ストアですが、(写真34)がAIM-9Mサイドワインダー、(写真35)がAIM-54Cフェニックス、(写真36)がGBU-31 JDAM、(写真37)がAN/AAQ-25 LANTIRNポッドです。
ハセガワのキットには燃料タンク以外のストアが入ってないため、AIM-9MとGBU-31は他キットからの流用、AIM-54とAAQ-25はハセガワのウェポンセットを利用しました。実はAIM-54はC型と書きましたが、ハセガワのウェポンセットのフェニックスはAIM-54Aでステンシルのデカールにはその型名が印刷されています。作例ではそのまま使用しているのでよく見るとAIM-54Aの表記が見えますが、それは内緒です。形状は少し手を入れています。
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(写真34) AIM-9M サイドワインダー

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(写真35) AIM-54C フェニックス
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(写真36) GBU-31 JDAM

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(写真37) AN/AAQ-25 LANTIRN
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デカールを貼り終えた後、垂直尾翼やベントラルフィン等を取り付けます。その後機体各部のパネルラインに墨入れをし、多少のオイル汚れ等を加えました。
(写真38)が胴体部、(写真39)は胴体後部機体下面の様子です。
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(写真38) 汚しを加えた胴体部

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(写真39) 汚しを加えた胴体後部下面の様子

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汚しで一番悩んだのは主翼の可動時に外翼付け根上下面に生じる擦過痕の表現です。いろいろ考えた末、もっとも簡単そうな方法でチャレンジしてみました。
(写真40)のようにコンパスに綿棒を取り付け、タミヤの墨入れ用のエナメルペイントの黒と茶を綿棒に適当に浸み込ませ、主翼の回転中心において、適当に円弧を描きます。真ん中に白く見えるのは、プラ棒で作った治具です。これを主翼の回転軸部に設置し、コンパスの芯出しに使いました。これの方法で主翼の左右上下、4箇所に適当に数回半径や押し付ける強さを変え、複数個の円弧を描きます。このとき主翼には可動限界線に沿ってマスキングを施しておきます。その結果、(写真41)の様な模様が描けました。傷には見えないかもしれませんが、これで良しとしました。
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(写真40) 主翼の擦過痕を描いたツール

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(写真41) 主翼に付けた擦過痕

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これで主翼は取り付け準備が完了しました。次にキャノピーとウィンドシールドを仮止めし、水平尾翼などを取り付け、その他主要部品とともに保護のための艶消しクリアーをオーバーコートしました。乾燥後風防とキャノピーのマスキングを外し、残りの部品とともに組み上げれば完成です。(写真42~48)が完成した、VF-2のF-14Dです。最後の写真はコクピット付近のクローズアップです。パイロットとRIOのヘルメットには自作デカールで星のマークを付けてみました。
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(写真42) 完成したVF-2のF-14D

(写真43) 完成したVF-2のF-14D

(写真44) 完成したVF-2のF-14D

(写真45) 完成したVF-2のF-14D

(写真46) 完成したVF-2のF-14D

(写真47) 完成したVF-2のF-14D

(写真48) 完成したVF-2のF-14D

欠点も色々あり、完成させるのが大変だったというのが、このキットを製作してみての正直な感想ですが、出来上がった姿を見ると苦労したことを忘れてしまいました。やはりトムキャットはカッコイイですね。
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