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リニューアル エアフィックスを作ろう 

スピットファイア Mk.1a(エアフィックス 1/72)の製作
Spitfire Mk.1a (Airfix 1/72)

by  田口博通 Hiromichi Taguchi
飛行機プラモデルの製作



 7月号から始まった、「リニューアル エアフィックスを作ろう」コーナー。皆様のご賛同をいただき、寄稿作品がさっそく増えてまいりました。   7月号のブレニムMk.1に続き、イギリス大戦機シリーズ。リニューアルキットの中から今月は スピットファイアMk.1aを製作記事の形で ご紹介します。






 新生エアフィックスが2012年に Battle of Britain70周年に合わせてリリースしたリニューアル版スピットファイアMk.1a  (製品番号A01071A)だが、渾身の作品ともいえるものになっていた。これだけの 新製品を600円台の価格で実現しているとは 驚くほどのコストパフォーマンスだと思う。最近の1/72国産製品の1/3の価格だ。 
 タイプはMk1aなので、当然のごとく バトルオブブリテンに奮闘した部隊の機体となり、キットにはNo610スコードロン DW ○K のデカールが入っている。
 箱絵は CG画で、イギリス本土に来襲したドイツHe111爆撃機と護衛機メッサー109Eの中に突入したスピットファイアが実感たっぷりのタッチで描かれている。地上滑走での砂ほこりによる銃身詰まり防止のため機銃口に貼られていた 赤いガムテープがBf109Eへの機銃斉射により剥がれて、機銃口が顔を出し硝煙のススが主翼下面に描かれていて、スピットファイアが戦闘機だと表現されている。おそらく、この絵の主題は、ど真ん中に描かれている 4丁の機銃なのだろう。雲海の上に全てがあり、陸地が描かれていないのだが、イギリス人の頭に浮かぶ本土防空戦バトルオブブリテンの光景はこのようなものだったのかもしれない。


箱絵



 箱絵裏は 下のようにカラー塗装図とデカール位置の指示図となっている。印刷がきれいなので、筆者は塗装資料として切り取って大切に保存している。
 塗料はハンブロールカラーの色ナンバーで指定されているが、日本では 最近 輸入が途絶えていて入手しづらいので、Mrカラー飛行機色セットの特色を使うのが良いだろう。 
  色ナンバーの対応表は
Humbrol カラー Mrカラー
29 Dark Earth 特色369 ダークアース
163 Dark Green 特色361 ダークグリーン
90 Beige Green(Sky) 特色368 スカイ
33 Black 33 艶消しブラック

 プロペラ先端のイエローは ラッカー系でなく、水性のタミヤアクリルカラーXF-3 フラットイエローを使うと、下の艶消しブラックと色が混ざり合わず、楽だ。

箱絵裏のカラー図


キットについて

 3DCADの適用で設計したとみられる全部品は写真のように、旧キットとは違い、2つのランナーに整然と並んでいる標準的なものだ。
 スピットファイアMk1は リニューアルが始まった初期のキットで、次世代の一般プラモデル入門者が筆塗りを行うことを意識したのか、スジ彫りは強めに表現されている。金属外版の要所にはリベットも彫り込まれている。細部のモールドでは、タミヤやハセガワ1/72の方が優れている部分もあるが、スピットファイアMk1らしさという全体のバランスは かなりのものではないかと思う。
  また、精密なディテール再現よりも組み立てやすさを優先した設計で、キットを低価格に押さえるために、部品点数も34点と少なくしていることが うかがえる。
 それでも、脚は収納状態と選択式だし、コクピット内部も48をスケールダウンしたような再現で、酸素ボンベまであり、押さえるべき所はキチッと押さえているように思える。
 デカールは印刷も鮮明で、余白がほとんどない高品質なもので、貼りやすかった。デカールが2枚あるのは、印刷色が違ったためか、補正したものが追加されているからだった。



製作

コクピットの組み立て

 コクピットはシートなど5点の部品から構成されていて、計器板はデカールを貼るようになっている。バルクヘッドも、床も 48のスケールダウンかと思える形状で、さすが、今時のプラモデルである。
 説明書の指定にあるHumbrol No 78はMrカラー特色No364エアクラフト グレイグリーンを使うと良いだろう。ヘッドレストとシート背は暗い皮色なので、MrカラーNo42マホガニーで塗っておこう。
 組みながら感じたことは、接着ノリシロが絶妙で素晴らしいことだ。適度な大きさで、床部品にバルクヘッド、計器板ともキチッと直角に接着できるのだ。こういう 組み易さは大歓迎だ。また、合わせはギチギチというわけでなく、適度な遊びというか「ゆるさ」があるのだが不思議と接着するとキチッと収まるのだ。これならば、初心者にとっても楽なはずだ。
 例えば、A10計器板の接着場所をよく観察すると、1箇所ではなく、赤丸の2か所で互いに支えるように巧妙に構成されていることがわかる。



1/72なので コクピットは各部品ごとに塗装せずとも、
接着組み立て後に胴体内部と同時に塗装すれば、簡単に製作できる。

胴体の組み立て

 胴体内部もコクピットの見える部分は内部桁が表現されている。キャノピーを閉じるとほとんど見えないので、特色No364エアクラフト グレイグリーンで塗装し、少し、茶系の色で汚しをかけておこう。 胴体内部のレバー類と酸素ボンベは艶消し黒、銀などで適当に塗り分けておく。これも キャノピーを閉じるとほとんど見えないので、在るという感じがでるだけで良いと思う。

内部は特色No364エアクラフト グレイグリーンで塗装。

主翼の組み立て

 主翼はパネルラインの彫刻が深めに入っている。個人的な好みはもう少し、浅い方が好きなのだが。。エルロンとフラップ舵面が主翼上面と一体成形なので、舵面後端が薄く仕上がっているのは良いことだ。  水平尾翼基部が3DCAD設計の御利益か、胴体とピタッと合うのが素晴らしい。

主翼部品


水平尾翼

胴体主翼の組み立て

  胴体と主翼は これまた ぴったりと隙間なく合う。また、スピットファイアのキットでは難しいとされている主翼下面から胴体への連続面もすっきりと合うのは 快感といえる。この辺りは、旧世代キットと隔世の感がある。  主翼下面にラジエーターやエアインテークを接着すれば、もう飛行機の形になり、あっというまに塗装へと進める。

機首 扁平になりすぎないように、接着面をペーパーで成形する。


主翼下面から胴体への連続面

塗装

 前述のように、スジ彫りが深いので、筆塗を前提にしているのだろうと考え、キット箱絵裏のカラー塗装図の迷彩パターンを参考に筆塗りしてみた。
下面Mrカラー特色368 スカイ、
上面 特色369 ダークアース
特色361 ダークグリーン
を使った
 筆塗りの方法は 7月号のブレニムMk.1と同様で、面相筆で 先に下面を塗り、マスキングテープでカバーし、その後、上面を塗り分ける方法で、面相筆で斜め、反対斜め、横、縦と乾かしては方向を変えながら塗って行けば、誰にでも 写真のように綺麗に仕上がると思う。
 充分に塗料が乾燥した後で、油彩のローアンバーでスミイレとウエザリングを施し、デカールを貼るが余白が少ない高品質なもので貼りやすい。文字の周囲は落ち着いてから、シャープなナイフかカミソリで切り取ってやるとよい。 最終的に、デカール保護を兼ねて 艶消しクリアを全面に吹き付ければ、塗料の艶ムラも消え、全体が落ち着いた仕上がりになる。

筆塗で塗装が完了した スピットファイア上面 2色雲形迷彩塗装


ダークグリーンは面相筆でパターンを書いてから、面相筆でパターンの中を埋めた。


 全体塗装後、脚、タイヤ、プロペラを 説明書を見ながら 塗装しながら取り付けていく。
 タイヤは自重変形タイヤで成形されていて、なによりもありがたいのは、主脚とタイヤの取り付け角度が 説明書に図でしっかりと掲載されている点。この1枚の図がスピットファイアらしさをユーザーに提供する「キモ」になっているわけだ。
 また、主脚の主翼への取り付け部が四角い太く丈夫な形状になっていることで、組み易くなっているのもうれしい配慮だ。
 アンテナ柱はキットのものをそのまま使うときは、少し細く削って使うと良いだろう。




完成

 エアフィックスのリニューアル版は、昔のエアフィクスキットに比較すると、隔世の感じがある。先月のブレニムでも述べたことだが、外形や、表面モールドが実感が高いだけでなく、組み立ての順序や接着ノリシロがよく考えられており、組み立て易い。 また、説明書が充分に練られていて、やっつけ仕事ではなく、上図のように要所に 重要な図が掲載されている。
 誰にでも簡単に組み立てを楽しみながら、完成させることが可能なものがプラモデルだと プラモデルの本質を もう一度 思い出させてくれる最新世代のキットだと感じる。
  このスピットファイアは 新製品にして600円台の低価格のキットだが、決して手が抜かれていない。 その価格にもかかわらず、キットを組み立て易くすることは、キット設計時の配慮一つで可能なことで、それは 本来どのメーカーにも難しくないことだと気づかせてくれる。
 国内プラモデルメーカーも ぜひエアフィックスリニューアル版を参考に、組み立ての楽しい誰にでも完成させることができる エアフィックスに負けない製品を作って欲しいと思う。コストがかけられないからできない なんて言い訳は通用しなくなった。 




 実は、時間切れでシートベルトを作る時間がなく、 キャノピーを乗せただけで、写真を撮ったので、キャノピー前部に若干隙間が見える。
 また、アンテナ線、ピトー管も間に合わなかったので、後日、落ち着いて、シートベルトともども 完成させてやりたい。
 マーリンエンジンを搭載した機首の感じと、ピンと翼端まで張った楕円主翼がスピットファイアの最大の持ち味で、これを何とかして 小さい作品の中に凝縮して表現したいものだと思っていた。それを一つかなえてくれたのが、このエアフィックスのリニューアル版スピットフィイアMk.1aだった。




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