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誌上個展

ド・ディオン・ブートン (1904年型)(ユニオン1/16)
DE DION BOUTON 1904 (UNION 1/16) 

by 田口博通 Hiromichi taguchi
 Vintage garageは創世記から1970年代までのビンテージレースカーとビンテージクラシックカーの連載コーナーです。クラシックな姿の中に優雅さと繊細さを内包した彼女達にしびれる方々も多いはず。
 昨年8月からの第1シーズン6回の連載では 主にビンテージF1グランプリレースカーとルマンレースカーを取り上げました。
 7月から始まった第2シーズン6回連載、 第8回目で登場するのは ド・ディオン・ブートン(1904年型)、自動車黎明期のフランスの車です。

ビンテージ・ガレージ バックナンバー
2014年7月号 第7回 アルファロメオ2300 トゥーリング(1932)(ブラーゴメタルキット 1/18)
ALFA ROMEO 2300 TOURING(Burago Metal Kit 1/18)
2014年1月号  第6回 ベンツ 300SLR (レベルモノグラム 1/24) 
2013年12月号 第5回 BENTLEY 4.5L BLOWER (エレール 1/24)
2013年11月号 第4回 ブガッティ 35B(モノグラム 1/24) 
2013年10月号 第3回 BRABHAM F-3 (エレール  1/24) 
2013年9月号  第2回 ROB WALKER Team Lotus 72C (エブロ 1/20)
2013年8月号  第1回  ホンダF1 RA272(タミヤ 1/20)

ド・ディオン・ブートン (ユニオン 1/16)


ド・ディオン・ブートン 実車について

 今回取り上げる ド・ディオン・ブートン(1904年型)は およそ100年前の自動車黎明期の車である。
 19世紀末フランスに創始された自動車メーカー、ド・ディオン・ブートン(De Dion-Bouton)が 1904年に発売したガソリン車だ。このメーカーの創始者はアルベール・ド・ディオン伯爵(Albert de Dion)で、後述する、ド・ディオン-アクスル(ド・ディオン式サスペンション)で現代にもその名を遺している。

 このメーカーは1882年に「ド・ディオン・トレパルドー・スティーマー」という蒸気エンジンの馬なし馬車を製作したのが始まりで、1987年には 蒸気エンジン付きの3輪自動車を作っている。 
 1895年に開発したガソリンエンジン(単気筒 137cc)は当時としては驚異的な3500rpmの高速回転が可能で、高性能であった為に多くのメーカーに供給された。当時のルノーのレーシングカーに使われ、圧倒的な強さをルノーにもたらした。

実車 当時の記録写真から 


 さらに、1902年には、単気筒864cc 8HPガソリンエンジンをフロントに搭載し、ギアボックスは3速付ペダルギアドライブで、後輪駆動には発明した ド・ディオン-アクスルを搭載した乗り心地のよい2座席自動車を発売した。
 これに ウインドシールド、ランプが付、後部にトランクを搭載した 1904年型が、このユニオンのキットのモデルとなっている。 この後部トランクの蓋が手すり付の座席となっていて 3人が乗れるのである。 

(写真) 今でも 走行可能な実車
後部トランクの蓋に背もたれが追加され 座席となっている。 


 ところで、21世紀の現代、 自動車の動力源をめぐってガソリンカー、電気自動車、燃料電池車などの競争が激しいが、実は19世紀末も同様の状況だった。
 旧来の蒸気エンジンCARは1803年からロンドンで走っており、19世紀後半には電池によるモーター駆動電気自動車も既に走っており、そこに新興のガソリンエンジン車が次世代(20世紀)の動力源を目指して 19世紀末から開発が進み、その覇を競っていたのだ。第一次大戦前にガソリン車が勝利し第1回戦の決着を見た。さすがに当時はハイブリッド車は無かったようであるが、現代は第2回戦、「歴史は繰り返す」 面白い現象である。



 ド・ディオン・ブートンは車メーカーとしては初めて聞く方が大多数だと思われるが、現代でも ド・ディオン-アクスル(ド・ディオン式サスペンション)で知られている。

 これは自動車の駆動輪用サスペンションの一種で、車軸懸架(固定車軸懸架)方式の一つである。原型は1893年に開発されている。名称は、かつてフランスに存在した自動車メーカー、ド・ディオン・ブートン(De Dion-Bouton)の創始者である、アルベール・ド・ディオン伯爵(Albert de Dion)にちなむ。 


 (写真 1901年型 ド・ディオン・ブートン 後部)
 同車の「オリジナル・ド・ディオンアクスル」の駆動系。直前のエンジン・2速ギアボックスから動力伝達されるデファレンシャルギアは固定式。鋼管製車軸が3/4リーフスプリングで位置決めされ、後輪はジョイント付きドライブシャフトで駆動される。 (引用 wikipedia)

 後輪駆動車の車軸懸架式サスペンション(ライブアクスル)では、アクスルハウジング(ホーシング)にデファレンシャルギアが固定されており、サスペンションに合わせて動くため、バネ下重量がかさむ。
 そこで、ライブアクスルの路面追従性を向上させるため、ばね下重量の軽減を狙い、デファレンシャルギアをアクスルハウジングと分離し、車体側(ばね上)に装架したものだ。元は蒸気自動車の時代に考案されたものであった。 

 デッドアクスル(デフの無い車軸懸架)並みのばね下重量の軽さと、リジッド式のメリットである対地キャンバー変化の少なさを両立し、路面追従性と乗り心地を向上させている。デフの上下動が無いことで床面高さを下げられるメリットもある。ヨーロッパ車での採用例が多く見られた。

 日本車での採用は、プリンス自動車の初代スカイライン(1957年)が最初である。また、マツダではコスモスポーツに採用されている。その後はホンダの小型車での採用例が多く見られる。
 後輪独立懸架が普及する以前には、採用例が多く見られた。

 GTカーではアストンマーチンがDB4やラゴンダ・ラパイド以降に採用し続け、レースカーではAE86を改造した全日本GT選手権用マシンなどに採用されている。
現在の自動車まで 綿々と続く、重要技術を開発したのが、 ド・ディオン・ブートンだったのである。

(引用および 参考 wikipedia他) 

キットについて

 このユニオンのド・ディオン・ブートン(1904年型)のキットは 5月号で掲載された 1904年式 Wolseley 1/16と同様に ユニオンが緑商会から金型を受け継いだビンテージカーの一つだ。 ユニオンのプラモデルからの撤退に伴い、現在は絶版になってしまったのが残念だ。 箱絵も青赤旧ユニオンマークのクラシックな絵のもの(左写真)と 後期のモデル写真を使った洒落たもの(右写真)があった。
 絶版ではあるが、店頭在庫も残っているようで、いまだに入手は可能で、筆者は昨年 ヤフオクでGETした。
 キットは現代の車キットでは見られないような金メッキ部品を含んだ豪華なもので、箱を開けた途端にリッチな気分になる。
 これも 昔のキットの捨てがたい魅力だろう。
 緑商会版では後輪を駆動するモーターライズとして発売されていたが、ユニオン版ではモーターライズが省かれている。また、前輪のステアリングもウォームギヤ方式で可動し、教育的な要素も強いキットとなっている。

箱絵 
青赤旧ユニオンマークの箱絵
 
後期版の箱絵

主要車体部品


金メッキが多用された豪華な部品
シャーシー部品


製作

 実車のシャーシーの構造はラダー式の鋼管フレームとスプリングを組んで、そのフレームの上に車体床を懸装する構造になっている。プラモデルでの実際は、車体床にフレーム部品を接着し、最後にスプリングを組むとした方が組み易いだろう。
 後輪はジョイント付きドライブシャフトで駆動されるのが本当だが、1960年代当初、モーターライズ版として発売されていたため、後輪軸が金属棒の一本ものに省略されている。また、デファレンシャルギアハウジングは車体シャーシーに固定となっているが、モーターを収めるために大きくなっている。見えない部分でもあり、この辺りは 50年前にはモーターライズ必須であった車プラモデルのため、しかたないだろう。
 前輪のステアリング部分とハンドルのウォームギヤボックスを組み、シャーシーに接着すれば、ハンドルを廻すことで前輪は左右にスムースに可動し、教育的な要素も強いキットとなっている。

 ボディは 意外に合いもよく、すんなりと組み立てが進む。とはいっても50年前の金型で作られたキットなので、隙間が出ないように断面のバリなどを調整しながら 組み立てる。

 塗装は、すべてMrカラーを使用した。
 ボディ上部を アイボリーで吹き付け、アクセントのグリーンは マスキングテープで保護して、筆塗りする。
ドライバー床はニュートラルグレーでよいだろう。
シャーシー下は見えない所なので、全て、ブラックとしてみた。ここは吹き付けよりも 細筆で筆ぬりした方が楽だ。車輪スポークは 木製なので、ウッドを塗った。

 車体に取り付ける各フェンダー、座席、後部トランクはよく仮組して調整してから、塗装しよう。
座席は半艶消しブラック、フェンダーとトランクはグリーンで塗る。




金メッキのヘッドライトなどは、接着断面のメッキを丁寧に剥がし、流し込み接着剤で接着して 強度を持たせよう。ライトレンズの透明部品は 手工芸用のボンド(木工ボンドと同じもので、先端に細いノズルがついている。)を使うと楽だ。 乾くと完全に透明になり、はみ出しても汚れることがない。

ライト類のボディへの接着は、3Mのスコッチ多用途強力接着剤を使うと楽だ。 
最後に各部を 金、グリーン、アイボリー、黒などで丁寧にタッチアップし、塗装は完了となる。
 (手工芸用のボンド) 


完成

 モデルは完成すると 1/16モデルなので 意外に大きい。 金メッキ部品が燦然と輝き、豪華な雰囲気の置物然とした佇まいとなる。  このままでは 綺麗に出来過ぎていて、生活感が無く不満がありという方は、ウエザリング塗装という方法もある。 お奨めはしないが。


ド・ディオン・ブートン その後

 ド・ディオン・ブートン社は早い時期に消滅してしまい、実車は今は博物館でしか、見ることができない。トヨタ自動車博物館にも1898年式の3輪車が一台あるそうだ。 これは世界で最初のモータートライシクル(3輪自転車にエンジンを搭載したもの)と言われている貴重なものだ。 
 また、石川県小松市の日本自動車博物館にも1899年式の4輪ガソリン車が収蔵されている。
 夏休みでもあるし、ご家族連れで、自動車博物館に行ってみるのはいかがだろうか。
 100年前当時の技術と その発展に尽力した幾多の人々の夢と野望に思いを馳せるのも悪くない。
 歴史を知り、現在の姿にとらわれず、あるべき未来を思い描く。
 現代は次世代の車の動力をめぐる第2回戦の最中である。こんな場面に出くわすことは 100年に一度あるかないかだ。お子様と一緒にわくわくを楽しんでみませんか。








ビンテージ・ガレージ バックナンバー
ビンテージ・ガレージ バックナンバー
2nd
シーズン
2014年12月号 第12回 オースチン ヒーレー 100-6 (レベル1/25)
AUSTIN HEALEY 100-SIX (Revell 1/25)
2014年11月号 第11回 リンカーン・フューチュラ(レベル1/25) 
LINCOLN Futura (Revell 1/25)
2014年10月号 第10回 メルセデス・ベンツ540K(モノグラム1/24)
MERCEDES-BENZ540K (Monogram 1/24)
2014年9月号 第9回 デユーセンバーグ・モデルSJ(モノグラム1/24) 
DUESENBERG SJ (Monogram 1/24) 
2014年8月号 第8回 ド・ディオン・ブートン (1904年型)(ユニオン 1/16)
DE DION BOUTON 1904 (UNION 1/16 )
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2013年9月号  第2回 ROB WALKER Team Lotus 72C (エブロ 1/20)
2013年8月号  第1回 ホンダF1 RA272(タミヤ 1/20)



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Vol72  2014 August.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
                    editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

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