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誌上個展

Rob Walker Lotus 72C (エブロ 1/20) 

by 田口博通 Hiromichi taguchi

  Vintage garageは創世記から1970年代までのビンテージレースカーとビンテージクラシックカーの連載コーナーです。クラシックな姿の中に優雅さと繊細さを内包した彼女達にしびれる方々も多いはず。 
 ビンテージ・ガレージは ビンテージカープラモデルの製作だけでなく、その独特の魅力を醸し出すビンテージカーが背景に持つエピソードにもスポットをあてています。 
どうぞあわせてお楽しみ下さい。
 第二回目で登場するのは Rob Walker Lotus 72C (エブロ 1/20) です。このエブロのロータス72Cは2012年11月に発売された新作で今風のディテールが盛り込まれています。




実車について
 スコッチウイスキーでジョニー・ウォーカーと言えば誰でも聞いたことがあるだろう。ジョニ赤、ジョニ黒のあれである。日本では1957年当時、ジョニ黒は1万円で売られていたそうだ。当時の1万円は大卒初任給の二ヶ月分に相当する。
 その創業家出身で莫大な財産を手にしたロブ・ウォーカーが創立したのが ロブ・ウォーカー・レーシングチームだ。 1953年から1972年までF1グランプリに参戦していたが、コンストラクターではなく、クーパー、ロータス、ブラバムなどのシャーシを購入して参戦したプライベーターチームである。スターリングモスを擁した1958年から1961年が最も強く、モスはクーパーとLotus18を駆って優勝を重ねている。 
 1968年から1970年はロータスを用いていたが、1970年シリーズに使用した最後のロータスマシンが、今回紹介するLotus72C である。レーシングチーム伝統の塗装は スコットランドを象徴するダークブルーとノーズの白リボンであり、チームロータスから移籍してきたグラハム・ヒルがハンドルを握った。
  Lotus72Cは 60年代中期の典型的な葉巻型のレーシングカーLotus49を発展させたもので、ラジエターが 車体前面から車体後部エンジン脇に移り、フロントウイングと3枚翼構成のリアウイングが 新たに付加されている。
現代のレーシングカーの基本的な構成の源になったマシンである。
 エンジンは名機フォードDFV3.0V8であった。

 Lotus72はチームロータスで改良に手間取った結果、実戦参加が遅くなり、ロブ・ウォーカー・チームでは70年シリーズ後半のイタリアGP,カナダGP,アメリカGP,メキシコGPに投入された。
 ロブ・ウォーカー・レーシングチームは71,72年シリーズはジョン・サーティスがドライバーとして参加し、サーティスTS7で戦うが、72年を最後にF1から撤退している。
 


キットについて

 昨年11月 エブロから1/20 Lotus72Cが新金型で発売されている。ゴールドリーフ・Lotus72Cに続いたロータス・シリーズ展開の1台だ。

 今年6月に発売された ロータス72Cの始祖に当たるLotus49は webモ2013年7月号のニューキットレビューで紹介されているので こちらも参照されたい。
 
 ボディは基本的に葉巻型形状のモノコックで、ラジエーターが車体前面からエンジン脇に移り、フロントウイングと3枚翼構成のリアウイングが付加されたこのLotus72Cは現代のレーシングカーへの過渡期に位置する。
 そのため、葉巻型レーシングカーの懐かしさと、現代的レーシングカーの雰囲気が混じり合って、独特な雰囲気が全体に醸し出されている。 
 エブロのキットは フロントウイングとリアウイングがイタリアGP仕様とメキシコGP仕様で選択できるようになっている。
 また、3段の高いウイングに視界を妨げられるため、メキシコGP仕様で高い位置に設置されたバックミラーの支柱が金属線をロウ付けした金属部品で奢られていて、精密感を醸し出しているので、ぜひ使ってみたい。

  また、フォード3リッターエンジンとミッション、リアアップライトは1ユニットになっていて 組み立てが充分に楽しめる。
エンジンのハイテンションコードは付属していないので Lotus49記事同様に配線を追加してやると精密感が増すだろう。
 前部ノーズが取り外し可能で、フロントアップライトが見られるようになっているのも楽しい。
 そういったメカニックな組み立ての楽しさの演出が面白いキットである。

箱絵
デカール
車体部品
エンジン部品
アップライト部品
タイヤと金属製バックミラー支柱、透明部品

製作

ボディ
 キットの説明書は ノーズウイング、モノコック、ボディから始まっている。
レーシングカーの場合、まずボデイを塗装しないと先に進めないので 説明書を最後まで見て 組み立て順序の戦略を練ろう。

       最終目標はこの状態
モノコックボディ部品



 ボディに メキシコGP仕様のミラー金属支柱を取り付けるには塗装に先だって ミラーJIGを使って、ボディに05mmの穴を6か所開ける必要がある。
 そのためボディは左右ボデイと後部バルクヘッド部品で先に形を組んでしまう。ボディ前部は接着部が少ないので、裏に0.5mm厚プラ板を細く切って接着し補強しておくといいだろう。
 ボディにミラーJIGをかぶせて、位置を決め、ピンバイスで0.5mm径の穴を上面4か所 開穴する。ボディ左右の穴はボディ裏にめくら穴モールドがあるので、そこにあわせてピンバイスで0.5mm径の穴を2か所 開ける。
左がミラーJIG ミラーJIGをボディ先端に合わせて 開穴する。
 

ボディの塗装
 ダークブルーには Finisher's カラーの ブラバムブルーを使ってみた。 以前、雑誌でカラー写真を見た印象が刷り込まれているのでその色になったのだが、ここは個人の好みでいいだろう。
 ボディの塗装には ラジエター部分をテープでマスキングして ボディを「馬」に乗せて少し浮かせてやり、吹き付け塗装するとやりやすい。「馬」は かまぼこ板とプラモキットの下箱の段ボール紙を切って、いつも即席に作っている。
ノーズや他の部品も同じダークブルーで塗装する。
キャノピーもデカールが用意されているが、塗装した方が圧倒的に実感が高い。それからボディ下面の塗装もお忘れなく。


また、ウイングは マスキングしてホワイトで塗装。

 デカールを貼り、クリアーを吹き付けて保護すれば ボディ塗装は完了だ。



ボディの組み立て
 ボディのモノコック構造は、下部シャーシー、上部シート内殻部、外殻ボデイに部品分割されている。
シート内殻部は シルバーで塗装して、計器盤、シフトレバー、シートなどを組み込んで、ボディ下部に接着する。
その後で、塗装の終わった各モノコックの上下を接着すれば、モノコック構造の基礎が出来上がる。


フロントアップライトの組み立て
 フロントバルクヘッドの部品を核にして説明書通りに組んでいけば良いが 各部品を塗装してから接着したのでは 接着強度が落ちるから 同じ色の部品は できるだけ各部品を接着してから塗装した方がよい。  
サスペンション部品を最後に取り付けて、フロント部は完成となる。

     完成したフロント部



胴体部分の完成へ
 フロントバルクヘッドと ボデイモノコックユニットを接着する際には 強度が必要なので、しっかりと接着しておこう。
この後、後部のロールバーのメッキ部品を取り付ければ、胴体部分は完成だ。
フロントバルクヘッドをしっかりとボディに接着する。

ロールバーを取り付けて完成した胴体部分



エンジンとリアサスペンション
 エンジン、ミッションは 説明書にそって丁寧に工作し、塗り分けていけば 難なく完成する。

 ミッションのユニットで注意するのはドライブシャフトでこの段階では接着せず、最後に流し込み接着剤で固定するのがよい。




エンジンとミッションの取り付けも精度がよい。
ちなみに、エンジンのファンネルユニットは、この段階では取り付けず、全体完成後に接着すると楽だ。


リアアップライトの取り付けもトリッキーな所がなく、すんなりと完了する。
 塗装は リヤサスペンションの黒い部分は艶消し黒、半艶消し黒、艶あり黒などを取り混ぜれば、アクセントになろう。エキゾーストパイプはこの段階では取り付けず、胴体との結合後に行う。

完成したエンジンリアサスペンションユニット



 胴体後部バルクヘッドに出来上がったエンジンユニットを2.6mmのビスで取り付けた後、オイルタンク、バッテリーなどを取り付け、ラジエターの配管を行う。エキゾーストパイプはそのホルダー支柱がリアウイングの支柱を兼ねているので、最後に取り付けた方が壊すことがない。  全体が組みあがれば、風防キャノピーなどの繊細な部品を取り付けよう。
ここまで来ると完成は真近だ。

バルクヘッドに結合したエンジンにラジエターを配管し、オイルタンクなどを取り付ける。



 タイヤはFirestoneの文字も印刷済みで、パターンの彫刻も克明だ。


 エンジンまわりのハイテンションコードは webモ2013年7月号のニューキットレビューLotus49の記事 を参考にぜひ追加してみよう。イグニッションコイル部から出る8本のハイテンションコードには0.56mmの黒ビニールコードを使った。後はエンジンのヘッドカバーの穴に入れて配線するだけなので、簡単に追加できる。

そして、エンジンエアファンネル、ウイングを取り付けた後、最後に メタル製のミラー支柱を慎重に取り付ける。

ハイテンションコードを追加すると精密さが増す。


メタルミラーは慎重に取り付けよう。接着は瞬間接着剤をつまようじの先につけて。


完成

 最後にボディには保護を兼ねて実車用のカルバナワックスを柔らかい布で軽くかけておくと、輝きと艶がいつまでも保たれる。筆者は研ぎ出しは行っていないが、充分な艶だと感じている。このワックスは WILSONのノーコンパウンド 固形ワックスでプロックス スーパーという品種を使っている。
 

 完成した雰囲気はいかがだろうか。
レーシングカーのコレクションの中に並べても、個性と輝きがある気がする。
 
 エブロの1/20のF1レーシングカーシリーズは かっちりとした設計と 開発者のこだわりポイントがいくつか感じられて 面白い。
 
 課題は説明書で、このままでも組み立てられないことはないのだろうが、塗装をするには実際に組み立てる順番に ちょっと一考必要だ。しかし、少し経験のあるユーザーには適度な難易度と組み立てる際のメカニック感を存分に味わえる気がした。 

 今回のLotus72Cも完成すると メタルのバックミラーがアイポイントになり、精密感を醸し出す非常によいアクセントになっている。エンジンからリアウイングにかけての緊張感も良いと思う。
 F1プラモデルの良い点は 組み立てながら実車に近いメカニック感を実感できるところだ。今回も十分に堪能した。





Rob Walker Lotus 72C その後

 60年代にパイプシャーシーからモノコック構造に大幅な進歩を遂げた葉巻型のF1レーシングカーも更に熟成を重ね、70年代前半となれば ラジエターが後部に配置され 前後にウイングがつき、 現代のレーシングカーに近くなってきた。
 1967年に3リッターエンジンに排気量レギュレーションが変更された後も、力まかせではなく、この大馬力エンジンの力を有効に走りに生かそうと、まだまだF1レーシングカーは発展の余地があり、技術開発がどんどん進んでいたのだ。
 自分たちの力がモータースポーツの世界でどれだけ通用するものか挑戦したいというチャレンジ精神は、コンストラクターだけでなく、ロブ・ウォーカーのようなプライベーター達も皆持っていたものと思う。
 
  ロブ・ウォーカーは幾度か共同オーナーを持ちチーム名が変化している。Lotus72の時代は「ブルックボンド/ウォーカー」を名乗っていたが、ちなみにブルックボンドは1869年にアーサー・ブルックによって創業されたイギリスの有名紅茶ブランドである。
 まだ、この時代のF1の世界はプライベーターでも挑戦できるロマンに溢れた良き時代だったといえるかもしれない。
 
 さて、2015年以後のF1レーシングカーは レギュレーションが変わり、現在の2.4ℓ、V8から1.6ℓ、V6エンジンに変更される。それだけでなく、エネルギー回生システムが組み合わされる複雑なものになる。
ホンダも再参戦するようであるし、今度は更に別の挑戦が始まるに違いない。







ビンテージ・ガレージ バックナンバー
1st
シーズン
2014年1月号  第6回 ベンツ 300SLR (レベルモノグラム 1/24) 
2013年12月号 第5回 BENTLEY 4.5L BLOWER (エレール 1/24)
2013年11月号 第4回 ブガッティ 35B(モノグラム 1/24) 
2013年10月号 第3回 BRABHAM F-3 (エレール  1/24) 
2013年9月号  第2回 ROB WALKER Team Lotus 72C (エブロ 1/20)
2013年8月号  第1回 ホンダF1 RA272(タミヤ 1/20)


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Vol 59 2013 September    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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