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誌上個展

メルセデスベンツ 300SLR (モノグラム 1/24)
MERCEDES-BENZ 300SLR
(MONOGRAM 1/24) 

by 田口博通 Hiromichi taguchi
 Vintage garageは創世記から1970年代までのビンテージレースカーとビンテージクラシックカーの連載コーナーです。クラシックな姿の中に優雅さと繊細さを内包した彼女達にしびれる方々も多いはず。 
 ビンテージ・ガレージは ビンテージカープラモデルの製作だけでなく、その独特の魅力を醸し出すビンテージカーが背景に持つエピソードにもスポットをあてています。 
どうぞあわせてお楽しみ下さい。
 第6回で登場するのは 栄光と悲劇の車 メルセデスベンツ300SLRです。



メルセデス ベンツ 300SLR 実車について
  メルセデス ベンツは 世界最古の自動車メーカーであり、また現代でも世界の最高級車の頂点に君臨し続けるビッグ ネームである。ベンツといえば イメージカラーはシルバーであるが、それはドイツのナショナルカラーでもあった。
 第2次大戦前は ドイツの国威発揚のためナショナルカラーのシルバーを身にまとい、レース界を制覇していた。

 戦争で壊滅的な打撃を受けたものの、第2次大戦後は不死鳥のようにグランプリレースに復帰し,やはりナショナルカラーのシルバーのW196で 成功をおさめた。
  公道を走るロードカーも頂点を極めるべく、F1レーサーW196のパワートレインに複座シートのボディをかぶせた300SLRで1955年4月ミッレミリア1000マイルレースに出場し、当時最高のドライバーの一人だったイギリス人 フィリップス・モスの運転により優勝を果たし、栄光の頂点に達した。
 中身はF1レーサーそのものの300SLRだが、イタリアの公道を、10時間7分48秒、平均速度157.64kmで走り抜ける大記録となった。
 
 しかし、同年6月のル・マンで 同じ300SLRでルベーの運転により81人の死者を出す悲劇の大事故を引き起こし、メルセデスベンツはレース界から撤退している。
 F1レーサー W196  (WIKIぺディアより引用)
   
 300SLR (1955年4月ミッレミリア優勝 記録写真)


キットについて

 このメルセデス300SLRロードスターのイタレリ・ドイツレベル・モノグラム・フジミの1/24キットは 1955年ミッレミリアでスターリング・モスが優勝したとされる4号車(722)を 後年ベンツ博物館が復元した車をそのままに再現している。
 
 この復元車は1992年ラ・フェスタ・ミッレミリアで日本に運ばれデモ走行した300SLRで、写真も多く残っているが、エンスージアストの言によると、1955年のミッレミリア優勝実車とは残念ながら細部がかなり違っているようだ。

 300SLRはF1レーサーW196のパワートレーンにロードスターのボディをかぶせたもののため、実はこのキットはシャーシー、パワートレーンの再現に重点がおかれている。 それは凄いもので、 完全に大人向きのキットとなっている。
 それゆえ、プロポーションのよい外形ボディからは思いもよらぬ 奥深いプラモデル組み立ての楽しみを味わうことができる。
 300SLRは人気車なので、イタレリ・ドイツレベル・モノグラム・フジミと4社のブランドで同一の1/24キットが発売されていた。
 今回 製作したのは、最近のモノグラム版。

 箱絵
 

製作

エンジンとシャーシーフレーム
 シャーシーは チューブラフレーム構造を再現するために、細いパイプ部品が多数あるが、説明書を見ながら 確実に接着していけば、なんなく形になる。
 といいつつ、サイドとセンターのトラスをメインシャーシーに接着する部分はねじりの力がかかるため、接着がはずれてしまいやすい。ここは、裏面からピンバイスで孔をあけ、0.5mm径のシンチュウ線で補強しておくとよい。
 右ボディ横につきだす2本の排気管は、説明書のように先に写真では接着してあるが、接着してしまうと実はボディをかぶせることができなかった。それで、一度 接着をはずし、シンチュウ線の補強を仕込み、後付けできるように加工した。

シャーシー、パワートレイン


シャーシー裏面


 シャーシー前部フレームはコクピットバルクヘッドが構造材となっていて、そこから伸びる4本のチューブによって、フレームが立体的に補強されるようになっている。ここをしっかりと接着することが重要だ。




ボディ
 パーティングラインをしっかりと消すと男前が上がる。

 ボンネット上部の空気吸気口は、目の細かいシンチュウ網で自作した。方法は、少し強引だが、キットの部品にシンチュウ網をかぶせ、左右からひっぱれば、ネットが変形し形をトレースできる。ボンネット裏からエポキシで接着した。



パーティングラインをしっかり消し、引けはパテで埋める。


シンチュウネットで自作した空気取り入れ口
 
ホイールとタイヤ
 ホイールはプラ部品だが良い成形でワイヤスポークをうまく再現している。メッキが明るすぎるので、組み立てた後、クリアブラックか、エナメル系のつやあり黒を薄く塗って、陰影をつけた方がいいだろう。
タイヤはパーティングラインをゴムがよく切れるカッターナイフで整形しておく。

塗装

 Mrカラー サーフェーサー1000で下塗りし、2000番くらいの耐水ペーパーで軽く磨き、下地を作った。

 上塗り塗装は、フィニッシャーズのCLKシルバーを吹き付けた。
写真のような使い捨ての塗装馬をキットの裏箱で作って、保持すると 吹き付け塗装しやすい。
クリアを上塗り後、実車用のカルナバワックスで磨き、塗装完了とした。

 コクピットではステアリングはウッド。シートはファブリック模様のデカールが付属しているのでそれを使用し、艶消しクリアを軽く吹き付けた。

 ウインドウのメッキ枠は、アルミ箔を貼った。
ベンツのマークと300SLRの文字の浮きだしも、アルミ箔を貼りつけて、切り抜くと、高級感が出る。

 ゼッケン722のデカールが付属しているが、1955年ミッレミリアの出場車個体とするには、相違点が多いので、デカールは使用せず、一般的な300SLRとした。






完成へ

 ボディをかぶせるとすっきりとしたロードスターに変貌する。街乗りのロードスターそのもののように優雅だ。 複雑なシャーシーはボンネットを開けない限り、見ることは出来ないが、中身はプランプリレーサーで、当時の技術の最高峰がここに内臓されている。




300SLR その後

 栄光のミッレミリアの優勝から2か月後の1955年6月11日、ルマン24時間レースには3台の300SLRが出場した。 レースは フェラーリ735LMとジャガーDタイプ、そしてファジオの運転する300SLRの間でデッドヒートが戦われた。
 
 35周を終えたホーソンのジャガーDがピットインしようとして、フルブレーキでピットに滑りこもうとした時、周回遅れのマクリンの運転するヒーレーの行方をふさいでしまい、パニックになったヒーレーがフルブレーキ。そこに後ろからきた車番20のピエール ルベーの運転する300SLRが、マクリンのヒーレーに乗り上げる格好で、舞い上がり、コース左壁に激突した。
 バラバラになったルベーの300SLRのエンジン、フロントサスペンション、シャーシーパーツなどが満員の観客をなぎ倒し、一瞬にして 81人の死者を出した。その他、無数の負傷者を出した修羅場となってしまった。現在まで、これを超える大惨事は無いと言われているくらいの惨事となった。
 
  レースの行方だが、 負傷者救出の救急車の道路を確保し、混乱を避けるため、レースはあえて続行された。
 メルセデス チームは 夜半になり、本社の決定 により、正式にルマンレースから棄権し撤退した。その時点で、残る2台の300SLRは1位(ファジオ、モス組)と3位だった。

 チーム監督のノイアウバーは「勝つためにレースに来ている」と撤退に反対したと言われているが、メルセデス本社にとっては、カーレースはブランドイメージを上げるための2次的なものに過ぎず、世界的なメルセデスブランドの体面と、自動車メーカーとしての見識と節度を守りたかったのだとされている。 多数の死傷者を出す事故に自社の車が関わったという道義的責任を感じてのレース棄権であった。
 その年限りで メルセデスベンツは モータースポーツから撤退し、長い休眠に入った。 

「勝つことよりも、大切なことがある。」 それが安全、安心を提供する自動車メーカーとしての見識であろう。 


 その後、メルセデスは43年ぶりの1998年にメルセデスベンツ・CLK-LMでル・マン24時間に再挑戦したが、マシントラブルにより2時間で全滅している。
 翌1999年には改良型メルセデスベンツ・CLRで挑戦したが、空力設計に問題があり、予選、フリー走行、決勝で2台が空中に舞い上がるという事故を起こした。決勝での事故はちょうどテレビ中継でも放映されている。
 事故後、メルセデス・ベンツはル・マン24時間レースから撤退、現在に至るまで復帰していない。
  メルセデスベンツ・CLR

(参考資料 カーマガジン1994-4増刊 モデルカーズ21号)

ビンテージ・ガレージ バックナンバー
1st
シーズン
2014年1月号  第6回 ベンツ 300SLR (レベルモノグラム 1/24) 
2013年12月号 第5回 BENTLEY 4.5L BLOWER (エレール 1/24)
2013年11月号 第4回 ブガッティ 35B(モノグラム 1/24) 
2013年10月号 第3回 BRABHAM F-3 (エレール  1/24) 
2013年9月号  第2回 ROB WALKER Team Lotus 72C (エブロ 1/20)
2013年8月号  第1回 ホンダF1 RA272(タミヤ 1/20)


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Vol63  2014 January.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
                    editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

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