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      ALFA ROMEO 2300 TOURING(Burago Metal Kit 1/18) 

誌上個展

アルファロメオ2300(ブラーゴ メタルキット 1/18)
ALFA ROMEO 2300 TOURING (1932)
Burago Metal Kit 1/18) 

by 田口博通 Hiromichi taguchi
 Vintage garageは創世記から1970年代までのビンテージレースカーとビンテージクラシックカーの連載コーナーです。クラシックな姿の中に優雅さと繊細さを内包した彼女達にしびれる方々も多いはず。
 昨年8月からの第1シーズン6回の連載では 主にビンテージF1グランプリレースカーとルマンレースカーを取り上げました。
 今月から始まる第2シーズン6回連載、 第7回目で登場するのは アルファロメオ 2300 トゥーリング(1932年型)です。

第1シーズン バックナンバー
2014年1月号  第6回 ベンツ 300SLR (レベルモノグラム 1/24) 
2013年12月号 第5回 BENTLEY 4.5L BLOWER (エレール 1/24)
2013年11月号 第4回 ブガッティ 35B(モノグラム 1/24) 
2013年10月号 第3回 BRABHAM F-3 (エレール  1/24) 
2013年9月号  第2回 ROB WALKER Team Lotus 72C (エブロ 1/20)
2013年8月号  第1回  ホンダF1 RA272(タミヤ 1/20)

アルファロメオ2300 トゥーリング (ブラーゴ メタルキット 1/18)




アルファロメオ 2300 トゥーリング(1932年型)実車について
 アルファロメオは現代では 有名なイタリアの小型高性能なスポーティ車メーカーとして知られているが、その発祥は1910年にさかのぼる。実業家グループによるフランス・ダラック社のイタリア工場の買収により、ミラノで創業された「ロンバルダ自動車製造株式会社」に起源を発する。
 アルファは人名でなく、頭文字 A.L.F.A. (Anonima Lombarda Fabbrica Automobili)をとったものである。 そのため、今に続くミラノ市章の赤十字とかつてミラノを支配したヴィスコンティ家の家紋に由来する人を飲み込む大蛇を組み合わせた同社のエンブレムには、当初「ALFA MILANO」の文字が刻まれていた。
 1918年にナポリ出身の実業家ニコラ・ロメオが買収し、1920年にブランド名が現在まで続く 「アルファ ロメオ」となったのである。
アルファロメオのエンブレム
 ニコラ・ロメオは、カーレースが販売促進でも技術力向上でも有益であると信じ、高性能スポーツカー開発に注力し、6気筒1750ccの 6C 1750でイタリア国内のスポーツカーレースを制覇し、アルファ・ロメオの名声を一気に高めた。
 念願のグランプリレース出場のため、1930年に新しい8気筒エンジン仕様の8C 2300を開発する。 「6C 1500/1750」はレースで好成績を残したとは言え、基本的にはツーリングカーから発展したスーパー・スポーツだったが、「8C 2300」は最初からレースを目的として設計された。
 エンジンは軽合金製、スーパーチャージャー付のレース用設計となっていて142HP 175km/hの高性能車となった。魅力的なボディーは「トゥーリング」「ザガート」「ピニンファリーナ」などのカロッツェリア(ボディメーカー)で造られた。基本は2座のスポーツカーとなっている。
アルファ・ロメオ6C 1750  (1930年)
(上写真2枚とも ウィキペディアから引用)



キットについて

 アルファロメオ2300トゥーリングはどうしたことかプラモデルキットは発売されていない。幸いブラーゴの1/18メタルキットがあるので、それを作ることとした。6か国語の説明書つきで、廉価で発売されていたが、現在では店頭在庫だけのようだ。  
 メタルキットというのは、耳慣れないと思うが、塗装済みのダイキャストと着色済みのプラスチックのパーツを組み立てるもので、塗装をする必要がなく スナップオンで簡便に組み立てられる。 
 デカールまで含んでも、初心者でも1時間もあれば完成させられるユーザー組立式のミニカーと考えればよいだろう。
 トイザラスの棚に積み上げられていたりして、オモチャ扱いをされることもあるのだが、どうしてどうしてフォルムもしっかりしていて、 どれもあなどれないディテールと塗装で、筆者は結構コレクションをしている。
 なかでも、ブラーゴのメタルキットはさすがイタリア製で、プラモデルでは難しいボディ塗装の艶と色気、そしてメッキ部品のメッキの厚さが素晴らしく、気に入っている。
 

アルファロメオ2300メタルキットの箱絵

製作

 箱に10才以上と注意書きがあるが、6か国語の説明書に従って 総数62点の部品を ただ、スナップオンとネジで組んでいけばよいので、あっという間に完成する。確かに 10才以上であれば、確実に完成しそうと感じる。  ドンガラのスタイルモデルではなく、エンジンも内臓し、シャーシー、パワートレインも完備していて、ボンネットは開けることもできる。

 下はその組み立て図で、さすがに この図だけで組んでいくのは組み立てパズルのようできついが、右のような日本語の文もついているので、親切だ。 組み立て図上の4色色分けは説明文の数字色分けと同一になっていて、工程順序を表している。

 一般的に今時の日本のプラモデルは下のような図だけで、筆者のようなプラモ歴ウン十年でも組むのに四苦八苦するのだが、右にような組み立て方の説明文があると楽さ加減が全然違う。
 
 この6っ国語の説明文、見ていただくと気づかれると思うが、きちんと トランスミッション・シャフトなど、車の代表的な部品名が入っていて教育的なのである。日本のプラモデル説明書に欠けているものがここに普通にある。
 また、この説明文で気が付くもう一つの特徴は、シャーシーではなく、車体から組み立てる順序になっていることだ。これには ウーンとうなってしまった。
 子供や初心者が車のキットを組立てる時には、当然、興味のある車体から組もうとするだろう。 エンジン、シャーシーから組み立て始めるのは クラシックカープラモデルを熟知している大人のすることだ。
  このように、顧客特性に合わせて、組み立て工程順を設定するのは、極めて大事なことなのだ。 この説明文がなくて、組み立て図だけならば、それを見て あなたは何処から組み立て始めようとするだろうか?
説明文



 


完成へ

 ライトやウインドーなどの透明部品はスナップオンなのだが、不安がある場合は、木工ボンドを併用しよう。メッキグリルは好みにより、エナメルのブラックを流すと深みが増す。
 追加塗装をするとすれば、可動ボンネット裏をそれらしく塗っておくぐらいでいいと思う。
 これだけで、アルファロメオ2300トゥーリングの1/18モデルがたやすく手に入ってしまう。ダイキャストモデルなので結構、重い。塗装の感覚もプラモデルではなく、実車に近い。
 完成ミニカーを入手するのも良いが、このようなメタルキットは自分の手で完成する喜びも味わえ、選択肢として考えてもよいと思う。



アルファ・ロメオ その後

 8c 2300は 1937年には8気筒2900CCへと進化する。レーシングモデルはチューンアップし、295HP/5400回転 までパワーアップされている。
この 8C2900は1939年まで生産されたが、そこで戦前のアルファロメオを代表する8気筒シリーズは歴史を閉じた。
 レース活動で好成績を残したアルファロメオではあったが、実はこの裏では 第一次大戦後の1929年の世界恐慌のあおりで、経営危機に陥っていた。1933年には 遂にイタリア政府が設立しているIRI(産業復興協会 )の支援を受けざるを得なくなり、事実上、国営企業として再出発した。
 仕方がないこととはいえ、ムッソリーニの国策によって軍需産業に組み入れられたアルファロメオは、本業よりも、航空機用エンジン開発に注力することになり、単座戦闘機マッキMC.202フォルゴーレのエンジンを開発している。
 そして、第2次大戦中の1943年、ミラノ市の本社工場が連合軍の空襲によって廃墟と化し、企業活動を停止した。


第2次大戦後
 第2次大戦後の1947年、戦前の高級スポーツカー「6C」シリーズに改良を加えて生産を再開した。 
 同じ敗戦国日本では戦後の大混乱期で、戦時車改造のトラックがやっと走っていた時代だが、同様に大戦でダメージを受けたイタリアのアルファロメオは同時期に優美なスタイルの車をマーケティングした。カロッツェリア・トゥーリングの手になる美しいクーペボディをまとった「6C2500」は、ヴィラ・デステのコンクール・デレガンスで優勝し、世界一優美な車として賞賛された。この時から特徴的なグリルのデザインが続くことになる。
 さすが、デザインの国イタリアだが、戦争からの素早い復興を目指すために、得意なデザイン性を重視したのだ。第2次大戦直後とはいえ、ヨーロッパでは デザイン性の高い車を求めうる裕福な購買層が温存されていたということでもある。

 1950年、超高級・高性能スポーツカーやGTを少数生産するという戦前までのスタイルから転換し、新型の「1900」シリーズを投入、大衆量産車メーカーへと転身した。
 その後、1954年、イタリアを代表する小型高性能車としてジュリエッタがデビュー。1962年には戦後アルファのイメージを決定づけたジュリア・シリーズがスタートする。
 その後、モータースポーツにも復帰、1966年に、「アウトデルタ」を事実上のワークスチーム化して「ジュリアGTA」で欧州ツーリングカーレース選手権を戦い始める。また、F1にも復帰した。
 
 しかし、再び経営難に陥ったアルファロメオは民営化による再建を計ることになり、1986年にイタリア最大手のフィアット傘下となっている。フィアットはこの買収について、自社のスポーツカーラインアップの最高の補完になるとした。
 
 かくして現代でもアルファロメオ・ブランドは残り、ブランドイメージのスポーツ性を前面に出した優美な車をヨーロッパで提供し続けている。我々のイメージの中ではアルファロメオというと、特徴的なラジエターグリルの小型高性能車のメーカーというイメージが強いが、それは第2次大戦後のもので、このような遍歴があって もたらせられたものなのである。
 6C2500 Villa D'Este(ヴィラ・デステ) (1947年)


model 156
伝統に立脚した鮮烈なスタイルと高性能が1998年度ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを初めてアルファ・ロメオにもたらした。


(上写真2枚とも ウィキペディアから引用)





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Vol71  2014 July.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
                    editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

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