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誌上個展

ポルシェ 356A スピードスター (TOMY 1/32)
PORSCHE 356A SPEEDSTER

by 田口博通 Hiromichi taguchi

  Vintage garageは創世記から1970年代までのビンテージレースカーとビンテージクラシックカーの連載コーナーです。クラシックな姿の中に優雅さと繊細さを内包した彼女達にしびれる方々も多いはず。 
 ビンテージ・ガレージは ビンテージカープラモデルの製作だけでなく、その独特の魅力を醸し出すビンテージカーが背景に持つエピソードにもスポットをあてています。 
どうぞあわせてお楽しみ下さい。

  8月号から始まったビンテージ・ガレージ 第3シーズンですが、国内メーカーから発売されているビンテージカーを取り上げています。
 第3シーズンのラストバッターとして今月登場するのは TOMY の名キット 1/32のポルシェ356Aスピードスターです。
  このキット マルチマテリアルキットとして ジャガーSS100と共に 1980年代にリリースされました。後に、ハセガワに引き継がれ再販されたので、現行製品として店頭で容易に入手できます。
 


ポルシェ 356A スピードスター (TOMY 1/32)

実車について

 ポルシェ356 は、ドイツのポルシェが最初に発売した2シーター小型スポーツカーで1948年に設計されている。ポルシェの市販スポーツカーの始祖といっても良いだろう。
 
 ポルシェ博士は1938年にフォルクスワーゲン(ビートル)を設計したことでよく知られている。ポルシェの創業は第一次大戦後の1931年であるが、他社の設計と開発を主な業務とした設計事務所であった。
 第2次大戦後、ドイツの敗戦により、ポルシェ博士は2年余り戦犯として拘留されてしまった。ポルシェ社の復活をまかされた息子のフェルディナント・アントン・エルンスト・ポルシェ(通称フェリー)はスポーツカーの自社生産メーカーの道を選び、彼とカール・ラーベによって、疎開先のオーストリア グミュントで設計されたのが、このポルシェ356である。
 
 ポルシェ356はVWビートルを基礎に設計されているため、後置きの空冷水平対向エンジン、トーションバーの独立懸架を踏襲し、その上に 小型の2座席ボディを置いている。ポルシェのスタイルにビートルの流れを感じるのはそのためだろう。

 1948年6月に試作車が完成し、7月にはテストを兼ね、インスブルックのレースに出場し優勝している。技術に自信を深めたポルシェは翌1949年から少数台の生産を始め、1963年まで改良発展しながら販売された。
 
 ポルシェ356Aスピードスターがリリースされたのは、1956年のことで、オープンボディとして低く作り直し、ソフトトップ幌とし、ウインドシールドを小さし、更に軽量 高性能を狙った。
 現代のポルシェと同じく 極めて高価だったが、アメリカを中心に大人気となり、現在でも プレミアムがついた貴重なビンテージスポーツカーとして垂涎の的になっている。
 ポルシェ911系が1963年フランクフルトショーでデビューするまで、ポルシェを代表した市販スポーツカーがこの356Aだった。



キットについて

 マルチマテリアルの、1/32の中にぎゅっと凝縮された精密カーモデルという雰囲気だろう。
 エンジン、サスペンションがメタル製。ボディのシルバーモールがステンレス線、それにエッチング部品と ウインドーにはホットスタンプによるシルバーフレームと非常に豪華な内容になっている。
 また、前後のボンネットが開閉可動で、エンジンとスペアタイアを見ることができる。   
 箱絵はシックなもので、どこの国の風景だろうか。伝統の高級レストランを出て、これから車に乗り込もうという風情の男女が、ポルシェ356Aの世界観をうまく表現している。
前後のボンネットが開閉する車体
   メタル製のエンジン
ダイキャストのサスペンション部品


箱絵


ボンネットは可動する

製作

(1)シャーシーとサスペンション
 シャーシー部品の溝にフロントサスペンションを差し込んでスプリング部品で止め、リアにはデフギアとエンジンを排気管パーツで押さえてがっちりと接着すれば それでシャーシーは完成となる。非常に簡単だ。
  

完成したシャーシーとサスペンション


(2)ボディ塗装
 ボディは、丁寧にモールドラインを消し、ボンネットを裏からマスキングテープでボディにとめて、塗装をする。今回は Finisher'sのCLKシルバーを使った。ドイツ重厚系のシルバーだ。  ボディのトリムラインはステンレス線なので、ボディのカーブに合わせて少し曲げて、穴にギュッと押し込んで、裏からスコッチの多用途接着剤でとめておいた。




(3)ボディの組み立て
 メッキ部品や透明部品などは、塗装済みボディを汚さないように、手芸用ボンドで接着をする。接着力は弱いが、透明なので使いやすい。

 ダッシュボードはボディ色、ハンドルはアイボリーというのが定番だが、今回は 内装も全てブラックにするので、ここも艶ありのブラックにしてみた。計器はデカールをそのまま使った。

完成したボディ



(4)コクピット  
 シンプルだが、コクピットにはドア内貼りもついているし、シートも別モールドになっている。シャーシー、幌カバーなどと 一緒に 半艶黒で吹き付け塗装して完了とした。  



(5)タイヤとシャーシー  
  タイヤとホイールもふんいきの良いもので、ポリキャップを仕込むようになっている。シャーシーにタイヤを組み込めば シャーシーは完了だ。  

タイヤを組み込んだシャーシー

完成

 そして、ボディとコクピットをボンネットのヒンジを挟み込んで合わす。そして、下から、シャーシーを組み込む。 ウインドシールドやエッチング製のサイドミラーなどをとりつければ 完成だ。精密模型とはいっても、国産プラモデルなので、部品点数が少なく、構成が簡単で、すぐに完成する。  1/32モデルは 手のひらに乗るほどの大きさだが、その中に ギュッとコンパクトに精密さが詰まっているようだ。金属部品が多く使われているため、手のひらに重量感があり 、プラモデルというよりもダイキャストミニカーの雰囲気が素晴らしい。


ポルシェ 356A その後

 ポルシェ 356A は現在でも プレミアムがついた貴重なビンテージスポーツカーとして人気のあるコレクターアイテムとなっており、最近もオークションで5000万円を超える価格で取引されたそうだ。 
 このような状況から、名車ポルシェ 356A スピードスターは 生産終了後、数多くのレプリカが作られてきた。
 内容はピンキリとのことだが、最近も「東京オートサロン2013」の会場で「ポルシェ 356A スピードスター」のレプリカが1台展示された。 内容はアメリカ ミズーリで製作されている電気自動車EVで、ボディがFRP製のレプリカである。外観クオリティはかなりよいとの評判で、パイプフレームの上に電気モーターを搭載し、税別で987万円だったそうだ。
 ちょっと大きな モーター付電動プラモデルを連想した方も多いだろう。
 「東京オートサロン2013」で展示された「ポルシェ 356A スピードスター」のレプリカ(EV)





ビンテージ・ガレージ バックナンバー
3rd
シーズン
2016年1月号 第17回 ブガッティT55スーパースポーツ(バンダイ 1/20)  
Bugatti model 1932 type 55 Super Sport (Bandai 1/20)
2015年12月号 第16回 フェラーリ 250 テスタロッサ(ハセガワ 1/24)
Ferrari 250 Testa Rossa (Hasegawa 1/24)
2015年10月号 第15回 シトロエン DS19 (エブロ 1/24)
CITROEN DS19 (EBBRO 1/24)
 
2015年9月号 第14回 フォルクスワーゲン カルマン・ギア 1963年型 (GCIクレオス 1/24)
 Volkswagen Karmann Ghia 1963
2015年8月号 第13回 メルセデス ベンツ 300SL (タミヤ 1/24)
Mercedes Benz 300SL (Tamiya 1/24)

2nd
シーズン
2014年12月号 第12回 オースチン ヒーレー 100-6 (レベル1/25)
AUSTIN HEALEY 100-SIX (Revell 1/25)
2014年11月号 第11回 リンカーン・フューチュラ(レベル1/25) 
LINCOLN Futura (Revell 1/25)
2014年10月号 第10回 メルセデス・ベンツ540K(モノグラム1/24)
MERCEDES-BENZ540K (Monogram 1/24)
2014年9月号 第9回 デユーセンバーグ・モデルSJ(モノグラム1/24) 
DUESENBERG SJ (Monogram 1/24) 
2014年8月号 第8回 ド・ディオン・ブートン (1904年型)(ユニオン 1/16)
DE DION BOUTON 1904 (UNION 1/16 )
2014年7月号 第7回 アルファロメオ2300 トゥーリング(1932)(ブラーゴメタルキット 1/18)
ALFA ROMEO 2300 TOURING(Burago Metal Kit 1/18)
1st
シーズン
2014年1月号  第6回 ベンツ 300SLR (レベルモノグラム 1/24) 
2013年12月号 第5回 BENTLEY 4.5L BLOWER (エレール 1/24)
2013年11月号 第4回 ブガッティ 35B(モノグラム 1/24) 
2013年10月号 第3回 BRABHAM F-3 (エレール  1/24) 
2013年9月号  第2回 ROB WALKER Team Lotus 72C (エブロ 1/20)
2013年8月号  第1回 ホンダF1 RA272(タミヤ 1/20)


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Vol.90 2016 February.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
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