Home >CARRIER AIR WING FIVE CVW-5 第24話 


CARRIER AIR WING FIVE

CVW-5

Part24                                  Photo. U.S. NAVY

by Kiyoshi Iwama

Tip of the Sword” 、CVW-5のハンガーに描かれた彼らのスローガンである。空母を守る剣の先は、彼ら自身であり、「剣の先の如く鋭くあれ」と戒めている。またそれは遠く母国を離れ、太平洋の西岸に置かれた剣の先をも意味するように思われる。海外を拠点とする米海軍唯一の空母航空団としてCVW-5が厚木基地に本拠地を置いて、35年が過ぎた。その間、飛行隊の編成や使用する航空機も大きく変わり、その年月の長さを感じさせる。もう少しで在日40年を迎えるが、そのとき彼らは、その記念日を岩国基地で迎える。
我々飛行機ファンを大いに楽しませてくれたCVW-5であるが、厚木基地での活動も残り少なくなった。これを機会に、CVW-5のこれまでを振り返ってみたい。

これまでのあらすじ

資料記事
第23話 スーパー・ホーネットの時代へ
第22話 VF-154 “Black Knights”、最後の戦い
第21話 テロとの戦い、始まる
第20話 インディペンデンスからキティー・ホークへ
第19話 イラクを睨む
第18話 ミッドウェイからインディペンデンスへ
第17話 湾岸戦争とミッドウェイの退役
第16話 ホーネット時代の到来
第15話 Midway Magicとファントム時代の終焉
第14話 再び平和に
第13話(Rev.B) 日本へ 
第12話(Rev.C) ヴェトナム戦争(後編)
第11話(Rev.C) ヴェトナム戦争(中編-3)
第10話(Rev.C) ヴェトナム戦争(中編-2)
第9話 ヴェトナム戦争(中編-1)
第8話 ヴェトナム戦争(前編)
第7話 東西冷戦、朝鮮戦争後
第6話 朝鮮戦争(後編)
第5話 朝鮮戦争(中編)
第4話 朝鮮戦争(前編)
第3話 朝鮮戦争勃発
第2話 ジェット時代の夜明け
第1話 誕生

第24話 “SAYONARA” Kitty Hawk

 CVW-5の飛行訓練は2006年の年明けとともに始まった。空母がジョージ・ワシントン(CVN-73)に交代するのも2年後のことであり、横須賀基地では通常通り空母キティー・ホーク(CV-63)の定期修理が進められていた。また併せて進められたのが12号バースの拡張工事であった。空母ジョージ・ワシントンの配備に備えてのことである。

 2001年に起こった米国多発テロの影響を受け、基地公開中止の状態が続いていた米海軍厚木航空施設であるが、桜の開花時期になって基地内で桜祭りが開催され、久しぶりに飛行場の一部が一般開放されることになった。しかも航空機が展示されるというのである。まだ桜の花が残る4月8日、厚木基地のエプロンに、予告通りCVW-5の各飛行隊から1機ずつ、そしてHSL-51と海上自衛隊の第51航空隊からも所属機が展示された。Air Wingsが行われた時代とは比ぶべきくもないが、久しぶりの公開に基地内は賑わった。またこの時展示されたVAQ-136のEA-6B(163524/NF500)には久々にCAGカラーが復活し、しかも尾翼には日本駐留を誇示するかのように旭日旗をモチーフにしたマーキングが施されていた。この塗装は桜祭りの直前に塗られたようである。



 2006年4月8日に開催されたNAF Atsugi桜祭りに展示されたVAQ-136のEA-6B(163524/NF500)
写真: 筆者撮影



 ここでHSL-51 “Warlords”(第51軽対潜ヘリコプター隊)についいて少し補足しておく。HSL51は第7艦隊の戦闘艦に分遣隊を派遣し、対潜、対水上艦任務を担う部隊で、厚木基地にホームベースを置いている。空母キティー・ホークに搭載されていた海上制圧飛行隊VS-21が解散となり、2004年11月にS-3Bが帰国した後、その任務を補完するためHSL-51は第3分遣隊(Det.3)をCVW-5にも派遣し、空母キティー・ホークに搭載され始めていた。
 5月20日、定期修理を終えた空母キティー・ホークが横須賀を出港、日本近海で定期修理後の海上公試を実施し、25日に横須賀に帰港、拡張成った12号バースに接岸した。翌26日から6月2日まで、夏のクルーズを控えてCVW-5の艦載機と空母との適合性試験(CQ)が実施された。そして6月8日、Hawk/Fiveチームは、DDG-56 USS John S. McCain, DDG-82 USS Lassen,CG-63 USS Cowpensなどを従え、西太平洋クルーズへと出発、グアムへと向かう。このときのCVW-5の編成を表24-1に示す。


表24-1 2006年6月8日~9月15日の西太平洋展開時のCVW-5編成

 

 最初のイベントは、6月19日から23日にわたってグアム島近海で実施された、海兵隊、空軍、そして沿岸警備隊が加わっての統合大演習 “Valiant Shield 2006”で、演習に先立ち、6月19日にフォト・ミッションが行われた。並走する3個空母攻撃群の上空前後を、B-2を先頭に、空・海・海兵隊の戦闘機が両脇を固めるという勇壮な大編隊が撮影された。



 “Valiant Shield 2006”への参加艦船、航空機による大編隊(2006年6月19日)
出典: US Navy Official Photo Archive(060618-N-8492C-212)



 海軍からはキティー・ホーク空母攻撃群の他、空母エイブラハム・リンカーン(CVN-72)と空母ロナルド・レーガン(CVN-76)の空母攻撃群が参加しており、空母ロナルド・レーガンにとっては今回の演習への参加が処女航海となった。また空軍からは太平洋空軍の所属機の他、ミズーリ州のホワイトマン空軍基地からグアムのアンダーセン空軍基地に展開していた第8空軍第509爆撃航空団のステルス爆撃機B-2Aが参加、さらに海兵隊からは沖縄に駐留する第3海兵遠征軍(3rd MEF)や岩国の第12海兵航空群(MAG-12)などの部隊が参加しており、演習期間中に参加した艦艇、航空機、将兵の数はそれぞれ28隻、300機、22,000名という大規模なものになった。演習に入ると、空・海・海兵隊、そして沿岸警備隊という異なる組織の部隊が、統合的に機能して海上侵攻、防御、航空阻止、捜索、警戒、情報・偵察などのミッションが実施された。この演習は太平洋地域の同盟国軍の他、ロシアや中国にも開示され、米軍の演習におけるオブザーバーとしての中国の招待は、初めてのことである。

 Exercise “Valiant Shield 2006” は6月23日に終了し、Hawk/Fiveチームはミサイル巡洋艦カウペンスを伴い、太平洋を北上し、小樽へと向かう。途中海上自衛隊との共同訓練を行い、訓練に参加した大湊地方隊の護衛艦”ゆうぎり“が空母キティー・ホークの護衛に付き、7月1日の朝、3艦は小樽港に入港、キティー・ホークは勝納埠頭1号バースに接岸した。Hawk/Fiveチームの小樽訪問は2000年10月以来6年ぶりとなり、7月5日まで停泊し、1日の午後と2日には艦内が一般公開され、多くの訪問者で賑わった。



 2006年7月1日、CVW-5を載せ、小樽港に入港、タグボートで接岸される空母キティー・ホーク
出典: US Navy Official Photo Archive(060701-N-8591H-347)



 3艦は7月5日の朝、小樽を出港。Hawk/Fiveチームとカウペンスは太平洋を南下し、フィリピン海へと向かった。フィリピン海では、CVW-1を載せ西太平洋クルーズ中の空母エンタープライズと、2隻の空母による航空作戦訓練を実施した。エンタープライズ/CVW-1との訓練の後Hawk/Fiveチームはシンガポールに向かい、ここで5日間の休養を取る。7月30日にシンガポールのチャンギ港を出港したHawk/Fiveチームはミサイル巡洋艦のCG-63 カウペンスとミサイル駆逐艦のDDG-59 ラッセルを伴い、スンダ海峡、インド洋を経てオーストラリアの西海岸に向かい、8月10日にパースに入港した。パースで小休止の後、Hawk/Fiveチームはインド洋でオーストラリア海軍との共同訓練を行う。このときCVW-5の戦闘攻撃部隊はオーストラリア西岸にある、広大なランセリン訓練エリアへ飛び、射爆撃訓練を行った。このクルーズも最終段階を迎え、オーストラリアを離れた後、Hawk/Fiveチームは最後にタイのレムチャバン港に寄港、そして横須賀への帰途へと就いた。CVW-5の厚木へのフライインは9月13日に始まり、空母キティー・ホークは9月15日に99日間のクルーズを終え、横須賀に帰港した。



 空母キティー・ホークをフライオフするため飛行甲板で待機するVFA-195のF/A-18C(2006年9月12日)
出典: US Navy Official Photo Archive(060912-N-8604L-667)



 少し話が脇道にそれるが、CVW-5が厚木に戻り10日ほどが過ぎた9月20日~22日の3日間、2006年9月をもって米海軍から完全引退するF-14 トムキャットの引退セレモニー ”Tomcat Sunset Ceremony” が、米国東海岸ヴァージニア州のファイタータウンNAS Oceanaで開催された。最終日の22日にはファイナル・フライト・セレモニーが行われ、引退を惜しむ大勢の観客の見守る中、最後のトムキャット運用飛行隊となったVF-31“Tomcats”の手により、ファイナル・フライトが執り行われ、米海軍主力戦闘機としての栄光の34年間に幕を閉じた。
 



ファイナル・フライトに向かうVF-31のF-14Dを直立で見送るグランドクルー(2006年9月22日)
出典: US Navy Official Photo Archive(060922-N-1082Z-006) 


 そして10月17日、空母キティー・ホークは再び横須賀を離れ、秋のクルーズへと出発する。今回の主目的は海上自衛隊との年次共同演習”ANNUALEX 18G”である。CVW-5の航空機もキティー・ホークの後を追い18,19日に厚木を飛び立ちキティー・ホークへと向かった。太平洋を南下したHawk/Fiveチームはまずはフィリピン海へ向かい艦載機/空母の適合性試験を実施した。その後南シナ海、東シナ海と北上し、11月6日に佐世保に入港する。その後HAWK/Fiveチームは佐世保に停泊していたCG-67 USS Shilohなどとともに 11月9日に佐世保を出港、ANNUALEX 18Gの行われる日本海へと向かう。この年のANNUALEX 18Gに参加する米側の艦船は空母キティー・ホークを始め、潜水艦も含めて13隻、海上自衛隊側は90隻という大規模なもとなり、参加航空機もCVW-5の艦載機を含め130機に上った。また今回の演習では、日本の周辺で増加する国籍不明潜水艦の脅威に対抗すべく、対潜水艦戦に主題が置かれ、日米双方の部隊が緊密に連携して進められた。

 この共同演習は11月14日まで続けられたが、同じ日、米太平洋軍司令官、ウィリアム・J ファロン提督がマレーシアのクワラルンプールで明らかにしたところでは、10月26日、中国の通常動力「宋」型攻撃潜水艦が沖縄近海で訓練中のキティー・ホークへの接近を図り、同艦に対し魚雷発射レンジまで近づいた後5海里離れた海上に浮上するという出来事があったと記者団に明かした。中国の外交部報道部は、そのような報告はなかったとこの出来事を否定したが、一触即発の事態になった可能性は否定できず、ANNUALEX G18の演習内容からもその事実が窺い知れた。

 海上自衛隊との合同演習終了後、Hawk/Fiveチームは香港に向け、南シナ海へと向かった。香港には11月23日に到着し、乗員たちは小休暇を楽しみ、26日に横須賀に向け香港を出発した。CVW-5の艦載機の大半は12月7日に厚木へとフライインし、キティー・ホークは12月10日に随伴艦と共に横須賀に帰港、家族や関係者の見守る中12号バースに横付けされた。

 年末の厚木基地にVAW-115のE-2C用の新しい8枚ブレードのハミルトン・サンドストランド社製NP2000プロペラキットが輸送されてきた。米海軍がE-2Cの性能向上のために始めた改修で、既に本国ではプロペラ換装の終わった飛行隊も出現していた。スキュードの8枚ブレードプロペラは静音化と低振動化の効果があり、乗員の疲労軽減、機体や装備品の寿命延伸の効果があり、また航続距離の延伸や速度向上にもつながった。米海軍によると、このプロペラ換装に関わる費用は、1機当たり9万ドルから10万ドルとのことであるが、その効果は大きかった。VAW-115で最初に換装されたE-2CはNF600(165296)で、12月29日から換装作業が開始され、年が明けた2007年1月19日には厚木基地で試験飛行が始まった。またこのプロペラの換装は、その後C-2Aにも展開されていく。

 2007年が明けて早々の1月11日、中国が自国の不要となった気象衛星を標的にした、衛星破壊実験に成功したとのニュースが飛び込んできた。経済発展の続く中国では国防予算がうなぎ上りに上昇を続けており、米国や我が国を含む近隣諸国にとっては警戒感が、否が応でも高まる中での出来事であり、地上のみならず宇宙空間への中国人民軍進出の証しともなった。また今回の衛星破壊実験では、破壊された衛星の破片が軌道上の宇宙デブリとなり、他国の宇宙機にも影響を及ぼすことから、世界中で実験を非難する声が上がった。

 西太平洋からインド洋までを任務範囲とする米第7艦隊、そしてその主力となるHawk/Fiveチームにとっても中国の台頭は、穏やかならぬ出来事ではあったが、彼等がまずやるべきことはその機動力と戦闘能力の維持・向上であった。1月から3月の初めにかけ、CVW-5の飛行隊は小グループに分かれ、厚木だけでなく、タイやグアム、オーストラリア、あるいは硫黄島へ移動しての訓練に励んだ。中でも2月中旬から2週間にわたって厚木をベースに実施された電子戦訓練では、前年の12月8日に嘉手納基地から厚木基地に飛来した米国の民間航空戦闘訓練支援会社ATAC(Airborne Tactical Advantage Company)社のHawker Hunter F.58 2機が参加した。12月の飛来の際は、第7艦隊の艦艇に対する電子戦訓練支援を目的にしたものであったが、その後も厚木に留まり、今回はCVW-5への訓練支援に参加することになった。濃淡グレー2色の迷彩塗装を施されたこの2機のハンター(N321AX, N322AX)は、その後も度々厚木に姿を現し、スポッターからも注目される存在となった。またこの頃、VAQ-136のEA-6Bに、レドーム先端に付く「攻」の識別マークが10年ぶりに復活した。

 3月31日、曇り空の中厚木基地で日米親善の桜祭りが開催された。この年は桜の開花が早く、基地内の桜も散っているのではと危惧されたが、予想に反し基地内の桜はまだ花を残していた。開催の通知が基地のホームページに掲載されたこともあり前年以上の人出となった。飛行場エリアには前年同様、CVW-5の各飛行隊の機体だけでなく、厚木基地に同居する陸軍の78Avn所属のUC-35Aや海上自衛隊のP-3CやYS-11Mなどの機体が展示された。CVW-5の各飛行隊は基本的にCAG機を展示したが、VFA-102とVFA-27はCAG機をオーストラリアの航空ショーに派遣して不在のため、NF113とNF203とが展示された。
またこの時、8枚ブレードの新しいプロペラを装備したE-2C(165296/NF600)が初めて公開されたが、注目を浴びたのは新しいCAG塗装に塗り替えられたVFA-192のF/A-18C(164010/NF300)であった。




 NAF Atsugiの桜祭りで展示された新しい塗装が施されたVF-192のCAG機(F/A-18C 164010/NF300)
写真: 筆者撮影(2007年月31日)



 4月20日には、NP2000への換装を行っていたVAW-115の最後の改修機NF601(164107)が改修後の初飛行を終え、飛行隊の5機全機のNP2000への換装を完了する。



 富士山付近で、NP2000プロペラに換装した5機のE-2Cで編隊飛行を見せるVAW-115
出典: US Navy Official Photo Archive(070509-N-8591H-229)



 また5月に入ると夏のクルーズを前にした硫黄島でのFLCPが開始され、CVW-5の多くの飛行隊が硫黄島へと移動した。一方横須賀では、定期修理を終えた空母キティー・ホークが洋上公試のため、5月4日に横須賀を出港した。その後、CVW-5の艦載機との空母適合性試験を終えた空母キティー・ホークは随伴艦を伴い、5月23日に夏のクルーズに向け横須賀を発つ。このときのCVW-5の編成を表24-2に示す。


表24-2 2007年5月23日~9月21日の西太平洋/インド洋展開時のCVW-5編成



 太平洋上でCVW-5の艦載機を収容した後Hawk/Fiveチームは訓練を行いながらグアムへ向かい、6月8日にはアプラ港に入港する。ここで小休止した後、Exercise ”Talisman Sabre 2007”に参加するためオーストラリアへと向かう。”Talisman Sabre”は2005年に始まり、1年おきに行われる米軍とオーストラリア国防軍との合同軍事演習で、今回が2回目に当たる。6月10日から7月25日にわたって実施された演習は、両軍合わせ26,000名が参加する大規模なものとなった。演習はオーストラリア北東海岸部のショールウォーター・ベイの訓練区域を中心に実施された。また航空機の展開にあたってはアンバレー・オーストラリア空軍基地(RAAF Amberley)の他、シドニーやブリスベンの民間空港の一部が使用された。Hawk/Fiveチームはその北の珊瑚海に展開し、各種演習に参加している。またHawk/Fiveチームは演習の途中の7月5日にシドニーに寄港し、艦内公開をした。そして演習の終盤、7月19日にはブリスベンにも寄港する。

 7月23日にブリスベンを出港したHawk/Fiveチームは、次の演習”Valiant Shield 2007”に参加するため、演習地のグアム近海へと向かった。7月30日、グアムから約400マイル南西の海上で夜間訓練中、VFA-195”Dambusters”のF/A-18Cの1機(164977/NF403)が海上に墜落する事故が起こったが、幸いパイロットは無事救助された。

 8月7日からはExercise “Valiant Shield 2007”が始まる。演習の規模は前年と同様に米海軍、海兵隊、沿岸警備隊、米空軍が参加する大規模なものとなり、8月14日まで7日間にわたりグアム近海で実施された。海軍からは空母キティー・ホーク(CV-63)SG、空母ジョン・C・ステニス(CVN-71)SG、空母ニミッツ(CVN-68)SGと3個空母攻撃群が参加しており、30隻の艦艇と280機の航空機が投入された。また航空機については海軍から、CVW-5、CVW-9、CVW-11の艦載機と、第1戦略通信航空団のE-6、また空軍からはアンダーセン空軍基地に展開する20EBSと93BSのB-52H、ニューメキシコ州のキャノン空軍基地から展開した522EFSのF-16C、嘉手納基地の18WG所属44FSのF-15C、961AACSのE-3、そして909ARSのKC-135など多様な機体が参加している。演習はハワイのヒッカム空軍基地の第13航空軍が計画立案したシナリオに沿って実戦さながらに実施され、防空戦闘、電子戦攻撃、敵防空網制圧、航空阻止、対艦攻撃など多彩なシナリオにそって統合運用演習が進められた。この間、CVW-5の飛行隊も数多くのソーティをこなし、日ごろの訓練成果を発揮した。前年から始まったこの演習は、その規模や形態から、米軍再編に基づく将来を見据えたシナリオを思わせるものであった。

 Exercise “Valiant Shield 2007”の終了後、キティー・ホーク空母攻撃群はグアムのアプラ港に入港、3日間停泊し、8月18日マレーシアに向けて出発した。訓練を行いながら西太平洋から南シナ海に入り8月28日にマレーシアの中部西海岸にあるポート・ケランに寄港した。Hawk/Fiveチームはここで4日間の休息を取り、9月1日ポート・ケランを出港、インドのベンガル湾へと舳先を向けた。ベンガル湾ではインド主催の演習Exercise Malabar 07-2が待っていた。この演習には、ホスト国のインドから空母ヴィラート(INS Viraat R22)をはじめとする7隻の艦艇と空海軍の戦闘機部隊、そして米海軍から空母キティー・ホークと空母ニミッツを含む15隻の艦艇とCVW-5とCVW-11の艦載機群、そして今回、ホスト国インドが新たに招待した日本の海上自衛隊、オーストラリア海軍、そしてシンガポール海軍の5隻の艦艇と海上自衛隊のP-3C 2機が加わった。9月4日に始まった演習は、5か国の参加により規模、複雑性共に増加し、対潜水艦戦を始め、数々の演習テーマが消化され、9月9日に幕を閉じた。



 ベンガル湾でのExercise Malabar 07-2でインド海軍のシー・ハリアーFRS Mk.51と編隊を組む、VFA-102のF/A-18FとVFA-27のF/A-18E(2007年9月7日)
出典: US Navy Official Photo Archive 070907-N-8591H-069)



 夏のクルーズ最後の演習を終えたHawk/Fiveチームは、ベンガル湾を後にしてホームベースへの帰路に就いた。今回は途中の寄港地もなく、一路横須賀を目指した。CVW-5の厚木へのフライインが始まったのは9月19日で、キティー・ホークと随伴艦は9月21日に横須賀に帰港している。

 CVW-5が厚木にフライインして約1か月後、再び秋のクルーズへの出発の時がやってきた。秋のクルーズではHawk/Fiveチームは海上自衛隊との恒例となった共同演習”ANNUALEX 2007 19G”に参加することになっていた。10月21日に空母キティー・ホークが随伴艦と共に横須賀を出港、途中CVW-5の艦載機を収容し太平洋を北上し、北海道へと向かう。当初は函館入港の計画であったが函館市との調整がまとまらず、今回は室蘭を親善訪問することとなり、10月26日、ミサイル駆逐艦フィッツジェラルド(DDG62)とともに室蘭港に入港した。27日、28日の両日、艦内が一般公開され、多くの市民が詰めかけたが、前回の函館ほどのフィーバーには至らなかった。そして10月30日に室蘭港を出港、ANNUALEX 19Gの行われるフィリピン海方面へと向かった。ANNUALEX 19Gは、11月5日から始まった日米合同演習”Keen Sword 08” の一部を成す、日米合同海上演習として11月9日から16日の間、南大東島、東方海域で実施された。米軍側からは空母キティーホーク(CV 63)とCVW-5を始め、横須賀基地常駐艦の大半と佐世保常駐の揚陸艦トーテュガ(LSD 46 USS Tortuga)、攻撃型原潜コネティカット(SSN 22 USS Connecticut)とトピーカ(SSN 754 USS Topeka)、そして米海軍と海上自衛隊のP-3C哨戒機が参加し、弾道ミサイル防衛(BMD)、対潜水艦戦(ASW)、対水上艦船(SUW)と防空戦の各シナリオに対する共同作戦演習が行われた。
 



フィリピン海での日米教頭演習、”ANNUALEX 19G”にて攻撃訓練を終え空母キティー・ホークに着艦したVFA-192のF/A-18C 左翼パイロンにつるされているのはAGM-84 SLAMの訓練弾?(2007年11月12日)
出典: US Navy Official Photo Archive(071112-N-7883G-002)


 この演習の後Hawk/Fiveチームは11月22日の感謝祭の休暇を香港で過ごす予定で21日に香港入港計画を中国当局へ通告していたが、突然の入港拒否が伝えられる。このため、香港寄港を中止し、キティー・ホークは随伴艦と共に11月27日午後、横須賀に帰還した。フライイン後のCVW-5は、厚木基地での訓練飛行に入るが、12月の10日に韓国の烏山航空基地から第8戦闘航空団第35戦闘飛行隊(8FW/35FS)のF-16CG 5機が厚木へ飛来する。目的はCVW-5のF/A-18飛行隊との共同訓練で、12月11日から19日まで、連日午前午後の2回の訓練を消化した。そして12月20日の朝、5機のF-16CGは烏山航空基地に向け飛び立って行った。厚木をベースにしての空軍機との訓練は、珍しい出来事であった。

 明けて2008年、CVW-5の飛行訓練は、まだお屠蘇気分の抜けない1月3日から始まった。また1月には、カリフォルニア州NASリムーアの太平洋攻撃戦闘機兵器学校(SFWSP: Strike Fighter Weapon School Pacific)とネバダ州NASファロンの海軍攻撃航空戦センター(NSAWC: Naval Strike Air Warfare Center)から教官が来日し、厚木でのレクチャーとグアムのアンダーセン空軍基地での実技訓練とが行われている。レクチャーはF/A-18の兵器システムや、戦闘方法についての講義で、実技は空対空戦闘と空対地攻撃の訓練である。この訓練は攻撃戦闘機先進即応プログラム(SFARP: Strike Fighter Advanced Readiness Program)と呼ばれているもので、CVW-5の大半の機体が実技訓練のため、1月20日過ぎからグアムのアンダーセン空軍基地に移動を始めた。これらの機体がグアムでの訓練を終えて厚木に戻ってきたのは、2月14日から15日にかけてである。しかし、このグアムでの訓練中の2月12日16時頃、VAQ-136のEA-6B(161115/NF504)が、アンダーセン空軍基地から28海里の海上で墜落する事故が起こった。幸い乗員4名は墜落前にエジェクトし、HSC-25のMH-60Sに海上で救出され、病院へ搬送された。VAQ-136は、1月21日にも厚木基地でエンジン運転試験中のEA-6B(160786/NF501)がエンジン火災を起こし、飛行不能となっており、年明けから2機のプラウラーを失ってしまった。

 3月には春のクルーズが始まる。3月3日、定期修理を終えた空母キティー・ホークが、海上公試のため横須賀を出港した。同じ日厚木では、2機のEA-6Bを失ったVAQ-136にカリフォルニア州NASウィドビー・アイランドからVAQ-132のプラウラー2機が補充されてきた。一方、3月7日に海上公試を終え横須賀に戻ったキティー・ホークは3月18日に、CVW-5との空母適合性試験(CQ)を行うため再度横須賀を出港する。西太平洋でCQを終えた後Hawk/Fiveチームは、西太平洋に展開していたニミッツ空母攻撃群と訓練を行い、キティー・ホークは4月4日に随伴艦と共に横須賀に戻った。この頃には空母キティー・ホークと空母ジョージ・ワシントンの交代スケジュールも決まり、夏のハワイでの交代式が計画されていた。

 4月6日、スケジュールの詰まった中、厚木基地では桜祭りが開催された。クルーズが近いこともあり、CVW-5の各飛行隊はピカピカに光るカラフルなCAG機をそろって展示した。また厚木に同居するHSL-51も旭日旗、富士山、宮本武蔵を絵柄に使った派手な塗装のCO機(SH-60B/161564/TA700)と第7艦隊司令専用機(SH-60F/164446/TA02)を展示してくれた。

 一方、4月7日、海の向こうの米国東海岸では空母ジョージ・ワシントン(CVN 73)が多国間演習POA 2008(Partnership of America)に参加するため、CVW-17を載せてヴァージニア州ノーフォークをリオ・デ・ジャネイロに向けて出港した。この演習はブラジルをはじめとする南米における親米国の海軍と米海軍との協力関係強化と共同運用性を高めることを目的としたもので、ジョージ・ワシントンは前半の演習に参加した後、ハワイで行われるRIMPACに参加し、そこでキティー・ホークと交代、CVW-5を載せ日本へ向かう計画であった。




2008年4月7日、ヴァージニア州のノーフォーク海軍基地を出港するCVN-73 USS George Washington
出典: US Navy Official Photo Archive(080407-N-9565D-020)



 CQも終えた空母キティー・ホークであるが、4月15日に横須賀を出港、CVW-5も4月15日、16日に厚木をフライオフし、キティー・ホークの後を追った。一行は訓練を行いながら太平洋を南下した。沖縄近海では4月22日から24日までの間CVW-5と航空自衛隊那覇基地所属の第83航空隊とが共同訓練を実施し、CVW-5からはF/A-18C/E/F、EA-6B、E-2Cが、83SQからはF-4EJ改が参加した。その後Hawk/Fiveチームは南シナ海に入り、4月28日に前年の11月に入港を拒まれた香港のビクトリア港に投錨、5月2日まで停泊した。これが空母キティー・ホークにとっては、最後の海外寄港となる。5月3日、香港を出たHawk/Fiveチームは帰還の途に就き、キティー・ホークは最後の日本でのクルーズを終え5月12日に横須賀に帰港、CVW-5は5月11日に厚木へフライインしている。

 さてPOA 2008でのミッションを終え、太平洋に入った空母ジョージ・ワシントンであるが、2008年5月22日早朝、随伴するミサイル・フリゲート艦USS Crommelin(FFG-37)との洋上補給中に、ジョージ・ワシントンで火災が発生、補給作業を急遽中断し、コルメリンを離艦させる。火災はジョージ・ワシントンの後部予備ボイラー室あたりで発生した模様で、乗員が駆けつけ消火作業が始められた。火災はケーブル用通路を伝わり、艦内のいくつかの区画に拡がったが、乗員の必死の消火活動により艦と人員の被害も最小限に抑えられ、最も恐れられた原子炉への影響も皆無で、無事消火された。それでもかなりの区画でのダメージが認められ、ジョージ・ワシントンはハワイには向かわず、一旦サンディエゴに引き返し、修理を終えた後、サンディエゴで空母キティー・ホークとの交代を行うこととなった。

 こうした空母ジョージ・ワシントンの突然の火災事故により、空母キティー・ホークの行動予定も変更となる。当初は6月9日にハワイでジョージ・ワシントンとの交代式に臨む予定であったが、キティー・ホークはCVW-5と共にハワイでのPIMPACに参加した後、NASノース・アイランドに向かい、ジョージ・ワシントンとの交代式に臨むこととなった。

 そして5月28日、空母キティー・ホークの帰国の日を迎える。横須賀基地の8,9号バースにはキティー・ホークを見送る多くの日米関係者が詰めかけた。出港に先立ち、在日米海軍司令官ジェームズ・ケリー少将やトーマス・シーファー駐日大使らが挨拶を述べ、その後タグボートに押され、キティー・ホークは見送る人々に登舷礼で応える乗員と共に岸壁を離れた。そして港内でキティー・ホークが回頭する間に、登舷礼に並んだ乗員が10年間の日本での生活に別れを告げるべく、前任の空母の離日時と同様に、飛行甲板に“SAYONARA”の人文字を描いた。

                                 (この章終わり)      




8,9号バースを離れ、回頭するCV-63 “USS Kitty Hawk” 飛行甲板には”SAYONARA”の人文字が見える
出典: US Navy Official Photo Archive(080528-N-7883G-086)




      私のアルバムから
(本章に関連する当時のCVW-5の機体を紹介)





 2006年4月8日、厚木のエプロンに駐機するVFA-192のF/A18C(164045/NF304)





 2006年4月8日、厚木のエプロンに並ぶVFA-192のCO機(164030/NF301)。バックはVFA-27のF/A-18E





2006年4月8日の桜祭りで展示されたVRC-30 Det.5のC-2A(162159/NF30)





 2007年3月31日、NAF Atsugi桜祭りに展示されたVAQ-136のEA-6B(163524/NF500)。久しぶりに「攻」の識別マークがレドーム先端に復活した





 2007年2月1日、給油任務を終え、タンク5本を抱え厚木に戻ってきたVFA-27のF/A-18E(165863/NF203)





 2008年1月4日、厚木のR/W19にアプローチするVFA-195のF/A-18C(164909/NF411)





 2008年1月4日、厚木のR/W19でT&Gを行うVAW-115のE-2C 2000NP(165296/NF600)





 2008年1月4日、厚木のR/W19に着陸するVFA-102のF/A-18F(165894/NF100)





2008年1月4日、厚木のR/W19に着陸するVAQ-136のEA-6B(165296/NF501)





2008年4月6日、NAF Atsugi桜祭りに展示された派手なカラーのHSL-51のSH-60B(161546/TA700)

 





 2008年4月6日、NAF Atsugi桜祭りに展示されたCAG機。VFA-102のF/A-18F(165894/NF100)、





 2008年4月6日、NAF Atsugi桜祭りに展示されたCAG機。VFA-27のF/A-18E(165860/NF200)、





 2008年4月6日、NAF Atsugi桜祭りに展示されたCAG機。VFA-192のF/A-18C(164010/NF300)





 2008年4月6日、NAF Atsugi桜祭りに展示されたCAG機。VFA-195のF/A-18C(164905/NF400)、





 2008年4月6日、NAF Atsugi桜祭りに展示されたCAG機。VAQ-136のEA-6B(163524/NF500)





 2008年4月6日、NAF Atsugi桜祭りに展示されたCAG機。HS-14のSH-60F(164460/NF610)



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Vol.64  2014 February    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
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